日本女性の労働率を象徴する「M字カーブ」。結婚や子育てをしながら働き続ける女性が増えたことでM字カーブは解消に向かいつつある。一方で少子化や非正規雇用の増加といった別の課題が加速しているとの指摘もある。今回は過去記事から、M字カーブに関する注目のトピックを振り返る。

解消に向かいつつある「M字カーブ」

 「M字カーブ」とは女性、特に日本女性の労働力率に見られる曲線形状のこと。男性の労働力率は逆U字型(台形)になるのが一般的だが、女性の場合は中央部分がくぼんだM字型になることが多い。女性が結婚や出産をきっかけに離職して、家事や育児に専念するのが当然という考えが根深いためだ。欧米では女性が継続して働きやすい環境が整備されている国が多く、女性の労働力率も逆U字型に近い曲線となっている。

 近年になり、日本の労働環境を象徴してきたM字カーブは解消されつつあるという。2019年6月には女性の就業者数が3000万人を突破し、男女間の差は着実に小さくなってきた。一方で、結婚しない(もしくは子供を持たない)女性の増加や晩婚化が進んでいる。また非正規雇用から正規雇用への転換もあまり進まず、安定した就労という点では課題が残る。「M字カーブの解消」には、国や企業によるさらなる取り組みが必要だ。

 この記事ではM字カーブをめぐる話題について、過去記事からピックアップしていく。

女性の活躍を考える~多様性と研究職の視点から

 M字カーブの解消と「女性の活躍」は切り離せない関係にある。伝統的に男性優位の傾向が強い政治の世界も同様だ。日本でも「小池百合子都知事の誕生」や「民進党代表に蓮舫氏が就任(当時)」など、女性の活躍を象徴する出来事はある。

 それでも15歳以上65歳未満の人口に占める女性の労働力率は(2015年の時点で)50%程度で、70%超の男性には及ばない。

女性の「就業率」が過去最高の69.9%に

 産休・育休制度の整備や保育所の増設に力を入れていた安倍政権の時代には、女性活躍がうたわれた。18年8月に発表された労働力調査では女性の就業率(15歳以上の人口における就業者の割合)が過去最高となった。一方で、男性の78.3%が正社員なのに対し女性の正社員は44.5%にすぎない。

 女性の場合、出産や育児の期間となる30歳くらいから40歳くらいまで就業率が下がるM字カーブが問題視されてきた。それがここへきて「M字」が「台形」に近くなり、M字カーブ問題はかなり解消されつつある。

女性に「二者択一」を迫る日本型人事制度

 女性に「仕事と家庭の二者択一」を迫る傾向は今も強い。男女雇用機会均等法により「女性と男性を対等に扱う」ことになったが、結婚や出産を諦める女性の増加や、平均出産年齢の上昇を招いているという。

 いわゆるM字カーブは急速に解消の方向に進んでいるが、その一方で、平均出産年齢はジワジワと上昇が続いているのだ。1人目の出産年齢が上昇すれば、2人目、3人目を生むチャンスは必然的に低下する。つまり、初産年齢の高齢化は少子化の一因でもあるわけだ。

ニッポンの製造業から消えた400万人労働者の行方

 M字カーブ現象の緩和に伴い、日本全体で働く女性が増えたが、製造業では、女性比率は過去20年にわたり低下する一方だ。背景にあるのは、男女を問わず人材不足が進んでいることにある。1990年代以降、製造業は400万人以上の雇用を削減し続けており、数字の上では、この400万人は、ほぼ全員が非製造業に吸収されたという姿となっている。

非ホワイトカラーは八方ふさがりで絶望的な人材難となる

 第三次産業で人材不足が続いている。その理由の1つとして、非正規雇用のパート従業員などに依存してきたことが挙げられる。女性の非正規雇用者は新型コロナウイルス禍が始まるより前の、2019年春から減少に転じている。M字カーブのへこみも年々小さくなっており、育児ブランク明けの女性を安くパートで雇える時代は終焉(しゅうえん)を迎えている。

少子化対策に過剰な期待は禁物。有効な政策はあるか

 政府は、仕事と子育ての両立支援により、M字カーブの解消につながる成果を上げつつあるとする。しかし1989年から続く少子化傾向は歯止めがかからず、「少子化対策として効果がなかったことが証明されてしまっている」との指摘もある。

 厚生労働省の集計では、2019年の出生数は90万人を割り、21年には70万人台まで落ち込むという見方もあった。

最後に

 日本人女性の労働環境は、近年改善が進んでいるという。M字カーブは解消しつつあるが、依然として続く少子化傾向や、今なお多い非正規雇用など、課題は残されたままだ。男女格差の解消に向けた国や業界の取り組みが今後どのような成果を挙げていくか注目される。

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