米国発のデリバリーサービス、ウーバーイーツ。2016年より国内でもサービスをスタートし、現在は新型コロナ禍による自粛要請の影響で需要も高まっている。本記事では、ウーバーイーツを中心に、デリバリー業界の直近の動向を、過去の記事を参考に振り返る。

ウーバーイーツとは?

 ウーバーイーツは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くウーバー・テクノロジーが2014年より展開しているデリバリーサービスだ。日本では2016年よりサービスが開始され、利用者を増やしている。また、直近では新型コロナによる自粛要請で、その需要はさらに高まっている。一方で、配達員の労働環境に関する指摘が見られるなど、サービスとして改善の余地もあるようだ。

ウーバーCEO、目指すは「移動のグーグル」

 そんなウーバーイーツを運営するウーバーは、2019年1~3月期の最終損益が10億1200万ドル(約1100億円)の赤字。当時、そこからどう黒字化するかが注目されていた。そこで本誌は、CEOのダラ・コスロシャヒ氏にインタビューを実施。今後の勝ち筋などを聞いた。インタビューで同氏は、赤字は「将来の成長への投資」と捉えていると語っていた。ウーバーの取引総額は当時、年間500億ドルに上り、為替レートの影響を除いた成長率(19年1~3月期の前年同期比)は40%以上。「これほどの規模でこれほど速く成長している企業は、世界でも数社しかない」と自信をあらわにしていた。

 また、対象となる市場の規模も、配車や食事宅配サービスなどを合わせると世界で10兆ドルを超える。「これらの市場で勝者となるのは多くの場合、早期参入者です。市場に早く参入し、旺盛な投資で成長を遂げ、かつ迅速に革新を起こせる企業がゲームに勝つことができるのです」と、赤字よりもスピード感を優先する経営方針を語った。

ウーバーイーツが映す日本の将来図、 「雇われない社会」への胎動

 ウーバーイーツが普及する一方、2019年12月5日、飲食店からの配送サービス、ウーバーイーツのアプリを使って仕事を請け負う配達員の労働組合、ウーバーイーツユニオンが都内で記者会見を開いた。自身も配達員である前葉富雄執行委員長は、ウーバー側の態度に語気を強めた。というのも、急速にサービスが広がることで次々に発生している事故やトラブルへのウーバー側の対応が不十分というのがユニオンの言い分だ。個人事業主が運送を担うサービスはこれまでも多くの問題が起きてきた。2007年にはバイク便の配送員について、厚生労働省が「労働者性がある」と通達している。1つの運送会社の仕事を専門にこなすトラック運転手を、会社側が個人事業主と見なしているのは問題だと指摘されるケースもある。

ウーバーイーツの報酬引き下げに配達員が抗議、日本法人は団交を拒否

 また、同組合は2019年12月5日、米ウーバー・テクノロジーズの日本法人(東京・渋谷)を訪れ、団体交渉の実施と配達報酬引き下げの撤回を求める声明文を提出している。「運営側は報酬を一方的に改定した。今回のようなことがあれば、これを生業としている人は安定して働けない。よりよく働くためにも現場の声を聞いてほしいのに、ウーバーはずっと対応してくれない」。組合の執行委員長を務める前葉富雄氏は報道陣を前に憤りをあらわにした。ウーバーイーツでは同年11月29日に、東京エリアで荷物の受取料金や配達距離当たりの基本料金を引き下げるなど報酬体系が改定された。ウーバーの日本法人は「改定が配達員の収入に影響を与えることは想定していない」(広報担当者)と主張。一方、組合側は「1件ごとの収入は明らかに下がる。また改定についての合理的説明もない」と訴える。

小僧寿しが映す、「持ち帰りすし」業態の限界

 一方、国内のデリバリー業界でも、新たなプレーヤーが続々と現れる中、一部の企業は苦戦を強いられている。そのひとつが持ち帰りすし大手の小僧寿しだ。同社は、食材価格や人件費が高騰する中、既存店売上高が低迷を続けており、2019年2月14日に発表した2018年12月期決算で9年連続となる最終赤字を計上。およそ10億5000万円の債務超過に陥ったため、東京証券取引所が2019年3月27日、2019年12月期末までの上場廃止の猶予期間に入ったと発表した。

 同社は全国で持ち帰りすし店の「小僧寿し」や「茶月」など約250店舗をチェーン展開する。設立は1972年。持ち帰り専門店という新しいコンセプトで、すしの「中食」需要を開拓してきた。家庭の食卓で手ごろな価格で本格的なすしが楽しめる点が人気を集め、87年には加盟店が全国で2300店を突破するなど、快進撃を続けていた。

中食市場の起爆剤、「ポータグルメ」の使い方

 しかし、スマートフォンのアプリなどを使って注文を受け付けるデリバリーやテークアウトに対応する飲食店は、ここ数年で増えてきている。実際、ホットペッパーグルメ外食総研は、2019年の食のトレンドを表す言葉として、デリバリーやテークアウトなどの「ポータグルメ」を挙げている。同総研の稲垣昌宏上席研究員は「これまでの中食市場の中心はコンビニなどで購入する弁当など、速くて安いコストパフォーマンスを重視した商品が多かった。これからはおいしさを求めて持ち帰れるポータグルメが中食市場のカギとなる。すでに、予約の取れないすし屋といった高級店がテークアウトに対応するといった動きがある」と言う。

スクープ LINE、グループで「出前館」に300億円出資へ

 実際、大手インターネット企業のLINEが、フードデリバリーサービスを手掛けるジャスダック上場の出前館が実施する第三者割当増資に応じ、グループで300億円出資することが2020年3月26日、日経ビジネスの取材で明らかになった。フードデリバリー市場は年々拡大している。調査会社のエヌピーディー・ジャパン(東京・港)によると、国内のフードデリバリー市場は2019年に4182億円と15年(3564億円)から17.3%伸びている。同社は米ウーバー・テクロノジーズが展開する「ウーバーイーツ」や出前館、楽天の「楽天デリバリー」など主要7サービスでの金額シェアは43%に上ると推計している。トップ3がシェア10%前後で拮抗するが、出前館はその一角とみられていた。

「この市場は10倍伸びる」 LINEが出前館に300億円を投じる狙い

 LINEは、次期社長(6月就任予定)として藤井英雄・執行役員 O2OカンパニーCEO(最高経営責任者)を送り込んだ。また、50人のエンジニアも併せて出前館に派遣し、一気呵成(かせい)に改革を進める。次期社長となる予定の藤井氏は「市場としては5~10倍に伸びる可能性がある。EC(電子商取引)の中で、今後ここまで伸びしろがある市場はほかに見当たらない」と言い切る。出前館の決算資料によると、当時の米国の大手デリバリー事業者の「グラブハブ」の年間取扱高は約6000億円で、全登録ユーザーに占めるアクティブユーザー(1年以内にサービスを利用したユーザー)の割合は6.2%、韓国デリバリー最大手の「配達の民族」を運営するウーワ・ブラザーズは取扱高5000億円を超え、アクティブユーザーの割合は18.2%に上る。一方、出前館は764億円で2.3%(19年8月期)といずれも見劣りする。この差こそが「伸びしろ」というわけだ。

最後に

 ここまで、ウーバーイーツとデリバリー業界の動向について、過去のニュースを振り返りながら紹介してきた。ウーバーイーツは、まだ配達員の働く環境など、改善の必要がある点もある。しかし、新型コロナ禍による外出自粛要請の影響で需要が高まるなど、デリバリー業界は今後、さらに成長していくことが予想される。今後もその動向から目が離せない。

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