複数の会社で持ち株会社を設立し、グループ企業を形成する「経営統合」。経営リソースの合理化やリスクの分散などのメリットがあるとされ、さまざまな業界で活用されている。この記事では過去に話題となった、さまざまな経営統合の事例を振り返る。

「経営統合」のメリットとM&A

 「経営統合」とは、複数の企業が共同出資して持ち株会社を設立し、それぞれが子会社としてその傘下に入ることをいう。新しく設立される持ち株会社には、一般に「○○ホールディングス(HD)」と名付けられることが多い。

 経営統合のメリットには、

  • 子会社間でシステムや人事制度を統合する必要がないため統合に伴う負担が軽いこと
  • 子会社間でリスクを分散できるため共倒れの危険が減ること
  • グループ内(子会社間)の競争と協調により優秀な後継者が育ちやすくなること
  • 経営戦略を担う親会社と事業を運営する子会社を分けることで経営資源を合理化できること
  • それぞれの企業が持つ人材やノウハウを共有することでシナジーを生み出せること

 などが挙げられる。

 上記メリットのうち、特に最初の3点はM&A(企業の合併・買収)に対する大きなアドバンテージとなる。一方でグループ内の各企業がある程度独立していることから、残りの2点についてはM&Aに一歩及ばないという。

 今回は過去数年の記事を通して、経営統合の事例のうち特に注目を集めたものを紹介していく。

「3社連合」に秘める力

 食肉加工メーカー業界2位で牛の繁殖ノウハウを持つ伊藤ハム、同7位で直営の養鶏場や養豚場を保有する米久の経営統合によって誕生した「伊藤ハム米久ホールディングス」。両社のノウハウを生かすことで「地方の農家の経営を安定させ、役割分担できる仕組みを築く」モデルケースとするのが狙いだ。

 伊藤ハム米久ホールディングスは、すでに大きなシナジー効果を生み出している。2016年の設立後からの2年で33億円のシナジー効果を生み出しており、21年3月期を最終年とする中期経営計画では1兆円の売上高を目標に据えているという。

意見分かれた出光創業家の「兄弟」

 2019年4月に経営統合した出光興産と昭和シェル石油。もともと15年7月に基本合意に至っていたが、出光創業家の反発で正式決定が遅れていた。特に大株主である創業家次男、出光正道氏は最後まで統合に反対を貫いていたという。

 最終的に出光家の資産管理会社「日章興産」と創業家長男、出光正和氏の持ち株を合わせることで経営統合に踏み切った両社。「創業家による会社の所有と経営の分離の難しさ」を見せつけるケースとなった。

ミネベアミツミ、ユーシン買収の真の狙い

 東証1部上場の機械メーカー「ミネベアミツミ」。金属加工技術と電子機器技術を強みに自動車業界での取引量拡大を図ってきたが、自動車メーカーと直接取引できる「ティア1」となるには実績不足だった。

 そこで同社が取った戦略は、1926年設立の老舗自動車部品メーカー「ユーシン」との経営統合だ。ミネベアミツミの技術力とユーシンのコネクションで、両社の売上高は現在の1300億円から3000億円に拡大すると期待されている。

マツキヨ、ココカラと統合で首位返り咲き

 ドラッグストア業界5位のマツモトキヨシホールディングスと7位のココカラファインが経営統合の協議を開始した。目指すは「日本一への返り咲き」だ。

 経営統合が実現すれば、売上高約1兆円・店舗数約3000店の巨大グループとなる。マツモトキヨシHDの松本清雄社長は、「アジアで一番のドラッグストアになりたい」と抱負を語る(両社の経営統合は2021年3月に実現した)。

ホンダ・日立が部品4社統合

 ホンダ系部品メーカー「ショーワ」「ケーヒン」「日信工業」の3社と、日立系部品メーカー「日立オートモティブシステムズ」が経営統合を発表した(2019年10月)。日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%を出資する新会社は、デンソー、アイシン精機に次ぐ国内第3位の規模となる見込みだ。

 統合に伴いホンダ系3社の経営権は消滅するが、いずれの企業も60年、あるいは80年近くにわたりホンダを支えてきた老舗だ。OBからは「何も日立と一緒にしなくても」との声も聞かれるという。

 とはいえ、ホンダ系にとってはホンダ以外の販路拡大、日立系にとっては自動車関連のノウハウ獲得など、経営統合のメリットはどちらの陣営にもある。「相乗効果はすぐに出るわけではない」ものの、市場では新会社への注目がすでに高まっている。

ヤフー・LINE統合合意も残るシナジーへの不安

 大きな話題を集めたヤフー(Zホールディングス)とLINEの経営統合。「1億人規模の個人データを持つ国内最大のIT企業」が、米中の巨大IT企業に続く第三極となれるかどうか注目を集めている。

 とはいえ、両社の経営統合は複雑だ。まずソフトバンクと韓国のネイバーがTOB(株式公開買い付け)を行い、LINEを上場廃止にする。その後ソフトバンクとネイバーが50%ずつ出資して合弁会社を設立してZホールディングスを子会社とする。ヤフーとLINEは、そのZホールディングスの子会社になるという関係だ。 統合に当たっては日本と韓国それぞれの独占禁止法をクリアする必要もある。

 経営統合後も、年配のユーザーが多いヤフーと若者に支持されるLINEでは、どこまでシナジー効果が発揮できるか不透明だ。

最後に

 市場の変化や自社の課題に対応するうえで、経営統合は効果的な手段の一つだ。ここ数年だけでも老舗企業、新興企業を問わずさまざまな業界で経営統合が行われている。とはいえ、異なる企業文化同士の統合は簡単ではない。今回取り上げたケースについても、経営統合によって新たな価値が生み出されるかどうか、引き続き注目していきたい。

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