「嫌がらせ」を意味するハラスメントという言葉。最近は「セクハラ、パワハラ」だけでなく、「ジタハラ(時短ハラスメント)」や「スメハラ(スメルハラスメント)」など、さまざまな「○○ハラスメント」という言葉が飛び交っている。無自覚のままハラスメントの加害者にならないためにも、過去の記事からハラスメントの種類や傾向について振り返ろう。

「ハラスメント」をめぐる問題とは

 ハラスメント(harassment)とは「嫌がらせ」を意味する英単語だ。といっても、日本でもハラスメントは外来語として定着しつつあり、性的な嫌がらせを意味する「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」や権力に由来する嫌がらせを意味する「パワーハラスメント(パワハラ)」など、さまざまな「○○ハラスメント」という言葉が使われている。

 ハラスメントは意図的に行われる場合もあるが、一方で「無自覚に」もしくは「善かれと思って」何らかのハラスメントをしてしまう人もいる。逆にハラスメントという言葉を過剰に意識して、何がハラスメントになるか知らないまま戦々恐々とする人も少なくない。

 今回は過去に掲載された記事やコラムから、さまざまなタイプのハラスメントやハラスメントになる言動、ハラスメントが起きやすい環境についてピックアップしていく。

その鈍さ、ハラスメントにつき

 作家でタレントの遙洋子氏によると、相手に対する「鈍さ」もハラスメントだという。難病で入退院を繰り返し、ようやく職場に復帰した相手に「小さいことをクヨクヨ考えるからそんな病気になるんだよ」と声をかけるのも、たとえそれが「励ましのつもり」でもハラスメントだ。

 このように、悪意がなくても「鈍さ」のために相手を不快にさせたり傷つけたりすることは少なくない。無自覚なハラスメントを回避するにはコツがいる。遙氏が勧めるのは「私に何かできることはない?」という言葉や、「じっくり聞くこと(ただし助言は一切不要)」だという。

「ジタハラ(時短ハラスメント)」が急増する

 上司が部下に対して「時短だ」「定時に帰れ」と言い続けることは、「時短ハラスメント(ジタハラ)」になる場合がある。しかし長時間労働の解消を進める中で、無自覚にジタハラを行う上司は少なくない。

 コンサルタントの横山信弘氏によると、時短を進めるには「『売り上げや利益目標を達成した状態』あるいは『達成できる状態』になっていること」が前提条件だ。だからといって、長時間労働が善しとされるわけではない。大事なことは、目標の達成に必要な仕事とそうでない仕事を仕分けして、限られた時間内で目標を達成しようとする姿勢だという。そうした努力もしないで部下に「時短」や「残業ゼロ」を強要することが、ジタハラになるというわけだ。

あなたのにおいもハラスメント

 臭いに由来する嫌がらせ「スメハラ」が増えているという。パナソニックの東京の拠点「パナソニック東京汐留ビル」で配布されたマナーブックには、「社内で一番気になるもの、実は『ニオイ』でした」と書かれている。

 臭いの内容はさまざまだ。体臭や口臭だけでなく、香水や化粧品、さらには柔軟剤や芳香剤までを「不快」と感じている人は多い。多田猛弁護士によると、スメハラは「セクハラやパワハラのように加害者側が認識できる行為ではなく自覚がない」と言い、法律で一律に規制できるものでもないという。それでも最近は「臭い」を理由に会社を休職・退職する人も出始めており、訴訟リスクを含めて事態は深刻だ。

 こうした事態を受け、スメハラを自覚し防止しようとする動きも出てきている。ベンチャー企業のネクストテクノロジーはセンサーで体臭を検知するロボットを販売し、コニカミノルタもスマートフォンと連動する体臭測定器を開発している。タクシー業界では、全ドライバーに「無臭の消臭スプレー」を配布している企業があるという。

 一部の企業では人事評価にも「臭い」が盛り込まれるなど、スメハラへの社会の意識は高まる一方だ。

無自覚にハラスメントに加担していませんか?

 「SOGIハラ(ソジハラ)」という言葉がある。SOGIとは性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)の頭文字で、性的マイノリティーに対する噂話やからかいなどがSOGIハラになるという。LGBTの人がいる場で、いわゆる「ホモネタ」を出すようなケースだ。

 とはいえSOGIハラはもちろん、LGBTそのものへの理解はまだまだ高くない。このため無自覚にハラスメントを行ったり、それに加担したりしてしまう人は多い。 たとえば「ホモは昇進させない」といったあからさまな言動だけでなく、「男のくせに」といった男らしさ・女らしさをベースとした言動もNG。宴会で女装芸を見せられるのも、LGBTの当事者にとっては嫌がらせだ。中にはカミングアウトしていない当事者がそのような「芸」を強要され、うつになったケースもあるという。LGBTを理由にしたいじめや無視といった、より悪質なSOGIハラもある。

 多様性が世界的に尊重されつつある現在、人材の維持と職場の活性化のためにもSOGIハラを防ぐ意識が必要だ。

これもハラスメント!? その一線を越えれば、あなたのクビが飛ぶ?

 2018年4月、財務省のトップがセクハラを理由に辞任した。エリート官僚でさえもハラスメントで地位を追われるというのは、これまでの「日本の組織文化の常識」が否定され、変化したことを意味している。つまり、ハラスメントへの無理解や無自覚は「クビ」に直結するということだ。

 今日、一般的もしくは一般的になりつつあるハラスメントには、次のようなものがある。

  • セクハラ…性的な嫌がらせ
  • パワハラ…権力を背景にした嫌がらせ
  • マタハラ…妊娠・出産やそれに関する制度の利用への嫌がらせ
  • SOGIハラ…性的指向や性自認に関する嫌がらせ
  • ケアハラ…育児休業・介護休業に関する嫌がらせ

 すでに法律でもセクハラ、パワハラの対応窓口を置くことが義務化されている。ハラスメントの放置は「ガバナンスが効いておらず、不祥事リスクがある」とみなされることもあるため、ハラスメント対策は企業にとって急務だ。

霞が関、マスコミ…ハラスメントが多い業界の共通点はコレ

 少子化ジャーナリストの白河桃子氏によると、ハラスメントが多いのは「マッチョな長時間労働職場」だという。これは同質性が高く「こうあるべきだ」という価値基準で強制や高圧的な指導が横行する職場のこと。一般に女性比率が低く、男性の平均勤続年数が長い企業などがそうした職場になりやすい。一方で仕事中毒の社員が多いベンチャー企業でもハラスメントは存在し、さらに女性が過度に多い職場では女性同士のパワハラや男性部下へのセクハラもあるという。

 一方で外資系の金融企業では入社前に「もし私がハラスメントをしたら、解雇処分も受け入れます」という書類へのサインを要求されることもある。リーマン・ショック以降「持続可能な業界」を目指している金融業界は、変わりつつあるようだ。

 これからの時代、「オレと同じように会社に尽くせ」というパワハラ体質は通用しない。管理職は、自分のコピーをつくるのではなく、多様なメンバーをまとめる「ダイバーシティ・マネジャー」の役割を担うことが必要だ。多くの企業が「モノ中心」ではなく「ヒト中心」の組織づくりへとシフトしている今、ハラスメントへの真剣な対策が求められる。

最後に

 一口にハラスメントと言っても、その内容はさまざまだ。セクハラ、パワハラといった「定番」だけでなく、最近はジタハラやスメハラ、SOGIハラなども注目を集めている。
 ハラスメントの有無が企業の評価や人事にも影響し始めている今、一人ひとりにハラスメントへの理解と自覚が求められている。

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