インターネットを通して広く出資を募る「クラウドファンディング」。中でも「購入型」のクラウドファンディングは、これまで多くのスタートアップや中小企業に利用されてきた。今回は過去に掲載されたクラウドファンディング関連の記事から、特に注目すべきトピックを取り上げる。

古くて新しい資金調達手段「クラウドファンディング」とは?

 インターネット経由で、不特定多数の人から出資を募る「クラウドファンディング」。不特定多数の人たち(群衆)を指す「クラウド(Crowd)」と、資金調達を意味する「ファンディング(Funding)」に由来する造語だ。

 クラウドファンディングという言葉が登場したのは2000年代以降だが、その仕組み自体は数百年前から存在している。新しく感じられるのは、現在はそれがインターネット上のプラットフォームに大きく依存しているためだ。なお、ひとくちにクラウドファンディングと言っても、内容は以下の3種類に分けられる。

  • 購入型…投資額に応じ、品物やサービスなどのリターンが提供される
  • 寄付型…原則としてリターンなし(無償)で資金を提供する
  • 投資型…出資額に応じ、利息など金銭的なリターンが提供される

 一般にクラウドファンディングという場合、上記のうち「購入型」を指すことが多い。商品やサービスに関心を持つ人たちが出資をしてくれるため、資金調達と同時にファンを獲得したり、商品に対する消費者の反応をリサーチしたりできるのが大きな強みだ。実際、実績がないために銀行融資を受けにくいスタートアップの中には、購入型のクラウドファンディングで大成功した例も少なくない。

 今回はクラウドファンディングをテーマにした過去記事を通して、国内外の成功事例や効果的な活用法を紹介していく。

クラウドファンディングを活用 銀行融資ゼロで行列店

 クラウドファンディングの活用で大成功した吉祥寺の時計店「Knot」。取り扱うのはオリジナルブランドの時計ばかりで、高いデザイン性と国産ならではの品質、手ごろな価格で人気を集めている。

 もともとは輸入時計の販売を手掛けていたという遠藤弘満社長。オリジナルの商品作りを手掛けるにあたり、苦労したのが資金繰りだ。実績がほとんどないスタートアップにとって、銀行融資は利用しにくい。ベンチャーキャピタルから出資を受けると、経営の方向性を巡って意見が対立するリスクがある。

 そこで活用したのがクラウドファンディングだ。まずは商品の量産化に必要な資金の一部として100万円の獲得を目指した。ところが3カ月後に集まった資金は500万円。その後も新店舗の開業資金として300万円の出資を募ったが、ここでも1000万円以上の調達に成功した。クラウドファンディングで注目を集めたことから全国の時計ディーラーからの注文も殺到し、今ではメガバンクとの取引も始まっているという。

クラウドファンディングで20億円集めたビール

 英国にも注目すべき事例がある。24歳の若者2人が創業した「BrewDog(ブリュードッグ)」だ。07年に3万ポンドで立ち上げたクラフトビールメーカーは、15年には4500万ポンド(約82億8000万円)を売り上げるまでに成長した。

 派手なパフォーマンスや過激なキャンペーンで話題を集めてきたBrewDogだが、クラウドファンディングを使ったユニークな取り組みでもよく知られている。それが「パンク株(Equity for Punks)」と呼ばれる、特典付きの特殊株式だ。クラウドファンディング経由で発行したパンク株の総額は日本円で20億円以上。株主(ファン)の数は3万人にのぼる。パンク株によって集めた資金は、米国での醸造所建設をはじめ海外進出に利用されているという。

中小企業にマッチする

 日本初のクラウドファンディングサービスとして、11年にスタートした「READYFOR(レディーフォー)」。代表の米良はるか氏によると、クラウドファンディングは中小企業にとってメリットの大きい資金調達手段だという。

 理由の1つが、クラウドファンディングが単なる資金調達ではなく「マーケティング」にも使えるということ。一般的に「売れるかどうかわからない新しい商品」は市場に出しにくいものだが、クラウドファンディングを使えば企画段階から「世の中の声」を集めることができる。また実績の乏しい「地方の中小企業」にとっては、クラウドファンディングの実績は地元金融機関と取引を開始するきっかけになる可能性もある。

 とはいえ、クラウドファンディングを成功させるには「実行者の『思い』」が大切だという。クラウドファンディングの出資者(支援者)は、商品やサービスの内容だけでなく「実行者への共感」によって動かされることが多いためだ。支援者を仲間にすることができるかどうかが、クラウドファンディング成功のカギといえるだろう。

「ユーザーになり得る人から資金を提供してもらう」のが特徴

 クラウドファンディングについて「製品やサービスが完成する前に需要が見えるようにする、新しい方法」と語るのはハーバード経営大学院准教授のスコット・コミナーズ氏。

 コミナーズ氏によると、クラウドファンディングによる資金調達には「ユーザーになり得る人から資金を提供してもらう」という特徴がある。このため、クラウドファンディングを成功させるには、商品やサービスが「広く受け入れられる価値があり、かつ持続可能かどうか」そして「人々が満足できるか」どうかをしっかり見極める必要があるという。

最後に

 インターネット時代の資金調達手段として脚光を浴びているクラウドファンディング。実績のない新規の起業でも利用しやすいことや、資金調達とマーケティングを同時に行えるなどのメリットがあることから、国内・国外を問わず多くの起業家たちに利用されている。クラウドファンディングによる成功例は事欠かない。これから起業する人にとっても中小企業の経営者にとっても、クラウドファンディングの研究と活用は今後の重要テーマといえるだろう。

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