オンライン診療の需要が高まっている。2018年ごろからその動きはあったが、新型コロナウイルス感染拡大状況下で加速したようだ。オンライン診療には、病院まで行かずに診療を受けられるというメリットがある一方で、処方箋が横流しされるなどのリスクがある。そのため厳しい規制があったが、時限的に緩和されつつある。オンライン診療の現状と可能性をみていこう。

オンライン診療とは

 オンライン診療とは、インターネットを利用して医者と患者が離れて診療を行うことだ。

 医者と患者が会わなくても診療が行えるため、過疎地域での医療や医者不足の問題の対策につながる可能性があるとして近年注目を集めている。2018年には厚生労働省が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定した。20年4月には、電話やインターネットを使った診療や服薬指導などについての時限的・特例的な取り扱いについて内容を更新した。これまでは厳しい規制があり、オンライン診療実施のハードルは高かったが、現在は時限的に規制が緩和されている。その内容と現状はどのようなものか。以下、これまでのニュースをみていこう。

ネット診療、保険対象外で中断急増

 18年にオンライン診療の保険適用が決まったが、その条件は厳しく、ネット診療拡大の足かせとなってきたようだ。厳しい条件とは、例えば保険対象となる疾患が生活習慣病や難病など、一部に限定されたこと。また、通院状況や医療施設の基準などのルールも厳しいと問題視されていた。医者不足により、地方ではオンライン診療への期待が高まっている。普及のためには、制度の見直しが必要になるとみられていた。

ソフトバンクがオンライン健康相談事業参入、AIも活用

 ソフトバンクがオンライン健康相談業に参入するにあたり、参考になりそうなのが合弁相手の中国企業、平安健康が手掛ける事業だ。同社のサービスでは、自社採用の医者とAIが24時間365日、オンラインで利用者の健康相談に応じ、必要に応じて病院の紹介や処方箋を宅配するアプリを提供してくれるという。東南アジアへのサービス展開も進めているようだ。ITを駆使して医療を効率化する動きは世界的に広がっている。日本でもITをもっと医療サービスへ展開していくことが求められている。

まるでコンビニ? 診療所を変えるマッキンゼー流課題解決

 18年10月、東京・JR田町駅の駅ビルに開業した診療所「クリニックフォア田町」が、常識を覆すほどの数の患者を診察している。この病院を立ち上げたのはマッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタント経験がある内科医の金子和真氏。自ら患者を診察しながら、スタートアップのリンクウェル(東京・港)のCEO(最高経営責任者)として、診療をデジタル化するシステム開発を進めている。

 同クリニックが多数の患者を診察できるのは、15分刻みでウェブ予約を受け付けているからだ。また、患者には事前に基本的な問診に答えてもらい、薬もできるだけクリニック内で出すなど、効率化を進めている。同社は今後、ウェブ予約や問診に加え、オンライン診療の機能も提供していく考えだ。また、薬やサプリメントの自社ブランドも立ち上げているという。

新型コロナで進むオンライン診療、脚光浴びる意外な技術も

 20年3月、厚労省がオンラインでの服薬指導に関する通知を出し、服薬に関する規制が緩和された。これにより、患者はビデオ電話などで薬剤師と話して指導を受け、薬局に行かなくても配達などで薬を受け取れるようになった。クオール薬局などを運営するクオールホールディングスは早速、薬剤師と患者のオンライン相談を開始した。オンライン診療アプリを手掛けるメドレーの田中大介執行役員は、このような流れを受けて2月以降のアプリ新規登録者の増加率が8倍になったと話す。現在、遠隔医療用の医療機器開発も行われており、今後は急速にオンライン診療のインフラが整う可能性がある。

初診時のオンライン診療、速やかに実施を 問題点は後から修正

 20年4月、内閣府の「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際してのオンライン技術の活用について」の書面会議では、初診患者でもオンライン・電話診療を受診できるなど、これまでの規制を緩和する方針が出された。ただし、医療品の横流し等のリスクに対応するために、処方については一定の制限を求めた。また、オンライン診療時に医療機関が十分な対価を得られるような見直しが加えられた。ただ、今回の規制緩和は新型コロナウイルス感染が収束するまでの時限的対応であり、原則として3カ月ごとに実用性や安全性を検証していくものだ。オンライン診療の有用性が高まれば、今後も拡大する可能性はあるだろう。

オンライン診療も前進、新型コロナがもたらす新たな社会

 以上のように、新型コロナ感染拡大状況下でオンライン診療が変化を遂げてきたことが分かる。それを支えるのが医療機器の発達だ。豊田合成は、触覚伝送技術を使って、問診だけのオンライン診療に触診を加えようとしている。オンライン診療アプリを開発するMICIN(マイシン、東京・千代田)は、処方箋を発行するためにアプリ上でファクスできる機能の開発をわずか2日で完了し、1週間後には運用を開始した。新型コロナ収束後でも持続可能なオンライン診療のためのデバイス開発が着々と進んでいる。

新型コロナが生んだ「環境格差」を無くしたい

 政府は時限措置としてオンライン診療を解禁した。だが、マネーフォワードの辻庸介CEOは、「これだけテクノロジーが発展を遂げているのに、恩恵を受けていない人が多すぎる」と指摘する。辻氏はもともとお金についての情報格差をテクノロジーで変えたいという思いから起業した。今後は、リモートワークが実践できていない企業をどうデジタル化していくか、その環境格差の是正を進めていきたいという。新型コロナが収束した後に何が元に戻り、何が加速するのか。これまでITを必要としていなかった人が今後は必要とするようになる流れは止まることはないだろう。

最後に

 オンライン診療の過去から現状までをご紹介した。今後新しい生活様式が定着する上で、医療のIT化は避けて通れない問題になりそうだ。新型コロナ収束後の医療がどう変化していくかが注目される。

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