赤字隠しなどを目的に不正会計を行い、虚偽の財務諸表を作成する粉飾決算。オリンパスや東芝など大企業の事例が有名だが、企業の大小にかかわらず粉飾決算は行われている。ここでは粉飾決算の動機となる要因に加え、粉飾決算の事例やコロナ禍による影響について、過去記事から振り返る。

「粉飾決算」の誘惑と危険

 粉飾決算とは、虚偽の財務諸表によって不正な会計報告を行うことだ。主に取引の信用を損なわないために「見せかけの黒字」を装うのが目的だが、ひとたび粉飾決済が行われると、帳尻を合わせるためにその後も長期間にわたり不正会計を行うことになってしまう。

 近年話題を集めた粉飾決算としては、10年以上にわたり損失を隠し続けたオリンパス、5年にわたり計1500億円以上の利益を水増ししていた東芝の例が挙げられる。いずれのケースも、経営陣の辞任に加えて上場廃止の瀬戸際に追い込まれる結果となった。

 もちろん粉飾決算を行うのは大企業ばかりではない。中小企業でもひそかに粉飾決算を続けているケースは少なくない上、コロナ禍による経済危機がその傾向に拍車をかけると見られている。この記事では粉飾決算の要因や実態、今後の見通しについて触れた過去記事を紹介していく。

今、企業を粉飾に走らせる3つの要因

 粉飾決算は企業にとって一時しのぎにすぎず、リスクの大きい行為だ。それでも粉飾決算を行う企業が後を絶たない背景には、3つの要因があるという。

 3つの要因とは、強引な手法で社員に圧をかける一方で監査人との対話には消極的な「経営者の劣化」、リーマン・ショック後から増加する一方の「上場ブーム」、そして歴史を持つ企業に多い「環境の変化に対応できない」というものだ。

専門家が警鐘、もう財務諸表は信用できない

 粉飾決算の手口をめぐり、「財務諸表で分かることは限られる」と語るのは青山学院大学大学院教授の町田祥弘氏だ。現在の会計システムには、会社側が都合よく利益を計上する余地があると指摘する。それが粉飾決算を見逃してしまう原因ともなっている。

 粉飾決算を防ぐには証券取引所、公認会計士協会、監査法人などが強い姿勢を示すことと、内部統制報告書を監査人がしっかりチェックすることが必要だという。

粉飾したほうが「得」に? 久保利弁護士が嘆く不正の真因

 企業法務に詳しい弁護士の久保利英明氏は、日本で不正会計が絶えない理由について「基本的にバレないから」と指摘する。古い体質の日本企業ほど「有価証券報告書の虚偽記載を軽く考えすぎ」で、周囲がやっているのに自分たちだけ(不正会計を)やらないのは損、という意識があるという。

 こうした不正を無くすため、国には「人間の弱さを見つめて、正しい行動を取るように縛る」という性悪説に立った制度設計が、それぞれの企業には「CEOをきちんとする」ことが求められている。

外部の目は節穴か

 近年大きな注目を浴びた粉飾決算のひとつが、2012年のオリンパス事件だ。同社は1998年から10年以上にわたり粉飾決算を繰り返し、損失は1200億円に上った。この事件では菊川剛前会長兼社長、山田秀雄前常勤監査役、森久志前副社長、損失隠しを指南したアクシーズ証券の中川昭夫取締役とグローバル・カンパニーの横尾宣政氏社長が警視庁に逮捕された。

 巧妙な手法で粉飾を行っていたオリンパスだが、その責任の一端は監査法人にある。見逃しや「見えないふり」といった姿勢が、結果として長年の粉飾決算を許していたためだ。同じように、かつては企業に強い影響力を持っていた主力銀行の立場も、上場企業という「顧客」の減少とともに弱体化しているという。

東芝“解体”の現実味

 国内だけでなく米国でも大きな注目を集めたのが、2015年に発覚した東芝の不正会計だ。5年以上にわたり1500億円超の利益を水増ししていた事件は、歴代3社長の辞任という結果を招き、東証で「特設注意市場銘柄」に指定された。この事件により、東芝のイメージは大きく低下することとなった。

中小企業の“粉飾予備軍”が増加、地銀の頭取たちが鳴らす警鐘

 中小企業の間でも、粉飾決算に手を染めるケースは少なくない。地域金融機関のトップたちからは「融資先の決算の粉飾などいろいろな瑕疵(かし)があった」「いい調子に見える会社が実は粉飾で倒産している」といった声が聞かれる。

 東京商工リサーチの調査によると、2019年の粉飾決算関連の倒産は11月までで18件に達し、前年同期の2.2倍、年間では2年ぶりに20件を上回るペースになっていた。

コロナ禍がまく会計不正の種。20年3月期は1.5倍に

 こうした傾向はその後も続いた。日本公認会計士協会の調査によると20年3月期に会計不正を公表した企業は46社で、これは前年同期の1.5倍に相当する。しかも、この数字は新型コロナが拡大する前のものだ。

 新型コロナによる経営悪化や働き方の変化は、企業の内部監査や外部の不正チェックの体制にも影響を与えると見られ、今後の粉飾決算の増加が懸念されている。

最後に

 財務諸表を操作し、利益が出ていると偽装する粉飾決算。一時しのぎにすぎない上、大きなリスクを抱えるにもかかわらず、不正に手を染める企業や経営者は後を絶たない。粉飾決算の防止には企業側の姿勢はもちろん、監査法人や銀行など外部の目も必要だ。コロナ禍で多くの企業が業績悪化に苦しむ中、粉飾決算を見抜く目がかつてないほど必要とされている。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。