サイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資により設立されたAbema(アベマ)TV。ネットフリックスやYouTube(ユーチューブ)といった海外勢に対抗する、日本発のインターネットテレビサービス「ABEMA(アベマ)」を提供する。今回は、過去記事をもとにアベマの事業モデルが持つ可能性と課題、同サービスで人気を集める番組などについて紹介する。

ユニークな番組で注目される「アベマ」

 ABEMA(アベマ)とは、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資した会社、AbemaTV(東京・渋谷)が運営するインターネットテレビサービス。2020年4月に、サービス名を社名と同じAbemaTVから現在の名称に変更している。

 アベマは、広告収入を収益源としているので利用料は原則無料だ。番組内容もバラエティーからドラマ、スポーツまで豊富に取りそろえ、特に若年層を中心に人気を集めている。タレントや経営者による記者会見のノーカット配信、近年の将棋ブームを支える「将棋チャンネル」など、それぞれの内容も個性的だ。

 コロナ禍の外出制限を追い風に、成長を図るアベマ。だが先行するネットフリックスやYouTubeとは規模が全く異なるうえ、世界を見渡すと中国のインターネットテレビサービスも勢いを増している。強力なライバルが増える中で、アベマにはより多くの視聴者を引きつける番組づくりが求められている。

 今回はアベマをテーマにした過去記事から、同サービスの抱える課題や番組づくりへのこだわりについて振り返っていく。

ネットテレビの「賭け」

 2016年4月に開局したインターネットメディアであるアベマ。サイバーエージェントの藤田晋社長は、広告事業、ゲーム事業に続く3本目の柱として成長させる方針だ。

 だがアベマの採算性を疑問視する関係者も少なくない。アベマをはじめとするメディア事業の売上高は17年9月期に約256億円だったが、営業損益は185億円の赤字。巨大な赤字を他の2つの事業からの利益で支えている状態で、業界関係者からは「本当に大丈夫なのか」との声も上がる。

 それでも藤田社長自ら番組づくりに関与し、他事業から優秀な人材を惜しみなく投入するなど、アベマにかける思いは強い。先行するネットフリックスやYouTubeとは大きな差をつけられているが、それでも「10年がかりでやり抜く」覚悟だという。

アベマ、「会見フル生配信」こそ最良のコンテンツ

 アベマで、特に注目を集めている番組の一つが「記者会見」だ。タレントや経営者などの会見、特に謝罪会見をノーカットで生配信する番組は、「登壇者の表情や発言をすべて見たい」という視聴者のニーズに合致しているという。

 これまで(19年12月時点)に配信され、特に反響を呼んだのはタレントの山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見(情報解禁となる会見終了時からフル配信)、吉本興業の騒動をめぐるタレント2人と社長双方の会見、日大アメフト問題をめぐる選手側と大学側の会見などだ。

 簡単に番組編成を変えられないテレビ局のニュースに対して、フレキシブルな放送が可能なアベマ。強みの一つである、SNS(交流サイト)との連携を生かしながら、視聴者の心をつかむ番組づくりを目指している。

サイバー藤田晋社長、投了寸前の棋士の「絶望」から学ぶ

 プロ棋士・藤井聡太氏の活躍を受けて人気が高まる将棋。その将棋ブームを支えているもう一つのものが、アベマの将棋チャンネルだという。一局が12時間にも及ぶ将棋は、通常のテレビ番組として放送することが難しい。それを実現できるのはネット放送であるアベマならではの強みだ。

 もちろんアベマでは、将棋の対局をただ中継しているだけではない。「今、どちらが勝っているか」という形勢判断をAI(人工知能)によって数値化し、リアルタイムに画面表示することで視聴者の関心を引きつけている。

 視聴者のニーズに合った番組を、日々見せ方を工夫しながら放送するアベマ。将棋から学んだ「意地でも勝とうとする、勝負へのこだわり」を胸に、「何としても成功させる」「意地でも勝つ」というマインドで挑戦を続けている。

黒字の「中国版アベマ」、マンゴーTVに学ぶべきもの

 アベマは、インターネットと融合したマスメディアの日本における代表例だ。だが世界には、ネットフリックスやYouTubeなど強力なライバルがいる。中でも近年急成長を遂げているのが、中国版アベマとも呼ばれる「マンゴーTV」だ。

 中国の有力テレビ局の一つ「湖南衛視系」が手がけるマンゴーTVは、巨大資本であるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)を背景にしたトップ3社に次ぐネットテレビ業界4位(2019年時点)にとどまるものの、開局からわずか3年で黒字化を達成している。

 収益化が難しいとされる業界で急成長を続ける背景にあるのは、「イノベーションを起こせ、しからずんば死を」という社風だ。こうした理念のもと、経験豊富で優秀なチームを組むことによって、他社に比べるとヒット率が格段に高く、投資効率の優れた番組づくりが可能になっているという。アリババはこうした点を評価し、20年12月、マンゴーTVの運営会社であるマンゴー・エクセレント・メディアに出資している。

最後に

 日本発のインターネットテレビサービスである、アベマ。ノーカットの記者会見や将棋チャンネルなどユニークな番組づくりで、若年層を中心に視聴者を増やしている。 しかしメディア業界は収益化が難しく、しかもネットフリックスやYouTubeといった巨大なライバルも立ちふさがる。AbemaTVが、同業者の成功例も参考にしながらどのように成長していくか、引き続き注目していきたい。

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