昨今、飲食店従業員の過重労働や、育児・家事に関する議論で用いられることが多い「ワンオペ」という言葉。この言葉の意味とは何か、そしてワンオペを防ぐためには何が必要なのか、過去のニュースを参考に考察する。

「ワンオペ」とは?

 ワンオペとは、飲食店などで1人の従業員がすべての業務をカバーすることを意味する。昨今は、子育てに関する議論でも、妻の育児・家事負担を問題視する際に使われることが多い。女性の社会進出が進み、育児・家事の担い手が、必ずしも女性である必要はないという議論が盛んになったことが、背景にあるだろう。以下では、ワンオペに関する社会課題について書かれた過去のニュースを紹介していく。

元凶

 大手牛丼チェーン「すき家」の過重労働騒動は、ワンオペという言葉が広がるにきっかけになった。「どんなに作業量が多くて大変でも、売り上げが見込めない時間帯はワンオペにせざるを得ない」。すき家のある店舗で、店員のシフトを組む担当者は、2014年当時、弊誌の取材にこう明かしていた。例えば、1時間1万円の売り上げが見込める店舗には、2人の店員を配置できるという。だが1時間当たりの売り上げが5000円を見込めないと、仕込みや接客、精算、清掃などを1人でこなすワンオペを導入せざるを得なくなるというのだ。

 常態化したワンオペは招かざる客を引き寄せることもある。警察庁によると、2011年からの3年間に全国の牛丼チェーンで起きた強盗事件(未遂を含む)のうち、実に80%以上がすき家に押し入っている。吉野家や松屋など同業他社と比べて突出した件数だ。

 こうした労働環境は、現在大きく改善されているのだが、当時すき家におけるスタッフの労働状況は多くの波紋を呼んだ。

育休取得で気づいた「名もなき家事」の存在

 ワンオペは子育ての文脈でも使われており、その場合は、両親のどちらかで育児を行うことを指す。背景には、子育てのあり方に関する考え方が変化していることが挙げられる。「男は職場、女は家庭」といった、昭和的な考えが主流であった時代には、妻のワンオペは普通に行われていた。しかし、女性の社会進出が少しずつ進み、ワンオペが問題視されるようになったのだ。本記事で取材に応じてくれた、NPO法人クロスフィールズ代表理事の小沼大地氏は、第2子誕生の折に1カ月間の育児休業を取得。その体験から、子育ての大変さなど、様々なことを学んだという。

妻入院で突然の育児ワンオペ! 働き方が根底から変わった

 ピクスタ社長の古俣大介氏は、ワンオペを経験し、働き方が変わったという。当時、3人の子ども(9歳の長男、7歳の次男、1歳の長女)がいた。長女誕生の前には妻が妊娠高血圧症で入院し、1カ月ほど、2人の息子を1人で世話したという。これを機に、たいていの家事はこなせるようになった。

 また、そんな同氏が考える、忙しく働く男性が妻のワンオペを防ぐためにすべきことは、まず「できるだけ家にいるようにすること」。子育てが一番過密になる夜の時間帯には、何もなければ18時くらいには帰宅し、子どもたちを風呂に入れて、晩ご飯を一緒に食べ、宿題がまだできてなかったら付き添うという。21時くらいに子どもたちが寝静まったら、そこから自宅で仕事を再開。たまに会食に途中から合流することもあるという。

社員も子どもも、自分の人生を自力で歩む自主性を育てる

 古俣氏は、「親以外の大人」の存在も重要だと、息子が通うサッカーチームのコーチを例に挙げて説明する。「親以外の大人から自立を促してもらえるのはいいことだなと感じています」。古俣氏がこう述べるように、子育ては親のみで完結させようとすると、息苦しいものになってしまいかねない。家庭以外での関わり方を含め、周囲と協力しながら子を見守っていく。そうした視点が重要なのだろう。

IT社長が養子縁組を経験して学んだ「子育て」と「組織運営」

 トライバルメディアハウス社長の池田紀行氏は、自らワンオペを経験したことで、すっかり子煩悩になったという。最初は、たかをくくっていた同氏だったが、しばらくすると、その大変さに気づき、あまり子育てに関わってこなかったことを猛省した。そのとき、「意識改革が起きた」と同氏は当時を振り返る。

最後に

 ここまでワンオぺという言葉の意味や、その使われ方を過去のニュースを参考に紹介してきた。この言葉は昨今、ビジネス領域では、飲食店などの過剰労働をめぐる議論において、一方では、家庭における家事や育児のあり方をめぐる議論において用いられる。いずれにせよ、ワンオぺとは何かをひとりでこなすことであり、特定の人に負担を強いることである。少しずつでも、ワンオペにまつわる社会課題が改善されることを願うとともに、今後の動向に注目していきたい。

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