マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」制度。これまでの保険証と異なり、発行の手間がかからないことやマイナポータルとの連携などさまざまなメリットがある。一方で制度をめぐっては国民からの批判や不信感も根強く、普及はいまだ進んでいない。今回はマイナ保険証制度の導入をめぐる動きについて、これまでの記事から振り返る。

利便性が高いものの、普及が遅れる「マイナ保険証」

 マイナ保険証とはマイナンバーカードの健康保険証利用のこと。マイナンバーカードの個人認証機能を利用し、病院や薬局の窓口で従来の健康保険証に代えて利用できるようにするもので、2021年10月から本格運用が始まっている。

 従来の保険証は企業や市町村単位で発行されており転職や転居のたびに再発行する必要があったが、マイナ保険証(マイナンバーカード)は永続的に使えるうえ、オンラインサービスのマイナポータルと連携すれば特定健診情報や薬剤情報・医療費情報の閲覧、確定申告の医療費控除なども一括して行える。

 一方、国民の間にはマイナンバーカードで個人情報を管理されることや政府のシステムに対する不信感も根強い。また医療機関などがマイナ保険証向けのシステムを導入する際の負担や、マイナ保険証を利用することで患者の窓口負担が増える仕組みにも批判が集まっている。このためマイナンバーカードの普及率は22年4月1日の時点でも43.3%で、今後どのように普及を促進するかが課題となっている。

 この記事ではマイナ保険証についての基礎知識に加え、普及を進める政府の動きや国民の反応を過去記事から紹介する。

健康保険証としての使用も マイナカードについて知りたい10のこと

 21年10月20日に、健康保険証として本格運用が始まったマイナンバーカード。カードには顔写真に加えて氏名や住所、生年月日、性別が記され、社会保障や税金、災害対策関連の事務手続きなどで利用できるという。

 政府は22年度末までに「ほぼ全ての国民が取得する」ことを目標に掲げるが、21年10月時点での普及率(交付率)は全国平均で38.4%、最も普及率の高い宮崎県でも49.8%、最も低い沖縄県では30.3%にとどまっている。

メリットがリスクに釣り合わず、マイナンバーカードに不満の声

 普及が進まない背景にあるのは「メリットがリスクに釣り合わない」という不満だ。リスクとされるのは主に個人情報の漏洩で、「政府がセキュリティーやサービスを充実させない限り、申請する気はない」との声が聞かれる。またマイナンバーカードが、政府による個人監視のツールとして使われる可能性を指摘し、嫌悪感をあらわにする人もいる。

平井卓也デジタル改革相「デジタルの本質を見極めよ」

 菅義偉内閣でデジタル改革担当大臣を務めた平井卓也氏は、マイナンバーカードのシステムについて「おそらく世界で最も個人情報やプライバシーに配慮したシステム」と胸を張る。その一方で「莫大なコストをかけてこのような仕様にしたにもかかわらず、国民に十分に理解されていない」として、国民のシステムに対する理解を訴える。

デジタル庁は行政手続きをどう改善? 焦点はマイナンバー

 一方、自民党デジタル社会推進本部で事務総長を務めた小林史明衆院議員は「現行の健康保険証は偽造の問題やデータポータビリティー(可搬性)の点で問題がある」と指摘する。これに対してマイナ保険証は、偽造が難しいうえに、医療機関が本人同意のもとに投薬履歴や健康診断の履歴を引き出すことも容易だという。

菅政権、DX推進の功績とその後

 菅義偉首相(当時)の肝煎りで設置されたデジタル庁は、マイナンバーカードの普及促進も重要な任務だ。だが発足当初より民間人材を含めて600人体制で業務に当たるものの、人員不足は否めない。その原因とされるのが「具体的な実現方法は現場に考えさせる」という菅政権の方針だという。

「10万円相当給付」に賃上げ 「目に見える成果」を急ぐ岸田首相

 21年11月10日に発足した第2次岸田文雄内閣。マイナンバーカードの普及に向けて「マイナンバーカードの保有者に最大2万円分を付与するポイント制度」を開始する。具体的には新たにカードを取得した人に5000円分を付与し、カードを健康保険証として使う手続きをした人に7500円分、預貯金口座とひも付けした人に7500円分をそれぞれ付与する仕組みだ。

最後に

 21年に本格運用が始まったマイナ保険証。だが医療機関側のシステムは十分に普及しておらず、22年度中に「ほぼ全国民」に普及させるというマイナンバーカードの普及率も22年4月の段階で過半数に達していない。岸田政権のもと、マイナ保険証制度の普及が進んでいくかどうか引き続き注目していきたい。

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