法律上の婚姻手続きをしないまま、夫婦として暮らす「事実婚」。相続や子供との関係など法律上は不利な扱いを受けることも多いが、一方で事実婚が今日の社会課題を解決する一助になると期待する人たちもいる。ここでは過去に掲載された記事の中から、事実婚に関する話題を紹介していく。

「事実婚」と法律婚の違い

 婚姻届は提出していないものの、婚姻する意思と実態がある状態を「事実婚」という。見た目上は通常の婚姻(法律婚)と何ら変わらないことも多いが、実際には以下の点で法律婚と異なっている。

  • 戸籍に夫婦関係が記載されない
  • 夫婦のどちらかが死亡しても、もう一方は相続人とならない
  • 夫婦の間に生まれた子供は「非嫡出子」とされ、父子関係が自動的には発生しない→法律上の父子関係となるには認知が必要
  • 夫婦の一方から遺言書による遺贈や生前贈与を受ける際、相続税・贈与税の各種特例や控除を受けられない

 法律面で不利に扱われることが多いものの、事実婚には実質的な婚姻の実態が認められることから、同居の義務や扶養の義務、生活費の分担義務、婚姻関係解消時の財産分与義務は発生すると考えられる。加えて、健康保険の被扶養者や遺族年金の支給対象になることも可能だ。

 近年、事実婚はさまざまな理由から注目を集めている。中には、事実婚が社会問題を解決するカギになるという意見もある。この記事では事実婚にまつわる過去記事の中から、社会の現状と注意点について振り返ってみる。

寄り添えば 新市場が広がる

 事実婚は男女間だけのものとは限らない。最近ではLGBT(性的少数者)のカップルを事実婚と認める企業も増えているという。

 たとえば日本マイクロソフトは、結婚祝い金や慶弔休暇などの福利厚生制度の基準となる配偶者関連の就業規則で、パートナーについて「事実婚または同性婚において配偶者に準ずるもの」と定義。また病児・病後児保育の認定NPO法人フローレンスでも、慶弔休暇を取得できる「結婚」の定義に「事実婚」を追加している。

同性カップルも里親の選択肢に

 自治体の中にも事実婚を積極的に認める動きが出ている。例えば2016年には、大阪市が実の親の元で暮らせない子どもを預かる里親として「男性同士のカップル」を認定した。市では「里親は男女の夫婦でなければならないという決まりはない」と説明するが、社会的な意義の大きい里親制度で事実婚が認められたことは、今後の「家族のあり方」を考えるきっかけとなる可能性もある。

シニア婚活で老後の孤立解消

 近年話題のシニア婚活も、事実婚と関係が深い。一人暮らしの高齢者が急増する現代、シニア層がパートナーを探すシニア婚活は高齢化問題解決の一助になると考えられている。

 しかしシニア同士が結婚することになると、新たなパートナーの子供との人間関係や相続の問題、パートナーの親(義理の親)の介護問題などは避けて通れない。こうしたトラブルを未然に防ぐには、入籍しない「事実婚」も重要な選択肢のひとつになるという。

「結婚市場の自由化」で少子化対策。離婚コスト低減で婚活後押し

 経済学の分野から事実婚の可能性を指摘するのは、東京大学経済学部の植田健一准教授だ(当時。現在は教授)。植田氏は、「雇用関係より複雑な結婚という契約」が結婚のハードルを高くし、結果として少子化にも影響している可能性を指摘する。

 夫婦別姓への障害、事実婚の社会的な地位の低さといった「結婚に対するハードル」を下げることが、少子高齢化やそれに伴う日本の経済問題を改善するというのが植田氏の考えだ。

社長の死後、経営権を巡り正妻と愛人が衝突

 もっとも、事実婚には注意点もある。それが「パートナーとの死別後」の問題だ。ある会社経営者には、20年以上別居している本妻と、長年共に暮らしてきた内縁の妻がいたという。やがてその経営者は亡くなったが、そこで発生したのが相続を巡る争いだ。

 相続や認知の面で法律婚より不利に扱われる事実婚では、適切な遺言を遺しておかない限り、訴訟トラブルなどのリスクを排除できないという。

最後に

 法律上の婚姻手続きを行わない事実婚。子供が父親の嫡出子とならなかったり、法定相続分が発生しなかったりなど不利に扱われることも多いが、事実婚を選択するカップルは決して珍しくないという。事実婚は、少子高齢化に伴うさまざまな問題の解消に貢献すると期待されている。事実婚をとりまく国や社会の動きに、引き続き注目していきたい。

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