炭素の含有量に応じて化石燃料に課税する「炭素税」。化石燃料の需要を抑制することで二酸化炭素(CO2)排出量削減につなげるのが狙いで、すでに欧州や日本などで導入が進んでいる。一方で炭素税が企業の経済活動に与える影響が指摘されるなど、環境と経済の両立も重要なテーマだ。今回は炭素税をテーマとした過去記事から、注目すべきトピックを振り返っていく。

温暖化対策としての「炭素税」

 炭素税とは、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料について「炭素の含有量に応じて課税」する環境税の一種だ。化石燃料の価格や、それを利用する製品の製造・利用コストを引き上げることで化石燃料の需要を抑制し、結果としてCO2の排出量を減らすことを主な目的としている。

 すでに欧州では2000年ごろまでにフィンランド、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、イタリア、英国で炭素税などが導入されており、日本でも12年より化石燃料に課税する「地球温暖化対策のための税」が導入されるなど、炭素税やそれに類する環境税の課税は世界的な流れだ。とはいえ炭素税による製品価格の上昇が経済活動に与える影響も指摘されており、経済と環境の両立は企業にとって大きなテーマとなっている。

 この記事では炭素税をめぐる識者の意見や企業の取り組みについて、過去記事からピックアップする。

スティグリッツ氏が書く日本経済再生への処方箋

 米経済学者ジョセフ・スティグリッツ氏は「日本は、供給サイド、需要サイドの両面に問題を抱える」とし、実体経済においても、財政面でも問題があると言う。これらの問題に取り組むには大規模な炭素税の導入と同時に「グリーンファイナンス(二酸化炭素の排出量が少ない社会を実現するための取り組みに資金を提供すること)」を整備すべきだとする。それによるマイナスの効果もあるが、炭素税導入に伴う大規模投資が生む効果の方が必ず上回ると見ている。

フォンデアライエン次期EU委員長に関する3つの不安

 19年12月にEU(欧州連合)委員長に就任したウルズラ・フォンデアライエン氏。同氏は「欧州が世界で最初の温暖化ガス正味ゼロの大陸になるよう努力を強めるべきだ」と語るなど、温暖化対策に強い意欲を持つ人物だ。

 だがフォンデアライエン氏が打ち出した国境炭素税(温暖化ガス排出量削減のための努力を十分に行っていない国からの製品について関税をかける)については、その効果について経済学者らから疑問の声も上がっている。この税がEU企業が製品の組み立てに使う半製品にもかけられる可能性があり、その場合、EU製品の価格競争力が弱まることになるからだ。

脱炭素と経済の両立、成否を握るのは「3つの技術」

 炭素税の導入をめぐり、大きな課題とされているのが「脱炭素と経済の両立」だ。このためガソリンなどの燃料に高い燃料税を課す国(主に先進国)と補助金を出す国(途上国が中心)とで対応が大きく分かれており、炭素税の導入で各国が足並みをそろえるには時間がかかると見られている。

 化石燃料の消費によるCO2排出量の伸びを今後20年間で抑制するうえで重要なのは、技術革新に加え、政策介入であろう。技術革新は、二酸化炭素回収活用技術(CCUS)、再生可能エネルギーと充電池(蓄電池)、そして水素活用の3つだ。

国に先行、広がる「社内炭素税」設備投資にアメとムチ

 CO2排出のコストを設定し、投資判断に使う「カーボンプライシング」。菅義偉首相(当時)が施政方針演説の中で「カーボンプライシングに取り組んでいく」と表明するなど、日本政府も取り組みに意欲を示すが、民間企業の中にもそれに先駆けた動きが見られる。

 たとえば帝人では、すでに自社内で独自の炭素価格を設定する「インターナルカーボンプライシング」を導入済みだ(1トン当たり社内炭素価格が6000円)。これによりCO2排出量削減につながる機器の導入など、各事業部門が投資計画の段階からCO2排出量削減に取り組みやすくなる効果が期待されるという。

トップ3はトヨタ、花王、日立 経営陣と社員が一丸 会社丸ごとつくり直す

 21年12月14日、多くのメディアがつめかけた東京・台場の会見場で、トヨタ自動車はサプライズ演出を交えて豊田章男社長自ら、30年にEV(電気自動車)を世界で年間350万台販売する目標を発表。同社が1年間に販売する新車の約3割に相当する。

 脱炭素時代の経営においては、すでに見通せている数字の積み上げだけでは将来像を描ききれず、社内外のステークホルダー(利害関係者)に対して後ろ向きなメッセージを発することにもなりかねない。「あるべき姿」を見据えた高い目標をまず設定し、そこに到達することを前提に様々な策を講じる「バックキャスティング」型の経営へとトヨタが一歩踏み出したと言えそうだ。

外圧主導の脱炭素政策から卒業を

 従来、石炭火力発電所をインフラ輸出戦略の柱と位置づけてきた日本だが、日本の姿勢を批判する米国政府や石炭火力の輸出支援の停止を求める英国政府の声を受けて「輸出支援の全面停止」にかじを切り始めている。

 しかし「外圧に背中を押される格好」で脱炭素政策を進める日本の姿勢には問題があると指摘する声もあり、受け身の政策ではなく「攻めの戦略」を取ることが求められている。

どうなる、炭素税導入後の企業

 炭素税を導入する各国の動きに対応し、「CO2排出量を実質ゼロにする」と宣言する企業は国内外に数多く存在する。しかしそれを実現しようとするとビジネスモデル全体に破壊的な影響が及ぶと考えられており、各企業が宣言通りの目標を達成できるかどうかは不透明だ。

 だが世界的な制度として炭素税が整備されれば、技術革新を生む可能性もある。省エネルギー高速長距離輸送システム「ハイパーループ」や、昆虫、海草、人工肉の食品化、VR(仮想現実)を活用した在宅で楽しめる娯楽など、様々な代替商品・サービスが生まれそうだ。炭素税は企業にとって魅力的な仕組みではない。だが、本当に必要なのは脱炭素に向けた「美辞麗句」ではなく、このような強制力を持ったルールなのだ。

最後に

 地球温暖化対策の一手段として、炭素税の導入は国際的な流れだ。すでに欧州や日本では炭素税やそれに近い環境税の導入が進められ、民間でもインターナルカーボンプライシング制度導入に取り組む企業が増えている。しかし本格的な炭素税の導入は経済に大きな影響を与えかねない。脱炭素に向けた取り組みが今後どのように進められていくのか、見守っていきたい。

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