本業と並行して第二の活動を行うパラレルキャリア(複業)。副収入を主な目的とする副業とは違い、スキルアップや自己実現を目的としており、その活動内容は幅広い分野に及ぶ。今回はパラレルキャリアに対する識者の意見や提言、パラレルキャリアの実践者たちの事例を中心に過去記事をピックアップする。
スキルアップや自己実現を目的とする「パラレルキャリア」

パラレルキャリアとは、本業を持ちつつ第二の活動をすることをいう。経営学者のピーター・ドラッカーによって提唱された概念だ。「第二の活動」はキャリアアップやスキルアップ、自己実現といった目的で行われるが、活動内容や活動形態について明確な定義はない。
パラレルキャリアは複数の活動を並行して行うため「複業」と呼ばれることもある。副収入を目的とした「副業」と混同されることもあるが、パラレルキャリアは必ずしも収入を伴うとは限らず、第二の活動としてボランティア活動を行う人も少なくない。また副業と違い、パラレルキャリアでは本業も第二の活動も、本人にとって同等の価値を持っているのも特徴とされる。
この記事ではドラッカーがパラレルキャリアを提唱した背景やパラレルキャリアをめぐる専門家の意見、実際にパラレルキャリアを実践している人たちの事例を過去記事から振り返っていく。
ドラッカーの著作は65歳以降が大半、人は死ぬまで進化できる
パラレルキャリアという概念を提唱したドラッカーは、自らも好奇心のままに「日本の華道や中世の戦法」など仕事とは全く関係のないテーマの研究を行い、自らスキルアップし続けたという。彼は95歳の生涯の中で45冊の著書を残しているが、そのうち3分の2は65歳以降に執筆したものだ。
転職は怖い。ならば「複業」を試してみよう
『複業の教科書』の執筆者、西村創一朗は複業(パラレルキャリア)について「本業で挑戦できないことを試したり、本業で高めたいスキルをより磨いたりするためのトレーニングを目的としたもの」と語る。また「実際に試してみて向いていないと分かれば、本業に専念する覚悟も持てる」と述べ、転職のリスクを回避しつつキャリアアップを果たす手段としても効果的と指摘している。
「複業は実力主義、学歴は関係ない」
「複業(パラレルキャリア)に学歴は関係ない」と語るのは、人材のマッチングサービスを運営する大澤亮氏。同氏によると複業に必要なのは学歴ではなく、「何らかの専門スキルとソフトスキル」だ。実際、マッチングサービスを利用する人の中には、高卒にもかかわらず4社から業務委託のオファーを受け、月に140万円稼ぐ人もいるという。
一方で大澤氏は複業の課題について「単価の安さ」を挙げ、今後の展開について「もっと多くの企業が複業人材の獲得に乗り出せば、市場の原理で報酬も上がるはず」と期待を寄せる。
ひとごとでなくなる 8人の副業ライフ
パラレルキャリアにはさまざまな形態がある。たとえば運輸会社で営業企画部の部長を務めつつ、東南アジアの建設市場での稼ぎ方を指南するコンサルタントをする人。あるいはシステム開発会社の管理職をしつつ、ITの知見を生かしてベンチャー企業と顧問契約を結ぶ人。大手企業のデザイナー職と個人としての企業や製品のロゴ制作を並行して行う人、といった具合だ。
30年超の会社員生活をやめる不安「想像以上の人生が待っていた」
安定した企業に所属する組織人から、複数の仕事を掛け持つパラレルキャリアへと転身した人もいる。記事で紹介されているのはその1人、滝澤美保氏の事例だ。滝澤氏は東証1部上場の大手流通企業に20年間勤めて人事課長まで経験したが、「1つの会社、1つの業界しか知らないのは後悔するかもしれない」と退職。その後はいくつかの会社で人事のキャリアを積み、現在はどの組織にも属さずに人事研修の講師や面接官やリクルーターの教育担当、ベンチャー企業の事業戦略作り、ITベンチャーのエンジニア採用といった「複業」をこなしている。
20代、30代も危ない!? 「目標喪失」のワナ
「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一も、約500の民間企業と約600の社会公共事業の立ち上げに関与するパラレルキャリアの実践者だった。
「成功など、人としてなすべきことを果たした結果生まれるカスにすぎない以上、気にする必要など全くない」という渋沢の言葉は、パラレルキャリアに挑む現代のビジネスマンにとっても有益だ。
最後に
ビジネスパーソンとしてのキャリアアップやスキルアップはもちろん、人として自己実現を図るうえでもパラレルキャリアは大いに役立つ。社会情勢が目まぐるしく変化する現代を生き抜くためにも、パラレルキャリアを提唱したドラッカー自身の生き方をはじめ、激動の幕末、明治をしぶとく生きた渋沢栄一や現代の先達たちの働き方を学び、それを取り入れていきたい。
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