原油の先物価格が大幅に上昇する原油高騰。直接の原因は石油の需要に対する供給のギャップだが、その背景にはさまざまな要因が存在する。今回は新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻に関連する原油高騰の話題を過去記事からピックアップしていく。

個人の生活から国の財政にまで影響する「原油高騰」

 原油高騰とは、石油の需要と供給のギャップやそれに伴う投機マネーの流入などにより、原油の先物価格が大きく上昇することをいう。例えば2008年には原油価格が1バレル当たり103ドルを超えて原油高騰と言われたが、21年以降は新型コロナやロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、一部の先物市場で1バレル当たり140ドルに迫る高値を付けている。

 原油高騰による影響は、電気料金の値上げやガソリン価格の上昇だけにとどまらない。製造コストや輸送コストの上昇は製品の価格に転嫁されるケースが多いため、消費者物価全体も上昇する。政府による経済対策が行われれば、国の財政にも大きな影響を与える。

 先の見えない原油高騰のただ中にある今、これまでの記事から原油高騰の背景や世界に与えている影響についてあらためて振り返ってみたい。

1リットル170円で止まるか ガソリン補助金について知りたい10のこと

 原油高騰がもたらす影響の一つがガソリン価格の上昇だ。22年2月時点でガソリン小売価格の全国平均は「13年4カ月ぶり」の170円台となり、政府も補助金の支給に乗り出した。とはいえ「原油価格が上がった分、仕入れ価格も上がった」と話すガソリンスタンドがある一方、卸売価格が下がっても、小売価格は個々のガソリンスタンドが決める仕組みのため、補助金効果が実際に感じられるかどうかについては疑問の声もある。

止まらない原油高、OPEC内「100ドル突破も」の声

 21年から続く原油価格の高騰。石油輸出国機構(OPEC)の関係者によると、22年に入っても原油価格は向こう数カ月上昇を続ける可能性があるという。主な原因は新型コロナによって落ち込んだ需要が世界的に回復傾向にあることと、対して多くの産油国に「増産余力がない」ことが挙げられている。

原油価格高騰の陰にAIあり

 原油高騰の別の理由として挙げられるのが「先物取引の自動化」による弊害だ。近年、先物取引ではAIツールの活用が急速に進んでいるという。6年前の調査ではエネルギー先物取引の65%が自動化された入力で行われていたのに対し、3年前の19年になるとその割合は80%にまで上昇。現在はさらに多くの取引が自動化されていると考えられている。

ウクライナ危機発「第3次オイルショック」今後のシナリオは?

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、原油価格がさらに高騰しつつある。一大産油国であるロシアが戦争の当事者となり、各国の経済制裁により原油の供給が行われなくなることへの警戒感(供給への不安)が原因だという。

日本の電気料金3兆~5兆円増も ウクライナ危機でエネルギー高騰

 ウクライナ危機が加速させた原油高騰は、日本にも大きな影響を与えている。専門家からは22年度の日本の電気料金負担が前年度比3兆~5兆円増えるとの声もあり、企業や一般家庭の負担増加への不安や警戒感が広まっている。

ロシア制裁で欧州エネルギー危機、フランス大統領選でも主要争点に

 ロシアによるウクライナ侵攻と、それに伴うエネルギー危機がフランス大統領選挙の争点になっている。かねてロシアのプーチン大統領を称賛してきたにもかかわらず、エネルギー料金の税率引き下げを公約に掲げるルペン候補が一定の支持を維持しているのもその表れだという。

アウディ技術トップに聞く ウクライナ戦争でEVシフトどうなる?

 原油高騰で経済的なダメージを受けているのは欧州も同じだ。だがEVへのシフトを進める自動車業界では、ガソリン価格の上昇はEVの販売には一定の追い風になるという見方もある。独フォルクスワーゲングループでアウディ技術開発担当の取締役を務めるオリバー・ホフマン氏も「ウクライナでの戦争は、EVシフトを加速させる可能性がある」とし、グループ全体としてエンジン車からEVへのシフトを「この10年で終える予定」だという。

最後に

 新型コロナからの需要回復、ロシアによるウクライナ侵攻など、いくつもの要因が重なる現在の原油高騰。ロシア以外の産油国にも増産の余裕はなく、原油高がいつまで続くか現時点で見通すことはできない。日本でも市民の日常生活や企業の経済活動に深刻な影響が出ると予想されており、事態の今後の行方は予断を許さない。

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