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創業から10年以内で、企業価値評価額が高い未上場のスタートアップ系ベンチャー企業は、ギリシャ神話に登場する一角獣の名前を使い「ユニコーン企業」と呼ばれている。米国と中国だけで全体の約8割を占めるものの、シンガポール、インドネシア、インドなどでも次々に誕生している。日本にもユニコーン企業はあるが欧米や中国に比べ少ない。今回は過去の記事から、ユニコーン企業になるための条件と事例をピックアップしていく。

「ユニコーン企業」とは?

 ユニコーン企業とは高い成長性を持ち、投資対象として有望なベンチャー企業を指す言葉だ。といっても、ただ成長性が高いだけでは不十分だ。一般にユニコーン企業と呼ばれるには、以下の条件を満たす必要があるとされる。

①創業から10年以内
②評価額10億ドル以上
③未上場
④テクノロジー企業

 4つめの条件は、必須ではないが、それ以外から分かる通り、ユニコーン企業と呼ばれるのはあくまで一時的だ。成長にともなって上場したり、創業から10年を超えたりすれば、ユニコーン企業とは呼ばれない。

 過去、ユニコーン企業とされた有名企業にはTwitterやFacebookなどがある。日本のメルカリも、もともとはユニコーン企業だ。しかし近年台頭してきた中国やインドなどの企業に比べ、日本のスタートアップにはユニコーン企業になるほどの勢いのある企業は少ない。ここでは日本企業がユニコーン企業になるための条件と、世界のユニコーン企業の事例について見てみよう。

日本から「ユニコーン企業」が飛躍する、2つの条件

 2018年3月時点で「ユニコーン企業」と呼ばれる企業は、世界中で237社、そのうち半分は米国の企業、そして4分の1は中国の企業だった。この頃、日本のユニコーン企業はPreferred Networks(プリファードネットワークス)1社のみだった(メルカリは18年6月に上場)。プリファードネットワークスはAI(人工知能)のディープラーニングの分野で先進技術を持つスタートアップ企業だ。

 理由の1つに挙げられるのが「若手起業家の育成」が進まない日本経済界の特質だ。シリコンバレーの起業家の平均年齢が30代とされる一方、日本では起業する人の3分の1は60代以上だという。若手をベテランが「後方支援」する仕組みが、今の日本には必要だ。

 もう1つの理由が日本人の「臆病気質」だ。米国ではビジネススクール卒業生の半分がベンチャーに就職したり起業したりするが、日本の若手の多くは安定した大企業に就職してしまう。背景にあるのは未開の領域にチャレンジすることを十分に評価しない、日本の精神風土だ。

「疑惑のユニコーン」、司法当局も動き出した

 03年に創業し、「たった数滴の血液から安価に血液検査ができる機器」を開発したとして一躍注目を集めたTheranos(セラノス)。推定企業評価額は90億ドルのユニコーン企業だったが、その後一転、疑惑の企業となった。

 きっかけは、同社が提供している血液検査の大部分が「実は既存の検査装置を利用している」という元従業員の証言だ。FDA(食品医薬品局)の調査に次いでSEC(証券取引委員会)やカリフォルニア州の連邦地検の調査も受けたセラノスは結局、18年9月に解散している。

 一時的とはいえ、同社がもてはやされたのには理由があった。リコンバレー有数のベンチャーキャピタルから支援を受けていたことと、元国務長官でノーベル平和賞受賞者であるヘンリー・キッシンジャー氏を初め、数々の有名人が役員に名を連ねていたのだ。セラノスの事例はユニコーン企業を過剰にもてはやす傾向に一石を投じたといえる。

投機か革新か、中国の「ユニコーン」

 中国から数多くのユニコーン企業が誕生している。17年5月の時点では、自転車シェアの「Ofo(共享単車)」、EV(電気自動車)ベンチャーの「NIO(蔚来汽車)」など4社が誕生し、宅配ボックス事業の「豊巣科技」、動画アプリの「快手」などもユニコーンの条件を満たしそうな勢いを示していた。

 こうした背景には、中国の「金余り」がある。当時、中国では投資先にさまざまな規制がかかっていたうえ、米国の利上げによる急激な元安、中国当局による海外への送金規制強化などによって行き場を失ったマネーがベンチャー企業に流れ込んでいたのだ。

 今や中国のユニコーン企業は200社とも言われる。10年代前半における世界のユニコーン企業ののほとんどが米国と欧州だったことを考えると隔世の感がある。

メイク&スキンケアのグロッシアー、ユニコーンに

 14年創業のビューティ&スキンケアブランド「グロッシアー(Glossier)」は19年3月にユニコーン企業となった。この時点で1億ドルを調達しており、急速な勢いで拡大している。推定評価額は12億ドルだ。

レント・ザ・ランウェイもユニコーン企業に

 同じく19年3月、レンタルファッションサービス「Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)」もユニコーン企業になった。同社の設立は09年で、推定評価額は10億ドル超。

シンガポールのtraxが同国で2番目のユニコーン企業に

 19年5月、シンガポールでデジタルマーケティングサービスを手掛ける「trax(トラックス)」がユニコーン企業となった。シンガポールからユニコーンが誕生するのは、ライドシェアサービスの「Grab(グラブ)」以来、2社目だ。

インドのオラ・エレクトリック・モビリティがユニコーン企業に

 19年7月、インドでもユニコーン企業が誕生した。インド国内で電気自動車事業を展開する「オラ・エレクトリック・モビリティ」だ。インドでは他にも、同社のグループ企業「オラ」や「フリップカート」や「ペイティーエム」などがユニコーン企業に名前を連ねている。

最後に

 世界中の投資家から熱い視線を浴びるユニコーン企業。米国や中国のベンチャー企業がユニコーン企業として注目を集める中、19年時点で、日本企業のユニコーンはプリファードネットワークスを始めまだ10社に満たない。

 世界に羽ばたくユニコーン企業が、日本からも多数現れることを期待したい。

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