長期的な成長を維持するため、稼ぐ力とESG(環境・社会・企業統治)を両立させる経営への転換を目指すSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)。国内外の多くの企業が先進的な取り組みを進めている。今回はSXの重要性とSXに取り組む企業の事例について過去の記事からピックアップしていく。

持続可能性を重視した経営への転換を目指す「SX」

 SXとは「サステナビリティ・トランスフォーメーション」の略。経済産業省が設置した検討会で提唱された言葉で、企業が「稼ぐ力」を維持するために、持続可能性を重視した経営へ転換を図ることを意味する。DX(デジタルトランスフォーメーション)がデジタル技術によって短期的な「稼ぐ力」を獲得しようとするのに対し、SXは長期的な成長を目的とする。

 企業が長期的に成長するには、「稼ぐ力」と「ESG(環境・社会・企業統治)」の両立を目指す経営と、投資家との対話の在り方を変える必要がある。

 具体的な取り組みの1つは、サーキュラー・エコノミー(循環経済)の推進だ。「今ある資源を有効活用し、無駄をなくす」ものだ。

 この記事ではSXに注目が集まる理由や、SXに向けた日本企業の取り組みを中心に過去の記事を振り返っていく。

何かと話題のDXよりも「SX」を重視すべき2つの理由

 経済産業省の検討会で、SXについて、「企業としてのサステナビリティーを高める」「社会要請などの不確実性に備え、企業の中長期的なリスクとオポチュニティ(機会)の双方を把握し経営に反映する」「上記2項目を経営の軸として、都度アップデートを行い環境変化への適応を行う」という3項目からなる定義が示された。

 背景にあるのは、新型コロナウイルス感染症を含むさまざまな環境変化や顧客嗜好の変化に備えることの重要性と、世界的な流れとなっているSDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素の動きだ。

脱炭素時代に日本的経営を再構築 後れを取った環境先進国、今こそパラダイムシフト

 かつて「環境先進国」と呼ばれた日本だが、現在は世界的な脱炭素の動きに取り残されつつある。産業面の競争力低下も目立つ。太陽電池のシェアは、05年には47%に達したが、中国勢などの追い上げを受け、12年には約6%に低下。風力発電機からも日本勢は撤退した。

 2021年6月、経団連会長に就任した十倉雅和氏は、政府が目標とする30年度の温暖化ガス46%減について「歯を食いしばっても達成すべきだ」と危機感をあらわにしている。

りそなHD南社長「10兆円投融資で中堅・中小のSXを支援」

 日本企業のSXを促進するために、金融機関も動いている。りそな銀行を傘下に持つりそなホールディングス(HD)の南昌宏社長は「環境・社会分野への投融資について30年までに10兆円規模を目指す」と表明。SXのためのDXへの取り組みも加速させていきたいという。

 日本の産業構造を見ると、中堅・中小企業は、数が企業全体の99%以上、雇用者が7割以上、付加価値の生産額が半分以上を占めている。中堅・中小企業が大きな変化に適応して競争力を維持・向上させることが社会にとって重要だというのだ。

みずほ新トップが語る「再起プランの現在地」と「攻めの戦略」

 22年2月に就任したみずほフィナンシャルグループ(FG)の木原正裕社長も同様の考えだ。システムトラブルなどの不祥事を起こした同社だが、顧客や社会からの信頼を取り戻すためにも、SXに向けた動きを「我々の機能をフル稼働して推進する」と語る。

 50年のカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)につながる技術開発やビジネスモデル構築のプロジェクトに対し、みずほ銀行は自己勘定による株式出資枠を新たに設けた。今後5年くらいかけて、500億円超の出資を目指すという。

セブン&アイが容器再生工場、リサイクルに本腰

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)が取り組んでいるのは「プラスチック対策」だ。オリジナル商品向けの容器に使用する素材について「バイオマス(生物資源)やリサイクル素材」の採用を進め、50年までに100%切り替えるのが目標だ。セブンイレブンやイトーヨーカドーの店舗にペットボトルの自動回収機を約1300台設置している。

 リサイクル素材需要が供給を大きく上回れば調達コストが上がるリスクも想定される。このため、セブン&アイは自らリサイクル事業にも乗り出しており、リサイクル素材の安定供給を確保する狙いだ。

ユニリーバと花王、競合が手を組み「容器から容器」リサイクル

 日用品メーカーとして競合関係にあるユニリーバ・ジャパンと花王も、共同でプラスチック容器のリサイクルに取り組んでいる。両者が目指しているのは回収した容器を新品の容器にリサイクルする「水平リサイクル」の実現だ。ペットボトルの場合なら、回収された容器は他の容器の原料ではなく、ペットボトルに生まれ変わるため、新たな原料は不要となる。

 また、ユニリーバと花王は共に、中長期目標を掲げてプラスチックごみの削減にも取り組んでいる。ユニリーバはさらに同社が販売する量より多くのプラスチック容器を回収・リサイクルすることも目指す。

最後に

 社会環境や消費者行動が激しく変化する現代において、企業が長期的に成長し続けるためにはSXの取り組みが欠かせない。現時点では食品メーカーや日用品メーカーなどを中心とするリサイクルの取り組みなどが中心だが、今後SXの考え方が浸透していくことで、さらに多様な取り組みが登場すると期待される。産業界の今後の動きを見守っていきたい。

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