日本の大手製薬会社、中外製薬は1943年に設立された老舗企業。しかし、同社の特徴はその長い歴史からは想像がつかないようなチャレンジ精神だ。創業以来、さまざまな領域に進出し、現在は海外での収益も上げている中外製薬の、ここ数年の好調ぶりを過去のニュースを参考に紹介する。

中外製薬の概要、沿革

 中外製薬株式会社は、日本の大手医薬品メーカー。設立は1943年で、現在はスイスの大手医薬品メーカー、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(Fritz Hoffmann-La Roche)との「戦略的アライアンス」に基づき同グループ傘下に所属している。抗体・バイオといった領域で先行しているほか、抗がん剤、骨・関節領域に強みを持っており、昨今、業績が好調であることも話題になっている。

中外製薬、大型薬誕生の舞台裏

 そんな中外製薬は2019年当時、海外で売上高を順調に伸ばしていた。実際、当時の社長兼CEOである小坂達朗氏(現在は代表取締役会長兼CEO)も、かなりの手応えを感じていたのが、2017年11月に承認を受けた米国を皮切りに、欧州、日本などでも続々と市場投入した血友病治療薬「ヘムライブラ」。2019年1~6月期の世界での売上高は5億ドル(約540億円)を突破、年間売上高が1000億円規模の大型薬「ブロックバスター」となることは確実とされていた。

 ヘムライブラが売れたのは、これまでの血友病治療薬にはない特徴を備えていたからだという。その一つは患者にとって負担の軽い皮下注射が可能なこと。しかも、効き目は長く続き、週1回の投与で済む。従来は週3回程度、静脈内に投与する必要があり、在宅で患者が自分で注射するのが簡単ではなかった。

中外製薬が明かす巨大外資傘下で生きる術

 弊誌では2019年、こうした中外製薬の飛躍を受け、小坂氏に取材を行っている。同氏は、中外製薬の当時の飛躍について、失敗を恐れずに自律的にチャレンジするという、組織風土が脈々と受け継がれていることが要因の一つだ、と述べている。歴史を遡ると、確かに同社がもともと扱っていたのは、大衆薬が中心。しかし、1961年に国民皆保険制度が始まったのを機に、医療用医薬品を扱う研究開発型企業に転換を果たした。さらに、バイオテクノロジーの将来が不確かだった80年代に、バイオ医薬に取り組むことを決めている。こうしたチャレンジ精神が、同社が飛躍した理由といえそうだ。

中外製薬、2020年度は国内が減収もグローバル品目で挽回

 実際、中外製薬の連結業績も好調だ。2019年12月期は売上高、コア営業利益共に3期連続での過去最高を更新。2017年11月に米国で初めて承認された血友病治療薬のヘムライブラの売り上げ拡大が寄与した。2020年12月期は薬価改定や後発品発売の影響で国内は減収となる見通しだが、それでも海外で売り上げを伸ばし、トータルでは4年連続の増収増益を見込む。また、好業績が続く見通しとなったことから、2019年1月31日に発表した19年度から21年度までの中期経営計画で数値目標に挙げていた年平均のコアEPS(1株当たり利益)成長率を、これまでの「High single digit(一桁台後半)」から「30%前後」へと大きく引き上げた。

重症コロナ肺炎に効果期待のアクテムラ、中外製薬の業績押し上げも

 さらに、2020年1-3月期における中外製薬の業績も好調であった。売上収益は前年同期比16.3%増の1794億円、営業利益は同54.7%増の741億円、四半期利益も同45.2%増の527億円。懸念されていた新型コロナウイルス感染症の影響も、当時の段階では大きくなかった。むしろ、関節リウマチ治療薬の「アクテムラ」が、重症の新型コロナウイルスによる肺炎への効果が期待されたことから、業績への上乗せも予想されていた。

 なお、好業績のけん引役は、血友病治療薬の「ヘムライブラ」だ。国内売上高は前年同期より192.6%増の79億円、親会社であるスイス・ロシュへの輸出分も含めて海外売上高は1128.6%増の86億円。これ以外に、ロイヤルティーおよびプロフィットシェアが前年同期比92.7%増の264億円。この増加分の大半はヘムライブラのものと見られ、この金額は営業利益に直結する。

奥田修・中外製薬社長「連続してイノベーションを起こす組織に」

 このように、革新的な医薬品を創出し、ロシュの販売網を使って世界中に販売するというビジネスモデルが成功し、今や株式時価総額では日本の製薬会社でトップクラスとなった中外製薬。ロシュとの提携を決断した創業一族の永山治氏が会長を退くタイミングで、提携時に経営企画部長として契約をとりまとめた小坂達朗氏が後継に選んだのが、提携下で頭角を現した奥田修氏だった。弊誌はその奥田氏に、初心表明をインタビューしている。

新薬量産期に入った中外製薬、新技術「改変抗体」も実用化

 中外製薬の快進撃は、その後も止まらない。2020年7月27日に発表した同年12月期上期の業績によると、売上収益は前年同期比14.9%増の3681億円、営業利益は同38.8%増の1437億円と、コロナ禍にもかかわらず大幅な増収増益を達成した。いずれも上期の成績としては過去最高だった。なお、国内売上高は主力製品の薬価の引き下げや、特許切れの影響から前年同期比2.6%減の2046億円となったが、海外売上高が39.5%増の1010億円となった。スイスのロシュなどが中外製品を販売することに伴うロイヤルティーおよびプロフィットシェア収入が77.2%増えて535億円となった。

中外製薬「抗体エンジニアリング技術」の破壊力

最後に

 ここまで、中外製薬の概要や沿革、そして直近の好調ぶりについて、過去のニュースを参考に紹介してきた。同社は抗体・バイオといった領域をはじめ、常に新しい分野へ積極的に挑戦してきた。その結果、現在は海外市場でもそのプレゼンスを高めており、収益も上げている。今後も、中外製薬がどのように成長していくか、その動向から目が離せない。

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