心理学者であり「自己啓発の父」としても知られてきたアドラー。2013年には、アドラーの心理学を基にした本『嫌われる勇気』が大ヒットするなど、再び注目が集まっているがその魅力は何なのだろうか。本記事ではアドラーに関連する記事をまとめてご紹介する。

アドラーの説いた考え方

 アルフレッド・アドラーは19世紀オーストリア出身の心理学者、精神科医だ。フロイトとは共同研究を行っていたが決別し、独自の心理学の理論を確立した。

 アドラーの思想の特徴に、「トラウマ」の否定がある。人の心は他者からの影響でねじ曲げられることはないという考え方だ。これはアドラーの、心は他人には理解できないという前提にもつながる。だからこそ、人同士の理解には互いへの気配りや思いやりが求められるとアドラーは説く。以上のような考え方は現代でも通じるのだろうか。記事を見ていこう。

「嫌われる勇気」を持てば幸せになれる 対人関係に悩まない生き方

 著者の岸見一郎氏は、「嫌われる勇気を持っていないと、何のために生きているのか、分からなくなる」と指摘する。意見を主張することで摩擦が生じる場合もあるが、摩擦を恐れて意思表示を諦めることは、自分の人生を諦めてしまうことでもあるからだ。ただ、日本の社会では和が重んじられる。自分の意見を主張する人が増えればまとまりがなくなるのではないかという点について、岸見氏はそれでも、主張に伴う責任を負いつつおかしいことはそう言える社会の方が良いと指摘する。

 著名な経営者や自己啓発的な本の著者もアドラーの考えを実践しているケースが多い。子育てから社員育成まで、広く応用をしていけるようだ。

「変わりたい」人が変われないワケ

 とはいえ、みんなが「嫌われる勇気」を持ち、自分を変えていくことは容易ではない。自分の「性格」は生まれつきのものに見え、変えにくそうだ。しかしアドラーは、「性格」と「わたし」を分け、目的に応じて「性格」は変えられると言った。「大切なのは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかである」とアドラーは指摘した。自分にできることもできないことも受容し、他人からの承認も必要としなくなれば、他人との関わりにも喜びが見いだせるという。

どうしたら「人目」から解放されるか

 「人目」や「人の評価」が気になってしまう。これをどうのように受け止めればいいだろうか。

 そもそも人目が気になるのは、自分が共同体の中心にいると思っているからこそだ。そして、他人が自分を陥れるのではないかと思い込んでいる場合がある。まずは、相手を「敵」ではなく、「仲間」として見ることが第一歩だ。そして、他人の期待に応えるために生きているわけではないので、評価を恐れる必要はない。それよりも大事なことは、自分自身の人生を生きる勇気である。

人の失敗を叱責してはいけない理由

 部下が失敗を繰り返すとき、上司は叱らない方がいい。では何をすべきか。まず、部下の失敗ではなく、取り組んだ仕事に注目してから言葉をかけるべきだ。そうすることで、部下は自分に価値があると思い、仕事に取り組む勇気が持てる。それでもなお失敗するということはあるが、部下は自信を持って問題に対処していくことが可能になるだろう。

部下を勇気づけよう

 部下に対して「叱ってもいけない、ほめてもいけない」とはどういうことか。部下が仕事に取り組まない理由には、自分には価値がないと思っている場合がある。上司は部下に、自分には価値があると思え、仕事に取り組む勇気を持てるように援助することが最も大切だ。アドラーは「自分に価値があると思えるときにだけ、勇気を持てる」と言った。これは仕事にも当てはまる。具体的には部下に折に触れて感謝の気持ちを伝えるなどして、部下が課題に立ち向かっていく勇気を持つ援助をすることが重要である。

「欲なし草食系」部下のやる気を引き出すには?

 「管理職にはなりたくない」、ほめても「別に普通じゃないですか」と言う「草食系」部下。彼を職場のリーダーとして育てるにはどうすればいいか。

 そもそも「草食」の部下を「肉食化」させるという目標自体を改めた方がいいかもしれない。アドラーによると、人は勇気が補充されていれば自然ともっと良くなろうとするという。部下の価値観を尊重し、企業が求める目標との重なりを増やす支援を考える方が成長意欲をかき立てるだろう。

アドラーに学ぶ「不機嫌部下」の傾向と対策

 不機嫌そうにため息を吐いたり、仕事を頼むと辛そうな表情をしたりする「不機嫌部下」。なぜそのような態度を取るのか? 周囲はどのように接すればいいのだろうか? アドラーが指摘するのは「弱さは時に強さ」であることだ。このような人物は、自分の弱さをひけらかすことで、周りを意のままに動かす強さを手に入れている。この場合も、周囲の人間が部下に勇気を補充することが必要だ。部下のため息や暗い表情などに過度に反応することをやめ、最低限の支援は行い、あとは黙って見守る。仕事に対して感謝の気持ちを伝え、勇気づけていくことが大切だ。

「評論家社員」の会社批判、同調も反発も厳禁

 問題への鋭い指摘や批判で周囲から一目置かれているものの、自ら解決には動かない「評論家社員」。仕事を進めるためにも、上司はどう対応すればいいのか。アドラー心理学では周囲の人が注目をした行動が増えると考える。彼の場合、発言をしたときに周囲の人間がそれに注目し、それが彼の満足度を高める結果になったと考えられる。従って、彼の論理に乗らず相手にしないことが得策になる。周囲の人は彼の批判かかわらず、自らが正しいと思うことを粛々と行っていくのが良いだろう。

アドラー心理学、「部下をほめてはダメ」の功罪

 『嫌われる勇気』では「嫌われてもいい」という部分が前面に出ているが、正確には「自分の信念に従って生きるために人から嫌われたとしても、それは問題ではない」というのが本質だ。また、個人主義が浸透していない東アジアで本書が人気であるのは、集団主義社会では「課題の分離」が苦手だという背景がある。「自分の課題」と「人の課題」を分けることは、相手に価値観を押し付けないことにつながる。対等な関係を築き協力しあえる関係、また自分がここに所属して良いのだという感覚が大事である。

最後に

 アドラー哲学や、その実践的な応用の手法についてご紹介した。近年、SNSの普及や社会情勢の急激な変化などにより、人間関係に悩む人も少なくないかもしれない。対人関係を見つめ直すきっかけとしてアドラーの哲学を参考にしてみてはいかがだろうか。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。