統計などの客観的なデータに基づき、各種政策を立案・実行するEBPM。先進的な取り組みが進む欧米はもちろん、日本政府や国内の自治体でも注目を集める新たな手法だ。この記事ではこれまでに掲載した記事の中から、EBPMに関連するものをピックアップしていく。

客観的なデータを政策に生かす「EBPM」

 EBPMとは、統計データなど客観的な証拠に基づいた政策決定・実行のこと。その目的は、社会の変化やニーズを的確に捉えることで(普段は見えにくい)政策の効果を「可視化」することにあるとされる。

 もちろんこれまでも、各種政策の決定・実行にあたって専門家の意見や世論調査などが参考にされることはあった。しかしこうした方法では収集できる意見が偏り、社会や民意の実情をきめ細かく反映できないとの声もある。また政策効果を検証する際も、実施した政策と結果との因果関係を証明するのが難しいケースが少なくないという。

 客観的なデータを活用するEBPMはこうした課題を解決するものとして期待を集めており、近年急速に発達したAI技術やビッグデータの活用技術もこれを後押ししている。すでに欧米や日本国内でもEBPMの実証実験が進められており、医療や教育、まちづくりといった分野で注目すべき成果が上がり始めている。

 今回は過去の記事から、EBPMへの期待や現状について振り返っていく。

消費増税、老後2000万円問題に潜む「グループシンク」の罠

 消費税の増税をめぐり、推進派と延期派との間で論争が繰り返されてきた日本。こうした議論の場では「私たちは正しいという楽観主義・過大評価」「異論を認めない、集団の外部の意見に耳を貸さない排他性」「悪い情報の三猿(見ざる、言わざる、聞かざる)傾向」といった傾向が見られることも多いが、記事の筆者は「データで議論をする」ことの重要性を強調する。

 データで議論する手法のひとつがEBPM(証拠に基づく政策立案)だ。すでに日本政府も「平成30年度内閣府本府EBPM取組方針」でEBPMに言及するなど、注目度も高いという。

東京大学がコンサルティング会社を立ち上げた理由

 東京大学が「東京大学エコノミックコンサルティング」を設立した(2020年当時)。これまでも同大学には東京大学政策評価研究教育センターという「経済学の社会実装」の研究機関が存在していたが、この事業部門を新たにコンサルティング会社として独立させた格好だ。

 新たに設置したコンサルティング会社では「新規性がないなどの理由で研究として成立しないものの、社会にとって役立つような分析」を行い、社会貢献やEBPMの支援を目指していくという。

豊かさを測る最適な指標はGDPか幸福度か

 EBPMにとって最も重要な要素はエビデンスだ。しかしこれに対しては「エビデンスを重視する場合、エビデンスを出せる富裕層に資源が集中してしまうのではないか」という疑問もある。

 エビデンスを偏らせないためには、政策を決定する政府にも、それを支える研究者にも「支援が必要な人たちのためにリソースを使ってエビデンスを蓄積する」という誇りと「現場に踏み込む」行動力が必要だ。

スマートシティー加速へ、データ連携基盤をデジタル庁が整備

 スマートシティーの実現に向けて、データ連携基盤システムの心臓部となる「コア・モジュール」の開発が進められている。デジタル庁が発注するこのシステム基盤は22年度以降、自治体や取引のデジタル化を目指す企業に無償で提供される予定だ。

 政府と自治体、関連する企業が共通の基盤に立ち、EBPMを推進することがスマートシティーの実現と、それによるさまざまなメリットの享受につながるという。

米ウーバーや温暖化ガス削減で実践、アイデアを「スケール」する経済学

 さまざまな実験を通し、経済学をビジネスの最前線で生かす取り組みを進めている米シカゴ大学のジョン・A・リスト教授。02年に大統領経済諮問委員会シニアエコノミストに就任し、ホワイトハウスの政策立案チームの一員としてEBPMを環境問題に生かしたことでも知られている。

 現在、同教授が提唱しているのはEBPMをさらに進めた「政策・環境に基づいたエビデンス(Policy-Based Evidence、PBE)」や「市場に基づいたエビデンス(Market-Based Evidence、MBE)」への発想の転換だ。

2020年、「データジャーナリズム元年」への期待と懸念

 政治の分野でEBPMが重視されるのと同じように、ジャーナリズムの分野でもエビデンスが重視されている。すでに海外では、データと報道を組み合わせた「データジャーナリズム」が定着し始め、新しい報道スタイルとして確立しつつあるという。

最後に

客観的なデータに基づく政策決定は、社会や人々のニーズを的確に反映し、その効果を可視化するというメリットがある。欧米はもちろん日本国内でも、産官学それぞれでEBPMやEBPMの支援する取り組みが始まっている。旧態依然とした政治手法がどのように変化し、世の中にどのような影響を与えていくのか、今後ますます注目していきたい。

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