新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、世界各国で実施された「ロックダウン」。法的強制力は国によって違うものの、人やモノの流れが制限されることで、日常生活や経済活動に大きな影響が出た。現状ではワクチン接種が進み、ロックダウンを解除する国も出てきたが、世界で実施されたロックダウンの様子を、過去記事から時系列で振り返る。

世界中で実施された「ロックダウン」と「日本版ロックダウン」

 「ロックダウン(lockdown)」とは、緊急事態の際に、特定のエリアや建物への出入りや移動を制限することだ。特に最近では、新型コロナの感染拡大を抑制する目的で、人々やモノの移動を制限する「都市封鎖」という意味合いで使われている。

 コロナ禍でのロックダウンは、これまでアジア各国をはじめオセアニアや欧米で実施されてきた。日本でも緊急事態宣言に基づき移動自粛などが呼びかけられた(いわゆる「日本版ロックダウン」)が、これには法的な強制力がなく、厳密にはロックダウンとはいえないという見方もある。

 いずれにしても、日本をはじめ世界中で実施されているロックダウンや移動自粛は、感染拡大を一定程度抑制する一方で、人々の暮らしや経済活動に大きな影響を与えている。この記事では世界中で行われているロックダウンの様子を、過去記事から振り返っていく。

アジア、静まり返った街。ロックダウンで深まる住民と企業の不安

 最も初期の段階からロックダウンに踏み切ったのは、アジアやオセアニアの国々だ。

 たとえばフィリピンは2020年3月15日からマニラ首都圏、17日にはルソン島全体を封鎖。18日にはマレーシアが全土で移動制限を実施し、インドも24日までに30の州・連邦直轄領にまたがる地域を封鎖した。タイは22日までにバンコクの商業施設を閉鎖し、23日には隣国との陸路国境も原則閉鎖した。オーストラリアでは23日に商業施設などの営業を停止し、ニュージーランドも24日深夜からロックダウンに踏み切った。

 これらの中には、ロックダウン時点で感染者数がそれほど多くない国もある。それでも「我々のような発展途上国にとって、新型コロナがもたらす危機は尋常ではない」(インドのモディ首相)という危機感が各国政府を動かしている。

 ただしロックダウンは、新型コロナの拡大を抑制する一方で労働者の移動や物流も制限してしまう。ロックダウン開始早々から深刻な影響を受けている地域や業種もあり、今後の展望も見通せない状態だ。

新型コロナで「外出禁止」ならどうなる?欧州の事例を徹底比較

 爆発的な感染拡大を受け、ヨーロッパ各国もロックダウンに踏み切った。

 20年3月16日に外出禁止を発令したフランスでは、外出の際に署名と出発時刻を記入した特例外出証明書の所持を義務付けられ、違反者には375ユーロ(約4万5000円)(再違反は1500ユーロ、繰り返した場合は3700ユーロ)の罰金を科すなど厳しい内容だ。3月8日から4月3日までのロックダウンを決めたイタリアも同様で、外出禁止の違反者には最大3000ユーロ(約36万円)の罰金が科されている。

 一方で全国的な外出禁止を求めていないドイツ(当時)や、自粛を呼びかけたるものの規制が緩い英国など、同じヨーロッパ内でもコロナへの対応には温度差があるという。

緊急事態宣言で終息?日本版ロックダウンの限界

 そのような中、20年4月6日には、日本も緊急事態宣言による「ロックダウン的措置」への準備に入った。映画館や展示場、百貨店、スーパーなど「多数の者が利用する施設」に使用制限や停止を要請・指示するもので、法的な強制力はない。また外出の自粛は呼びかけられても、外出禁止にすることはできないという。

 アジアやヨーロッパのような「厳密な意味での都市封鎖」ではないぶん、日本版ロックダウンに対しては「経済や社会が混乱する割には十分な成果を得られない事態になりかねない」との指摘も出た。

新型コロナで解雇、倒産……蒸発する仕事。雇用の「氷河期」が迫る

 世界中で行われたロックダウンは、国際社会に大きなダメージを与えた。IMFは20年4月、ロックダウンなどの影響により、20年の世界の経済成長率は「世界恐慌以来最悪」のマイナス3%になると予想した。

 ILOは世界の労働人口の約38%が解雇や賃金カットなど雇用リスクに直面していると推定し、アメリカでは4700万人がレイオフされ失業率は32%に達する可能性があるとも試算されている。

 日本でも状況は同じだ。IMFの予測によると2020年の経済成長率はマイナス5.2%とリーマン・ショック並みとなりそうだ。今回の失業率の悪化で「ほぼ完全雇用だった時代は終わる」と語る専門家もいる。再び「就職氷河期」がやって来るのではないかと、就職・転職活動をする人たちの間で不安が広がった。

欧州に感染拡大の第2波。感染者は第1波の約4倍で「半ロックダウン」へ

 ロックダウンによって一度は沈静化したかに見えた新型コロナだが、20年夏には各国で感染が再拡大した。

 スペインでは7月に首都を中心に感染者が急増し、ベルギーやフランスでは8月に入ってから新規感染者が増加。イタリアでは10月になってから感染が再拡大した。各国の感染再拡大は「夏のバカンスと9月の学校再開」のためというが、最初のロックダウンが解除された後の「気の緩み」も無関係ではないという。

 経済への深刻な影響を懸念し、どの国も本格的なロックダウン再開には慎重な姿勢を見せた。その代わりに「半ロックダウン」とも呼べる部分措置を実施しているところが多い。

 たとえばスペインの場合、マドリードなど一部の地域で通勤や通学、通院以外の市をまたぐ移動を制限している。フランスはパリなど9都市で、一定時間帯の外出を禁止。英国・ロンドンでは同居人以外と屋内で会うことを禁じ、ベルギーは4週間ほど飲食店の営業を禁止した。

最後に

 新型コロナの感染拡大を抑えるため、人の流れやモノの流れを制限するロックダウン。すでに世界中の国々が実施に踏み切っており、日本もそれに続いて外出自粛などを呼びかけた。しかしロックダウンは人々の生活や経済活動にも大きなダメージを与える。感染拡大の抑制と経済活動との間でどのようにバランスをとるのかは、引き続き重要なテーマとなりそうだ。

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