家計の消費支出に占める食費の比率によって生活水準を測るエンゲル係数。日本は第二次世界大戦の後、エンゲル係数が低下傾向にあるが、実際の生活水準と連動しているかについては疑問の声がある。今回は過去記事を通して、エンゲル係数と日本人の生活水準について振り返る。

「エンゲル係数」の仕組みとは

 エンゲル係数とは家計の消費支出に占める食料費の比率のこと。一般に生活水準を測る指標として使われる。ドイツの学者エルンスト・エンゲルが論文で発表した。

 生活にかかるさまざまな出費のなかでも「食費」は必要不可欠で、一定以上減らせない。そのため貧しい家庭では、すべての出費に対して食費が占める割合が高くなり、裕福な家庭では(娯楽のための消費などが増えることで)食費の割合は低くなる傾向がある。つまり係数が高いほど生活水準は低く、逆に係数が低いほど生活水準は高くなる。

 日本のエンゲル係数は、第2次世界大戦後の60%前後から下がり続け、2005年ごろに22.9%となった。その後はやや上昇に転じ、現在は25%台を推移している。しかしこのエンゲル係数の動きが、実際の日本人の生活水準を示しているか、疑問の声もある。

 この記事ではエンゲル係数を中心に、日本人の家計に関する話題を過去記事から紹介する。

60歳リタイアは非現実的な選択だ

 かつては「60歳定年」が当たり前で、リタイアする人が多かったが、現在は、60歳を過ぎても働くことが増えている。背景にあるのが「収入が増えない上に消費支出がピークとなる」50代の現状だ。

 2017年の「家計調査報告」(総務省統計局)によると、日本人の生活を維持するために必要な「消費支出」は平均28万3027円で、そのうち「食料」が7万2866円を占める。つまりエンゲル係数は25.7%だ。ほかにも交通・通信費、被服及び履物費、教養娯楽費などが消費支出の上位を占め、食費以外の費用をどれだけ減らせるかが、最低限の生活水準を維持するカギとなる。

 50代は多くの場合、「子供が大学に進学する」時期と重なるが、収入は40代と大きく変わらず、消費支出だけが増えることもある。結果として60歳を過ぎても「生活を維持するために」働く必要が出てくる。このように、現代日本の生活水準は必ずしもエンゲル係数と連動しているとは言えない。

不思議な動きをするエンゲル係数。今後も生活水準の指標たり得るか

 「150年以上も前に発案されたエンゲル係数が今でも有効なのか」と問うのは、気鋭のデータサイエンティスト、松本健太郎氏だ。同氏によると、いわゆる「弱者の世帯」のエンゲル係数は、実際にはそれほど高くないという。

 理由は、飲食費の性質だ。「エンゲル係数が使われだした150年以上前は知りませんが、今は飲食費がすごく安い」と松本氏。食事をカップラーメンだけで済ませるなら、1日770円で暮らすことも可能だ。

 このように飲食費が「固定費」ではなく「変動費」となった現代では、エンゲル係数だけで生活水準を判断することは難しい。

東京ディズニーランド8200円。実は世界で最安値水準

 東京ディズニーランドの入園料は、他のディズニーリゾート(フロリダ、カリフォルニア、パリ、中国、香港)と比べて最大半額で安い。東南アジアの観光客からも「日本はコスパがいい」と好評だ。それでも日本人の多くは依然として「高すぎる」と感じる。「日本人の所得や生活水準からすると、世界で最も安いディズニーランドの料金ですら割高に映る」と専門家は言う。

新賃金制度、副業挑戦…「令和の所得増加作戦」の今

 多くの日本人が感じている停滞感を払拭するため、政府はさまざまな手段で国民の「所得増加」を図ってきた。アベノミクスによるデフレからの脱却をはじめ、最低賃金を引き上げる新制度や、個人の遊休資産を有効活用する民泊制度、副業推進の動きなどはその一例だ。

 しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、政府の思惑は目立った成果を上げていない。それどころか、インフレにもかかわらず不況が続く「スタグフレーション」の危機を指摘する声もある。

最後に

 今必要なのは、生活水準を向上させるための行動だ。コロナの影響で世界的に経済活動が停滞しているが、政府や企業には、コロナ後に向けた行動の準備を期待したい。

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