大学をはじめとする研究機関と企業が共同で製品開発を行う産学連携。共同研究や技術指導、大学発ベンチャーとの協業などさまざまなスタイルがあり、それらの中には画期的な製品を生み出している取り組みも少なくない。今回はそうした成功事例のいくつかを過去記事から紹介する。

大学の研究成果を製品開発に生かす「産学連携」

 産学連携とは大学などの研究機関と企業が連携して、研究成果を製品開発などに生かす取り組みのことをいう。場合によってはここに行政が加わり、産官学連携と呼ぶこともある。

 産学連携は一般に、企業と大学の共同研究や研究者による技術指導、企業と大学発ベンチャーとの協業、TLO(技術移転機関)による技術移転といった形で行われることが多い。メリットとしては、企業にとっては自社開発の難しい技術やノウハウの獲得、研究機関にとっては研究成果を経済活動に生かせることが挙げられる。また産学連携を対象とした助成金制度を利用できることがあるのも両者にとって大きなメリットだ。

 この記事では国内の産学連携事例のうち、注目すべきものを過去記事から振り返っていく。

「減点主義はもうやめよう」 AGCの平井社長CEO

 AGCの平井良典社長CEO(最高経営責任者)によると、日本の大学ランキングが低下してきたのは日本の産業力の低下と時期が重なっている。一方で米国はこの30年間でGDP(国内総生産)の絶対額が大きく伸びているが、その背景には日本よりも圧倒的に多い産学連携があるという。

 「両利きの経営」を掲げるAGCでは、ガラスやディスプレー以外の新しい収益の柱を作るための「事業開拓室」を設置。MBA(経営学修士号)や博士号を取得した社員などビジネスと技術の目利きを採用するほか、30代の社員には博士号の取得を勧めるなど産学連携に準じた開発に取り組む。

「上川大雪酒造」の地酒に客が殺到する理由

 産学連携による酒造りという日本初の試みに取り組むのは、上川大雪酒造(北海道上川町)と帯広畜産大学。キャンパスの中に新酒蔵を作る際はクラウドファンディングを利用したが、大学OBや地元住民など多くの関係者の注目を集め、購入総額約3000万円、達成率約3000%を記録したという。

「水だけで汚れゼロ」食器、学生が広げた販路と共感の輪

 同じくクラウドファンディングで資金を募った産学連携の製品が、「水だけで汚れが落ちる」という特殊塗料を使用したキャンプ用食器だ。開発したのは愛知県の五合と中京大学総合政策学部の坂田隆文ゼミのゼミ生たちだ。

 これまでにない製品は話題を呼び、クラウドファンディングの購入者や地元の小売店だけでなく、製品に使われた技術についてBtoB(企業間取引)での問い合わせも増えているという。

「共通テスト利用入試は受験料免除」で人気、千葉工大の狙いは?

 2021年、22年と大学入学共通テストを利用した入試の検定料(受験料)1万5000円を免除したことで注目を集めた千葉工業大学。同大学が17年に設立した「パナソニック・千葉工業大学産学連携センター」には、パナソニックの技術者と学生が共同で作業できるオープンラボが設置されている。もちろん同センターは単なる研究施設ではなく、優秀な学生を製品開発に関わらせることで即戦力を育成する試みの場ともなっているという。

宇宙企業エール・NTTが気象衛星。災害多発に危機感、データで守る

 宇宙スタートアップ企業のALE(エール、東京・港)が中心となって行われた気象観測衛星の打ち上げプロジェクト「AETHER(アイテール)」。NTTや理化学研究所、国立天文台も加わった、幅広い産学連携の取り組みだ。

 気象予報の分野では国が主体で民間の参入は一定の制限を受けるが、今回のプロジェクトでは、衛星コスト100分の1で、政府衛星を補完する高頻度の観測を実現することを目指している。

「東大+TSMC」の求心力。日本の半導体が覚醒する

 2019年、東京大学と台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が半導体の共同研究を開始した。この産学連携の取り組みは国内の半導体業界や化学、精密機械、通信、ベンチャー企業、商社などから大きな注目を集め、半導体を使ってさらなる新製品や新サービスの開発を目指すための起爆剤になっているという。

日本製EV電池に欧州危機…トヨタ・パナソニック連合CO2削減へ

 東京大学はトヨタ自動車・パナソニック連合の電池会社や豊田通商といった企業グループとも産学連携体制を構築している。この取り組みで目指すのは、電気自動車(EV)の心臓部となる車載電池だ。世界的に二酸化炭素排出量の削減が求められる中、低炭素かつ低コストでリサイクルもしやすい「グリーン電池」の開発に力を入れているという。

最後に

 日本酒から宇宙産業まで、さまざまな産学連携の事例を紹介した。米国などと比べて日本の産学連携は数が少ないというが、この先さまざまな分野で産学連携が進んでいけば、日本経済の活性化や日本企業の国際的な活躍にも直結していく。ユニークで先進的な取り組みがさらに増えることを期待したい。

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