複数の国に拠点を持ち、幅広いビジネス活動を手がける多国籍企業。一方でタックスヘイブンを利用した租税回避や、デジタルサービスを逆手に取った巨大IT企業による租税回避などの題点も指摘されている。ここでは日本と世界の多国籍企業が抱える課題を中心に、過去記事を紹介する。

「多国籍企業」が持つメリットと課題

 多国籍企業とは複数の国に拠点を置き、グローバルな取引を行う大規模企業のことをいう。日本企業でもトヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー各社、日立製作所や東芝に代表される電機メーカー、製鉄会社、化学メーカー、薬品会社などさまざまな業種からグローバル企業が誕生している。

 多国籍企業には、マーケットの大きさや原料調達ルートの確保といった面で大きなメリットがある。一方で、地元の産業やローカルな中小企業の発展を阻害したり、人件費や原材料費の安い地域に生産拠点を移動させて母国の産業空洞化につながったりするという指摘もある。

 加えて、近年特に問題視されているのが巨大IT企業による租税回避だ。すでに欧米などでは対立が深まりつつあり、各国の動きが注目を集めている。今回は多国籍企業を巡る、日本と世界の課題について過去記事から振り返っていく。

企業と個別契約で税金を減免 タックスヘイブンの新事実

 多国籍企業の問題点として、しばしば指摘される「タックスヘイブン」。多国籍企業の中心拠点を自国内に置くことと引き換えに、法人税を軽減もしくは免除する国や地域のことだ。具体的にはケイマン諸島をはじめとするカリブ海諸国、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、スイスなどが挙げられる。

 近年ではこれらのタックスヘイブンが多国籍企業との間で「テーラーメード」の個別契約を結んでいたことも明らかになり、このような「企業との不透明な合意」が批判を集めている。

海外企業に比べ多額の税を払う日本企業のなぜ?

 欧米の多国籍企業がタックスヘイブンを活用した「タックスプランニング(国際的な節税)」に力を入れる一方で、日本の多国籍企業は相対的に高い税金を払い続けている。

 その背景にあるのは1980年代に米国で日本企業が経験したジャパンバッシングと、国際税法に対する消極的な態度だ。結果として日本企業は世界中で高額な税金を払っているばかりか追徴課税を受けることも多く、しかも裁判で徹底的に戦うこともあまりないとされる。

ルールづくりが「国際競争のルール」

 日本の多国籍企業が抱えるもう一つの課題が「国際ルールづくりに関わることができない」というものだ。欧米ではルール形成戦略に積極的な多国籍企業が多い中、日本では「ルールが作られてから守ればいい」というスタンスが多いという。

 その結果として、自国にとって不利な規制や制度を受け入れざるを得なくなりがちだ。ルールは守るものではなく、つくるものという意識を持つことが、日本企業に求められている。

動くデジタル課税、日本企業に備えは

 巨大IT企業、特にGAFAなどを念頭に置いた「適正な課税」が国際的な課題となっている。すでにOECD(経済協力開発機構)やG20(20カ国・地域)では数年にわたる議論が行われており、日本でも2020年度の税制改正大綱の中で同様の内容が言及されている。

 各国が懸念しているのは、「国内に拠点がないために課税できない」ことだ。巨大IT企業の主要サービスは国境をまたぐEC(電子商取引)などで、拠点を持たない国でも利益を上げることができる。これに対しフランスでは2019年から、イタリアでも2020年から独自のデジタル課税を導入し、これに反発する米国との間で国際紛争に発展しつつある。

国際税制改革、果たしてその実現性は?

 2021年に誕生した米国のバイデン政権が「世界共通の最低税率の導入」を提唱している。巨大IT企業を念頭に置いた新しい国際ルール作りを通して、国際協調路線に回帰する狙いだ。

 こうした米国の動きに多くの国は歓迎の姿勢を示すとみられているが、タックスヘイブンの反発も大きく、実現にはさまざまな困難が予想されている。

最後に

 複数の国に拠点を置く多国籍企業には、タックスヘイブンを利用した租税回避などの問題が指摘されている。特に、拠点を持たない国でも大きな利益を上げている巨大IT企業の問題は深刻だ。GAFAなどを巡っては、すでに欧米を中心に国際ルール作りの必要性が議論されている。こうした動きは日本企業にも影響するだけに、今後も注目していく必要があるだろう。

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