日常的に屋外で起居するホームレス。国の政策や自治体、民間団体などによる支援で2000年代から減少傾向が続くものの、リーマンショックや新型コロナなどマイナス要素も少なくない。今回は過去に掲載した、ホームレスに関する話題を振り返る。

減少が続く「ホームレス」

 ホームレス自立支援法(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法)によると、ホームレスとは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」のことを指す。

 厚生労働省の調査によると、令和2年のホームレス数は全国で3992人。下記の表に示す通り、平成15年(2003年)以降は減少傾向が続いている。

厚生労働省「<a href="https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/64-15b.html" target="_blank">ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査):結果の概要</a>」より
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 この背景にあるのは、国の政策(アベノミクス)による景気回復、そして自治体や民間団体などによる各種の支援活動だ。とはいえリーマン・ショックや新型コロナによる経済格差は大きく、今後のホームレスの動向は予断を許さない。この記事では、過去に掲載したホームレスに関する主なトピックを紹介していく。

日経ビジネスが見た50年 開き続けた格差

 日本中で格差が拡大した2000年代。特に2008年のリーマン・ショックでは大規模な「派遣切り」が行われ、非正規労働者を中心に多くの人が仕事を失ったという。失業者の中には体を壊してホームレスになった人もおり、東京・日比谷の「年越し派遣村」が話題となるなど大きな社会問題ともなった。

減少するホームレス

 一方で、ホームレスの数自体は減少傾向にある。リーマン・ショックのあった2008年、東京23区のホームレスは2,500人以上だったが、翌年以降はコンスタントに減り続け、2013年8月には1000人余りとなった。

 事態が改善されつつある背景には、行政の対応が進んだことに加え、景気回復に伴う雇用増や資産価格の上昇がある。完全失業率も6年前(リーマン・ショック前)の水準まで回復し、自殺者の数が2年連続で3万人を下回っている(2014年当時)ことも、この傾向を裏付けているという。

大阪・あいりん地区の「働き方改革」に挑む

 国内で最もホームレスの数が多い大阪でも、行政による思い切った取り組みが進められていた。橋下徹市長(当時)の下で進められた「西成特区構想」がそれだ。

 治安が悪く過去に何度も暴動が発生してきた西成区の釜ヶ崎(あいりん地区)。日本の最貧困地域としても知られ、多くのホームレスが暮らしている。一方で彼らを支援する団体も数多いが、大阪市ではそれらの支援者をとりまとめ、合意形成を図ることに努めた。

 加えてホームレスの自立を促すために「街の美化」の仕事を与え、さらに大阪府に働きかけて県警を動かし「覚せい剤の売人」や「ゴミの不法投棄をする人」の排除にも力を入れたという。

日本は農業で救われる

 農業を通して、ホームレスの自立を支援する動きもある。神奈川県のNPO法人「農スクール」ではホームレスや元・受刑者、ひきこもりといった人々を対象に「農業に従事するために必要なスキル」を身につけさせ、農業法人への就職を目指している。

 代表の小島氏によると、農作業はコミュニケーション力の育成と精神の安定につながるという。取り組み開始から4年が経過した現在(2017年当時)、すでに85人がスクールを卒業し、全国各地の農業法人に就職を果たしている。

10万円特別定額給付金について知っておくべき10のこと

 新型コロナの感染拡大は、ホームレスにも影響を与えている。そのひとつが「特別定額給付金」の給付方法を巡る問題だ。

 すべての国民に一律10万円を支給する特別定額給付金は、「2020年4月27日時点で住民基本台帳に記載されたすべての国民」を対象とし、対象者には市区町村から申請書が郵送される。そこで問題になるのが、屋外やネットカフェなどに寝泊まりするホームレスの取り扱いだ。

 総務省はこの問題に対し、ホームレスでも「住民登録がされている市区町村で給付申請は可能」とし、登録が抹消されている場合も「再登録すれば給付が受けられる」としている。

新型コロナ第2波に向け社会的弱者のケアを

 新型コロナに伴う2020年4月7日の「緊急事態宣言」が、ホームレスの増加につながる可能性もある。多くの企業が業績の悪化を理由にアルバイトや派遣、契約社員を解雇しており、雇用者数の減少は「リーマン・ショックを上回る最悪の状態」だという。

 また調査によって「年々減少傾向」とされるホームレスの数も、ネットカフェ難民を調査対象としていないなど不完全で、実際にはもっと多くのホームレスが存在しているとの指摘もある。

 新型コロナが社会の格差を拡大させる中、ホームレスなど社会的弱者に対する支援のありかたが問われている。

最後に

 確認されているだけでも、数千人のホームレスが存在する日本。国や自治体、民間団体などの取り組みによって、その数は年々減っているという。一方で「調査対象」から漏れている人々の存在や、新型コロナによる失業者の急増など「実際のホームレスの数」については疑問の声もある。今後彼らへの支援がどのように行われていくのか。まだまだ目が離せない。

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