二酸化炭素(CO2)の吸収量が排出量を上回る状態を指す、カーボンネガティブ。カーボンニュートラルよりもより積極的な脱炭素の取り組みとして、環境問題に敏感な国内外の企業から注目を集めている。今回は国内外の企業の動きからカーボンネガティブの具体事例を紹介していく。

CO2の吸収が排出を上回る「カーボンネガティブ」

 カーボンネガティブとは、大気中に放出される二酸化炭素(CO2)の量よりも大気から吸収するCO2の量の方が多い状態を指す。世界的な温暖化対策への取り組みの一環として、世界中の企業から注目されている。ちなみにカーボンニュートラルは放出するCO2と吸収するCO2の差を「実質ゼロ」にするというものだ。

 カーボンネガティブの具体的な手法として挙げられるのは「植林」や「グリーンエネルギーの生産」など。カーボンニュートラルが「金銭の支払い」によってCO2排出量をオフセット(相殺)するのに対し、より積極的な行動といえる。

 カーボンネガティブに取り組む企業として有名なのは米マイクロソフトだ。また最近では国内の企業もカーボンネガティブに取り組んでいる。

国に先行、広がる「社内炭素税」設備投資にアメとムチ

 マイクロソフトはこれまでも「算定されたCO2排出量に応じて社内から資金を徴収し、再生可能エネルギーの購入に充てる」というカーボンニュートラルに取り組んできた。今後は2030年までにカーボンネガティブを達成し、さらに50年までに「1975年の創業時からのCO2排出量を取り除く」という目標を立てている。

花王の脱炭素超え、目指すは「カーボンネガティブ」

 19年からESG(環境・社会・企業統治)経営に取り組む花王も、カーボンネガティブに向けて動き始めている。現時点では「CO2の排出に価格をつける社内炭素価格制度」と「再生可能エネルギーの利用拡大」によって「30年までに自社のCO2排出量を17年比55%削減」することを目標とするが、今後はCO2を製品の原料にする「カーボンリサイクル」の技術開発を進め、カーボンネガティブの達成を目指していく。

東京五輪のCO2相殺、史上初でも知られていない理由

 21年に開催された東京オリンピック・パラリンピックでも、実はカーボンネガティブが達成されていたという。具体的には東京都と埼玉県が独自に設定する排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)によって都内153事業者、埼玉県内64事業者からCO2の削減クレジットを回収し、それによって施設建設や運営、観客の移動などで生じたCO2排出量をすべて相殺した。また開催都市周辺の地元企業もCO2の排出削減に協力し、その総量だけでも「大会で生じるCO2を全量相殺できる以上のクレジットを確保した」という。

 

ビルが建つほどCO2が減る?大成建設の「白いコンクリート」

 大成建設が開発した「白いコンクリート」。その正体は、CO2を回収して製造した炭酸カルシウムを構成材とし、コンクリート内部に大量のCO2を固定する「カーボンリサイクル・コンクリート」だ。カーボンリサイクル・コンクリートの製造には1立方メートル当たり69kgのCO2が発生するというが、同時に119kgのCO2をコンクリートに固定できるため、差し引きで1立方メートル当たり50kgのCO2削減になるという。

 

経団連会長「崖っぷちの資本主義を救え」

 21年6月、経団連会長に就任した十倉雅和氏。「経済界と社会を切り離してはいけない」と語り、前会長がやり残した「グリーントランスフォーメーション(カーボンニュートラルに移行するための経済社会システム全体の変革)」に取り組んでいくという。そのために必要、と同氏が指摘するのが「カーボンネガティブの技術」だ。

 

日本復活のキーマンたち…任せろ起死回生、新技術で世界へ

 ユーグレナ社長の出雲充氏もカーボンネガティブに積極的な経営者の一人だ。いち早く「ミドリムシの食用化」に成功した出雲氏は、ミドリムシを原料とした「バイオジェット・ディーゼル燃料」の開発にも力を入れる。すでに実際の飛行機を使った飛行実験に成功しており、今後は生産規模の拡大とコストの大幅な引き下げに挑むという。

 出雲氏とユーグレナの目標は、ミドリムシ由来のエネルギーにより「石炭火力自体を全廃」するとともに、カーボンネガティブの技術をアジアで普及させることだ。

 

最後に

 CO2の排出量を吸収量が上回るカーボンネガティブ。カーボンニュートラルのさらに先を行く積極的な脱炭素の取り組みで、マイクロソフトをはじめ国内外のさまざまな企業が目標としている。カーボンネガティブは技術的にも困難な挑戦だが、すでに「コンクリート」や「ジェット燃料」などの分野で実験的な取り組みが進む。こうした技術の実用化を期待したい。

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