企業や経営者の不祥事を社員が告発する「内部告発」。内部告発は不正を行う企業に大きなダメージを与えるが、不正をただし、新たな不正を抑止するという点で貴重な要素だ。ここでは内部告発がきっかけとなったニュースや、内部告発に関する議論を取り上げた過去記事を紹介していく。

「内部告発」の役目と課題

 内部告発とは、一般に企業の社員が「自社の違法行為など」を告発することをいう。告発先は労働基準監督署などの公的機関やマスコミ、市民団体などであることが多いが、企業によっては内部に内部告発を受け付ける窓口や手続きを設けていることもある。

 世間に公表される企業の不祥事の中には、内部告発によって発覚したものも多い。その中には「東芝」や「日産(カルロス・ゴーン)」のような大企業も含まれている。内部告発者の存在は不正を行う企業や経営者にとって脅威となり、不正に対する抑止力にもなりうる。

 一方で内部告発者は企業内で冷遇されたり懲罰対象となることが多く、告発の内容によっては(内部告発者自身も不正に関与していた場合など)国による刑罰の対象となる可能性もゼロではない。こうした事情は内部告発者を萎縮させてしまうため、日本では近年「司法取引」の制度が導入されることになった。

 今回の記事では、過去に掲載された内部告発をめぐる話題の中から主なものをピックアップして振り返る。

800人の証言で掘り起こす東芝の“闇”

 近年の日本経済界を揺るがした大事件のひとつが、2015年に発覚した「東芝の不正会計問題」だ。問題発覚のきっかけとなったのは社員による内部告発だが、日経ビジネス電子版によるその後のアンケート調査でも経営陣の不正行為を告発する800人以上の声が集まり、その後のスクープへとつながった。

起こるべくして起こったヤマト過大請求

 ヤマトホールディングス(HD)も内部告発に揺れている。2018年7月、ヤマトHD傘下のヤマトホームコンビニエンスが引っ越し代金を過大請求していたとして、第三者委員会による調査を受けたのだ。調査ではヤマトホームコンビニエンスとヤマトHDの経営体質の問題が指摘され、世間からも両社に対し厳しいコメントが寄せられている。

「限界現場」で働き方改革の不安

 油圧機器メーカーのKYBが基準を満たさない免震装置を出荷し、それが987件もの公共施設やマンションなどに使われていた問題。発覚のきっかけとなったのは、やはり内部告発だ。同社では70件の公共施設については施設名を公表したものの、全体の大部分を占めるマンションや住宅については情報を未公開としており、市民の間に波紋を広げている。

実現しなかったエドワード・スノーデン氏の恩赦

 内部告発をめぐり世界的な話題となったのが、米国家安全保障局(NSA)の元職員、エドワード・スノーデン氏だ。スノーデン氏はNSAによる国民のプライバシー侵害をNSA局員として内部告発したが、それにより犯罪者として国家から追われることとなった。

 現在は逃亡先のロシアに滞在するスノーデン氏。恩赦を嘆願する署名は1100万件に達しているが、政府による恩赦は与えられていないままだ。

相次ぐ法令順守違反、未然に防ぐ3つの要件

 企業が法令順守違反をする背景には「経営トップと経営陣の法令順守に対するアンテナ感度の低さ」「問題が生じたときに不正を表面化できない空気」「法制度の悪用を許す国側の甘さ」があるという。

 こうした問題を解決するためには、さまざまな取り組みが必要だ。具体的には、企業内部での順法教育や国による監視体制の強化、そして「内部告発制度をつくること」が挙げられるという。

司法取引で会社が社員を「売る」時代に

 内部告発を促進する制度として「司法取引」の活用が始まった。第1号となったのは、大手発電機メーカー、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の贈賄事件だ。告発したのはMHPS自身で、法人としての起訴を免除される代わりに、元役員ら3人に対する捜査に協力したという。

 司法取引はもともと「社員が会社を内部告発する」ことを念頭に置いた制度だが、今回は「会社が社員を売る」ために利用された格好だ。

「司法取引」応じるべきか?ゴーン事件で高まる関心

 司法取引による内部告発が大きな話題を集めたカルロス・ゴーン氏とグレッグ・ケリー氏の逮捕。両氏が逮捕されるきっかけとなったのは、「報酬虚偽記載に関わった2人の日産社員」による告発だ。

 2018年6月に導入された司法取引制度では、共犯者など事件解明に役立つ情報を提供すれば、その見返りとして情報提供者は不起訴となる(もしくは求刑が軽くされる)。ゴーン氏の逮捕をめぐる司法取引は「司法取引で想定された使われ方に近い案件」だという。

最後に

 企業や経営者の不祥事を社員が暴露する内部告発。不正を行う企業にとっては脅威だが、社会のルールが守られるためには欠かせない存在だ。国は内部告発を生かすために「司法取引」制度を活用しているが、企業自身にも内部告発を受け入れる制度が求められているという。大手企業を中心に、これからの取り組みに注目していきたい。

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