かつて過重労働問題で、「ブラック企業」の代名詞的なイメージを持たれていたゼンショー。同社はその窮地からどのように脱したのか。本稿では、同社の概要や沿革に触れつつ、過去のニュースを参考に復活の経緯を紹介する。

ゼンショーの概要、沿革

 ゼンショーホールディングス(ゼンショー)は牛丼チェーン「すき家」をはじめとする各種外食チェーンやスーパーマーケット等を傘下に持つ日本の企業。「世界から飢餓と貧困を撲滅する」ことを目指し、「世界中の⼈々に安全でおいしい⾷を⼿軽な価格で提供する」を企業理念に掲げている。

 一方で同社は2014年ごろ、すき家を中心としたグループ企業における過重労働が発覚し、いわゆる「ブラック企業」の代名詞的なイメージを持たれていたこともある。本稿では、この問題を巡り、ゼンショーがどう変化していったのか、過去のニュースを参考に紹介する。

創業者、小川賢太郎とは

 そんなゼンショー創業者で、代表取締役会長兼社長を務める小川賢太郎氏は、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という壮大なビジョンを掲げる、大胆な人物だ。また、元通産官僚であり、日本サッカー協会専務理事を経て、現在は早稲田大学スポーツ科学研究科教授を務める平田竹男氏によると、小川氏はさまざまなことに精通しているという。それは例えば、マルクスの資本論やサッカー論、クラシック音楽論、健康管理術などだ。何事も突き詰める性格なのだろうと、平田氏は述べている。

ゼンショー、内定辞退ゼロの驚き

 ゼンショーは、過重労働問題をきっかけに「ブラック企業」と批判され続けた過去を持つ。しかし2014年10月に内定を出した学生の辞退者は実質ゼロ。これは世間を大きく驚かせた。「1人も逃げなかったのはすごくうれしかった……」。小川氏も記者会見で数秒間、言葉を詰まらせた。

 この日の記者会見は、2014年11月に設置した「職場環境改善促進委員会」の報告書が、2015年3月末に完成したことを受けて開いた。傘下のすき家で発覚した過重労働問題により、同社は2014年春ごろから「ブラック企業」の代名詞として厳しい批判を浴びてきた。およそ8カ月ぶりに公の場に現れた小川氏は「妻は主婦友達から避けられるようになり、社員もつらい思いをした」と声を震わせた。

ゼンショー小川社長が語った今後の成長と後継者

 実際、上記の過重労働を巡る一連の騒動を経て、小川氏のメディアへの露出は大幅に減った。そんな中、2016年6月に開催された株主総会では、まず外食や小売りなど各事業の業績報告ののち、小川氏が登壇。さらに時間を割いて、決算概要の中身と2017年3月期の業績予想、国内外の主要事業の状況について説明が行われた。総会中、株主からは「後継者について考えているのか」といった質問も出た。これに対し小川氏は、「次のグループを担う人は常に育てているし、誰がということは考えていない」などと説明したという。

働き方改革で過去最高益へ

 世間や株主からさまざまな声が上がる中、ゼンショーは、主力のすき家の労働環境や働き方を是正し、業績も回復させることに成功する。実際、2015年度の売上高は前の期比2.7%増の5257億900万円、最終損益は40億2600万円の黒字。前の期は111億3800万円の赤字だったので、文字通りV字回復だ。同社の時価総額は、8月にすかいらーくホールディングスを抜き、2775億円(2016年10月7日時点)と、日本マクドナルドホールディングスに次ぐ外食業界2位に躍り出た。

ゼンショーが社内保育園を作る理由

 では、具体的にどのような改善を行ったのだろうか。その1つが「事業所内保育所」の設立だ。2015年9月に、茨城県つくば市に1軒目を設立した。この保育所は、ゼンショーのコールセンターの1階にあり、そこで働く人や周辺の「ココス」(グループのファミリーレストラン)などのスタッフも使えるようにして、運営のノウハウを蓄積してきた。当初は土日と祝日だけの運営だった。というのも、「平日は地域の保育園に預けているが、土日は預け先がないので働けない」「もし土日に預かってくれたら働けるのに」といったニーズに応えて始めたからだ。2016年4月からは、平日の保育も手掛けるようになったという。

スーパー、増える身売りの理由

 業績の好調ぶりを受けてか、ゼンショーは2016年、食品スーパーの買収を加速。同社はフジタコーポレーション(群馬県太田市)を2016年11月下旬に買収。買収額は約124億円。フジタコーポレーションは北関東で、「フジマート」「アバンセ」「マルシェ」などの名で約40店の食品スーパーと総菜店を運営する。ゼンショーがスーパーの経営に進出したのは2012年。マルヤ(埼玉県春日部市)を買収したのがきっかけだ。さらに2013年にはマルエイ(千葉県市原市)の株式を取得。2014年に業績が悪化してからは買収を凍結していたが、業績が上向き再開した。

外食、海外M&A時代に突入

 こうして経営をV字回復し、企業イメージを少しずつ回復してきたゼンショーだが、課題もある。その1つが、国内の外食市場が縮小傾向にあることだ。理由はいうまでもなく、少子高齢化だ。ゼンショーのみならず、外食大手はそれ以前から、成長エンジンを海外に求めてきた。だが、2017年ごろから、その注力度は一層高まった。例えばゼンショーは2018年、米国最大手の持ち帰りすしチェーンで、北米を中心に約4100店を展開するAdvanced Fresh Concepts(AFC)を買収。同じ頃、「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスも、海外での企業買収に注力し始めていた。

最後に

 ここまで、ゼンショーの概要・沿革を紹介しつつ、同社がどのようにして「ブラック企業」というイメージを払拭していったか、その経緯を簡単に紹介してきた。外食産業を中心に、スーパーなどさまざまな事業に裾野を広げてきたゼンショーだが、今後もその動きから目が離せない。

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