0歳児が何歳まで生きられるかを示す「平均寿命」。日本人の平均寿命は統計開始以来延び続け、いまや世界一の長寿大国となっている。一方で全体の人口と、特に若者層の人口は減少しており、深刻な少子高齢化が進行中だ。この記事では平均寿命に関する過去記事を紹介していく。

日本人の「平均寿命」と日本社会の課題

 平均寿命とは、0歳児の平均余命を意味する言葉だ。厚生労働省が発表した「令和元年(2019年)簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命(0歳の平均余命)は男性で「81.41歳」、女性で「87.45歳」となっている。

 ちなみに昭和22年(1947年)の平均寿命は男性「50.06歳」、女性「53.96歳」で、それ以降日本人の平均寿命は延び続ける一方だ。また厳密な比較は困難なものの、諸外国と比べても日本の平均寿命は男女ともにトップとみられる。

 これらのデータは、一方で現代日本の課題を象徴している。それが「年齢構造の問題」だ。

 統計局のデータによると現在(2021年3月時点)の日本の人口は1億2548万人で、これは前年同月と比べ48万人の減少となる。こうした傾向は2011年から続いているが、年代別に見ると大きく減っているのは15歳未満の若年層で、「65歳以上人口」はむしろ増加している。平均寿命はさらに延びると予想されており、現代日本の「少子高齢化」もこの先しばらくは止まりそうにない。

 今回は平均寿命を取り上げた過去記事を中心に、現代日本の課題をあらためて振り返ってみる。

延び続けてきた平均寿命の本当の意味

 公衆衛生の改善、医療環境の充実、個人の健康意識の向上など、さまざまな理由で延び続けている平均寿命。このペースが続けば、2050年ごろには平均寿命100歳も夢ではないという。

 過去を振り返ってみると、(資料などから推測する限り)平安時代の平均寿命は30~40歳で、その後、鎌倉時代・室町時代には10~20代に下がり、江戸時代にはふたたび30~40歳に延びている。現代と比べると著しく低いが、これはあくまで0歳児の平均余命だ。

 記録によると当時でも60~80代まで生きる人は存在しており、このことはつまり、若いうち(特に生まれて間もなく)に亡くなる人が多かったことを意味している。逆にいうと、現代は公衆衛生の改善や医療環境が充実した時代ということだ。

少子高齢化にメリットあり

 平均寿命が伸び続ける日本では、少子高齢化が社会問題とされている。程度の差こそあれ、これは先進国に共通する課題だ。一方で、元英金融サービス機構(FSA)長官のアディール・ターナー氏によると、少子高齢化は「悪影響よりも好影響の方が大きい」という。

 ターナー氏は「勤労期間と老後の期間が等しく延びるなら、経済に悪影響が及ぶことはない」といい、出生率の低下も「教育費の減少や子供1人当たりの教育投資の増加という恩恵をもたらす」とする。また人口が安定もしくは減少すれば格差が減り、「二酸化炭素の排出量を受け入れ可能なコストで減らすことも容易」で環境面でもメリットがあるという。

高齢者の運転免許返上は平均寿命を短くする?

 現在の日本では、少なくとも高齢化によるマイナス面が目立っている。その1つが「運転免許」をめぐる問題だ。65歳以上の高齢ドライバーによる交通事故報道は日常茶飯事で、その中には悲惨な事故も少なくない。そしてこのことは、高齢者に免許返上を促す根拠となっている。

 だが「老年精神医学」の専門家によると、高齢ドライバーの事故が増えたのは単に人口に対する高齢者の割合が増えたためであって、高齢者の運転技術の問題ではないという。つまり高齢者の事故増加は必ずしも免許返上とは結びつかず、むしろ免許を返上させることは高齢者の認知機能にかなりの悪影響を及ぼし、結果として平均寿命を短くする可能性もある。

シニア婚活で老後の孤立解消

 高齢化でしばしば問題とされる別のテーマが「老後の孤独」だ。国勢調査によると一人暮らしをする高齢者は男女とも年々増えており、今後も増える傾向は変わらないというのが一般的な見方だ。

 こうした現状を背景に、シニア世代の婚活が注目を浴びているという。2018年6月にはソフトバンクホークス球団会長の王貞治氏(当時78歳)が結婚を発表、12月には元東京都知事の猪瀬直樹氏(同71歳)も結婚した。

 厚生労働省の人口動態統計の調査でも、50歳以上の結婚は2000年ごろから急増している。シニアを対象とした婚活市場も活発だ。

 一方でシニア世代はパートナーに求める男女の価値観の違いも大きく、それによる「ミスマッチ」は無視できない。老後の孤立解消のためにも、行政によるいっそうの「シニア婚活支援」が求められている。

「老い」から解放? パワードスーツで筋力補完

 技術の進歩が、高齢化によるデメリットを補っている。たとえばパナソニックの子会社、ATOUN(アトウン)が手がける装着型ロボットのパワーアシストスーツはその一例だ。すでに農業や林業といった「力仕事」の現場でも活用が進んでいるという。

 仮想空間で、アバターによるコミュニケーションを提供するサービスもある。実際の肉体に関係なく「精神」のみが宿るアバターは、老いやジェンダーからくるさまざまな問題を解決すると期待されている。

最後に

 統計開始以来、ずっと延び続けてきた日本人の平均寿命。医療や衛生環境が向上したたまものだが、一方で高齢化による弊害も指摘されている。もちろん高齢化はデメリットばかりではない。また高齢化が原因となる課題や問題を補う技術も進んでいる。平均寿命の延びをめぐる今後の社会の流れに、要注目だ。

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