国際間の決済ネットワークを提供するSWIFT(スウィフト:国債銀行間通信協会)。特に高額取引においては欠かせない存在となっているが、そのSWIFTがウクライナ危機をめぐるロシアへの経済制裁手段として利用されている。今回は過去記事の中から、経済制裁としてのSWIFTからの排除がロシアと国際社会に与える影響について振り返る。

国際銀行間の決済取引を仲介する「SWIFT」

 SWIFTとは、世界各国の銀行・金融機関を結ぶ決済ネットワークシステムの運営団体だ。またこの団体が提供するネットワーク自体もSWIFTと呼ばれている。SWIFTの役割は銀行同士の金融取引の仲介と実行を安全に行うことで、特に高額決済においては、世界中で行われている取引の多くがSWIFTを介して行われているという。

 SWIFTへの参加は現代の国際貿易においてほぼ必須といえるが、それを逆手にとったのが「ウクライナ侵攻を続けるロシアへの経済制裁」としてのSWIFTからの排除だ。天然ガスなどの輸出によって外貨を獲得しているロシアにとって、SWIFTのネットワークを利用できないことは大きなダメージになると考えられている。

 一方でSWIFTからのロシア排除はロシアからのエネルギー資源に頼っている国、特にヨーロッパ諸国の産業・経済・市民生活にもダメージを与えるため、経済制裁に対し慎重な声も少なくない。

 この記事ではロシアへの経済制裁を中心に、SWIFTに関する過去記事を紹介していく。

ロシア制裁の「最終兵器」SWIFTについて知りたい10のこと

 1973年に設立されたSWIFT。現在は約200の国と地域から約1万1千以上の金融機関が参加しており、そのうちロシアの銀行・金融機関は約300にのぼるという。

 すでにウクライナ侵攻に対する経済制裁としてロシアはSWIFTから排除されているが、これによるダメージとしては、「ロシア企業による輸出入や国をまたいだ投資・借り入れがしにくくなる」「石油や天然ガスの輸出による収入が途絶える」「ロシアの通貨・ルーブルの信認が低下し通貨安となる」などが考えられるという。

前例なきロシアへの金融制裁、ドル覇権の「劇薬」に

 ロシア経済にダメージを与えることを目的としたSWIFTからの遮断。欧米は過去にもイランや北朝鮮に対して同様の経済制裁を行ってきたが、それらの制裁が一定の効果を上げた背景には、「世界の基軸通貨」として国際決済での利用の4割を占める「ドル」の存在が大きいという。

 しかし軍事大国であり世界のエネルギーや穀物供給に大きな影響を与えるロシアに、ドルの力がどれほど及ぶかは未知数だ。むしろこの経済制裁が、「ドル中心の金融システムを揺るがす」劇薬となるのではないかという指摘もある。

新秩序に備える世界、容易でない「ロシア切り離し」

 ロシアへの経済制裁は各国の企業にも大きな影響を与えている。たとえばフランスの自動車大手ルノーにとって、ロシアは母国フランスに次ぐ第二の主要市場だ。そもそもヨーロッパ全体がロシアからのエネルギー資源に依存している。

 一方、経済制裁に参加しない中国ではロシアとの結びつきがますます強まっている。「ロシアで中国製スマートフォンの販売が急増した」といわれるほか、SWIFTに代わり中国の人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)による両国間の決済が加速するとみられている。

プーチンの「ルーブル決済」指令で「ドイツ基幹産業が消滅の危機」

 SWIFTから切り離されたロシアで、プーチン大統領が「非友好国が支払う天然ガス代金はルーブルに限る」と発表した。これまでヨーロッパ向けのエネルギー資源はユーロとドルで決済されてきたが、ロシアの金融機関との取引が禁止されているドイツなどの国において、決済用のルーブルの入手は困難だ。

「ロシアリスク」に身構える地銀、取引先に業績悪化の兆し

 ロシアのSWIFTからの排除は日本国内にも影響を与えている。ロシアとの取引が多い北海道、東北、北信越、中部などでは、中小企業の経営が急速に悪化したことから地元金融機関でのデフォルト(債務不履行)が増え始めたという。

日本の中小企業を襲う「ウクライナ危機」の不安要素

 ロシアと直接取引のない企業にとっても影響は深刻だ。ロシア産の天然ガスが供給されなくなれば、「原油高騰による値上げ」も現実味を増してくる。プラスチック資材なども高騰するほか、在庫が底をついて納期の予定も立たなくなるという。

最後に

 ロシアへの経済制裁として実行されたSWIFTからの排除。エネルギーや穀物の輸出に頼るロシアにとって大きなダメージになると考えられているが、制裁する側である欧米諸国や日本にとってもダメージの大きいもろ刃の剣だ。ウクライナ危機全体の推移はもちろん、経済制裁の行方についても引き続き目が離せない。

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