米リーマン・ブラザーズの倒産をきっかけに発生した「リーマン・ショック」。世界的な金融・経済危機から十数年が過ぎ、世界経済はある程度回復したように見える。一方で懸念されているのが「第2のリーマン・ショック」発生の恐れだ。今回は過去に掲載された記事から、リーマン・ショック後の話題をピックアップする。

世界に衝撃を与えた「リーマン・ショック」とは?

 リーマン・ショックとは、アメリカの大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」の破綻に端を発した世界的な金融・経済危機だ。アメリカでは2001年ごろから「サブプライムローン」と呼ばれる低所得者向けの高金利住宅ローンが増え、これを組み込んだ金融商品(証券など)も世界中で販売されるようになった。この金融商品を大規模に引き受けていたのが当時のリーマン・ブラザーズだ。

 しかし2007年の不動産バブル崩壊でサブプライムローンが不良債権化すると、金融商品の価値も暴落。致命的なダメージを受けたリーマン・ブラザーズは2008年9月15日に経営破綻した。経営状態の悪化は他の金融機関にも連鎖し、結果としてアメリカ経済、さらに世界全体の経済不況へと発展した。

 もちろん影響は日本にも及んでいる。同年10月28日には日経平均株価が一時「26年ぶりの安値」を記録し、上場企業を含む1万5646件の企業が1年のうちに倒産したという。

 リーマン・ショックから十数年がたち、アメリカ経済も日本経済も復調傾向にある。しかし部分的なダメージは依然として残っており、それに加えて「第2のリーマン・ショック」を危惧する声も大きい。世界経済の安定に向けて、やるべきことはまだまだ多い。ここではそうした取り組みの一端も紹介していく。

リーマン・ショックからどこまで回復したのか

 国際通貨基金のデータに基づくグラフによると、アメリカのGDPは2008年ごろにいったん下落し、その後は再び上昇傾向にある。しかし加速度的にGDPを伸ばす中国の勢いには追いついていない。ちなみに日本もアメリカと同様だ。

 リーマン・ショックの影響は国際競争力の落ち込みにも見られる。世界経済フォーラムのレポートによると、リーマン・ショック前年の2007年にアメリカの国際競争力は世界第1位だったが、リーマン・ショックから4年後の2012年には第7位に低迷。日本も第8位から第10位へと落ち込んでいる。リーマン・ショック以前は5%未満だった失業率もリーマン・ショック直後は約10%まで上昇し、その後も高止まりが続いている。

 一方で、株価には復調傾向が見られる。リーマン・ショック直後にアメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が大胆な利下げを行ったこともあり、2012年11月時点のダウ工業平均はリーマン・ショック以前の水準を超えるまでに回復した。自動の新車販売台数もほぼリーマン・ショック前の水準に戻りつつある。

「リーマン・ショック2」は来るのか

 第2のリーマン・ショックの有無をめぐり、世界経済をめぐるトピックが注目を集めている。

 1つ目のトピックは中国経済への不安だ。関係者によると「中国の銀行が抱える不良債権の2015年の増加幅は前年の倍以上」で、総額は1兆9500億元(2968億ドル)に上のるとみられるという。「バブル経済に別のバブル経済で対応する」ツケが回った形で、市場には中国当局による経済政策運営や通貨(人民元)そのものへの「不信」が広まっている。

 2つ目は原油価格の下落だ。2014年の半ばごろから「崖を落ちるように」原油価格が下がっており、2016年時点にはリーマン・ショック時を下回る水準に達している。背景にはサウジアラビアとイランの関係悪化があるとみられ、OPECと非OPECが原産に向けて協力しない限り、事態打開のめどは立ちそうにない。

気候変動が「第2のリーマン・ショック」要因に

 気候変動が「リーマン・ショックのように、世界経済を混乱に陥れる要因になる」と懸念されている。これを受けて、世界の投資家や金融機関、事業会社などの代表が集まる「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」は「(気候変動リスクに対応して)企業が事業継続するための戦略を立案・開示する統一ルール」を策定し、周知に努めている。すでに日本では金融庁、経済産業省、環境省といった政府機関に加え、金融機関と事業会社の23社がTCFDへの支持を表明(2018年8月28日時点)、気候変動リスクへの対応に積極的だ。

 企業が開示するガバナンスや取り組みは、投資家や金融機関による投融資の判断基準になると期待される。企業がTCFDの提言に基づいて「将来の気候変動の影響や、脱炭素社会への移行を見据えて体制を整備し、戦略を策定する」ことは、短期的には企業の経営戦略に影響し、中長期的には「第2のリーマン・ショック」のリスクを未然に防ぐことになる。

FRB、リーマン・ショック後初の利下げを検討

 2019年7月、FRBが利下げを行う可能性が出てきた。世界中で製造関連の指標が悪化していることに加え、トランプ政権下の貿易摩擦で投資を控える企業が増えたことで、景気の伸びが止まっているためだ。実際に利下げが行われるとすれば、2008年のリーマン・ショック後初となる。

FRBが先手、リーマン・ショック後初の利下げを実施

 2019年8月31日、FRBが利下げに踏み切った。リーマン・ショック以来の利下げとなるが、今後は「さらなる利下げにつながる」とみられている。

 リーマン・ショックの際に行われた利下げは急速な景気悪化に対応するものだったが、今回の利下げはさらなる景気減速に先手を打つ「予防的な措置」とみられる。

最後に

 アメリカを中心に、日本を含む世界各国に深刻なダメージを与えたリーマン・ショック。すでに十数年がたち各国の景気は回復しつつあるものの、気候変動や個別の貿易摩擦など「第2のリーマン・ショック」につながりかねないリスクは存在している。

 加えて、2020年初頭に拡大した新型コロナウイルスによる景気の衰退も深刻化しつつあるという。今後の世界経済の行方から目が離せない。

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