かつて世界最大の自動車メーカーだった米ゼネラル・モーターズ(GM)。倒産、国有化、そして国有化の解消を経験してきた同社は今、どのような方向に進もうとしているのか。本稿では過去の記事を紹介しながら、GMの直近6年間の動向を探っていく。

ゼネラル・モーターズの沿革

 GMは、20世紀初頭に、米国のミシガン州で創業した自動車メーカー。1930年代から第2次大戦後にかけ、米国では最大の市場シェアを握っていた。また、1950年代から60年代には、世界最大の自動車メーカーとして知られていた。しかし、70年代以降は、トヨタをはじめとした海外からの輸入車との競争に苦しみ、低迷。2009年6月1日に倒産し、国有化された。2013年には国有化が解消されたが、2014年には大規模なリコールを発表するなど、その後も不安定な時期が続く。一方で同社は、テクノロジーへの関心は高く、自動運転技術への投資などを行ってきた。

底知れぬGMリコール危機

 2014年2月13日、GMはシボレー・コバルト(兄弟車のポンティアックG5を含む)の2005年から2007年モデル、77万8562台をリコールすると発表。4月時点では、GM車の販売が極端に落ちたわけではなかった。だが、当時は追加リコールが相次いでおり、顧客離れが広がる恐れがあるとされていた。一連の不具合は、エンジン始動スイッチの問題でエンジンが止まったり、エアバッグが開かなかったりすることが挙げられていた。例えば、エンジンキーのキーホルダーに飾りなどをぶら下げていると、その重みで運転中にキーが鍵穴で回り、エンジンが停止する恐れがある。キーが正しい位置で固定されなければ、衝突時にエアバッグが作動しない。GMは当時、この不具合による死者を12人としていた。しかし民間の消費者団体は300人以上の死者が出ていると発表した。どちらが正しいかは検証が必要だが、最大の焦点になっているのは、GMがこの問題を最初に把握してから10年もの月日を空費したということだ。

GMが自動車会社でなくなる日

 CMは2016年1月4日、自動車相乗りサービスの米Lyftに5億ドル(約580億円)を出資し、自動運転車を使ったタクシーサービスを共同開発すると発表した。自動運転車によるタクシーサービスの構想は、リフトの競合である米ウーバーテクノロジーズや米グーグルも発表済みだった。こうした背景もあり、2020年代には、GMやフォードといった自動車産業の既存勢力とグーグルやウーバーといった新興勢力が、自動運転車を使ったタクシーサービスの市場を舞台に競い合うことになるとされていた。

「Uber・トヨタ連合」対「Lyft・GM連合」

 一方、トヨタと米Uber Technologiesも2016年5月25日、戦略的提携を発表。提携内容は今後協議するとしていたが、注目すべきはトヨタがUberドライバー向けの自動車リースを提供するとしている点。なぜなら、このようなドライバー支援策を巡って、Uberと米Lyftがしのぎを削っているからだ。そしてそのLyftは、GMと連携することで、よりアグレッシブなドライバー支援策を提供している。LyftとGMが2016年3月に発表した「Express Drive Program」では、Lyftのドライバーが「乗客を週に65回以上乗せた場合」、GMの自動車を無料でレンタルできるのだという。

際立つGMとグーグルの強さ

 市販車を見る限り、自動運転ではドイツと日本が先行しているかに見える。だが世界で出願されている特許を読み解くと、違った側面が見えてくる。自動運転(レベル3と4相当)に関する特許の件数は、2016年以前の10年間では、1位がトヨタ自動車。GM、独ボッシュ、米フォード・モーター、米グーグルと続く。被引用件数、すなわちその特許がどれだけ別の特許に引用されているかを見ると、圧倒的にGMが強いという。トヨタは自社による引用の比率が高いのに対して、GMやグーグルは他社による引用比率が非常に高い。それだけ基本的な技術を押さえており、他社の脅威になっていることを示している。

米GMが黒字転換

 2019年には、2018年10-12月期決算で純損益が20億4400万ドルの黒字になったと発表したGM。利幅の大きいピックアップトラックの売れ行きが好調だったという。リコールなどが要因で、赤字が続いていた同社だが、ようやく追い風が吹いてきた印象があった。

GM、休眠予定のオハイオ工場をEVベンチャーに売却か

 また、同年5月にはニューヨーク・タイムズが、2018年11月に1600人の人員解雇と休止を発表していたオハイオ州の工場を、EV(電気自動車)ベンチャーのワークホースに売却する方向で協議を進めていると報じた。その売却先であるワークホースは、当時資金繰りに窮しており、2019年3月末時点で300万ドルの現金しか手元になかったという。工場再稼働のために必要な資金は3億ドルだったにもかかわらずだ。

GMのバーラCEO、オハイオ工場売却計画を「温かく見守って」

 その後、その売却計画に批判が殺到。ワークホースが2007年の創業以来、累計1億5000万ドル近くの赤字を出しているうえ、手元には19年3月末時点で280万ドルしかないからだ。GMのメアリー・バーラCEO(最高経営責任者)は売却計画について「きちんと吟味しているし彼らにも成功のチャンスはある。温かい目で見守ってほしい」と発言した。

GM株価が過去1年で最高値、強気の通期利益予想など好感

 2019年8月1日、ゼネラル・モーターズ(GM)の株価が同日、過去1年間で最高値を付けたと報じた。背景には、2019年4~6月期の売上高が361億ドルとアナリスト予想の359億8000万ドルを上回ったことが影響しているという。米国で、利益率の高い大型トラックが好調だったことに加え、通期の1株当たり利益の見通しを6.5~7ドルと強気に設定したことも好感要因だった。

GMとVWは「ハイブリッドに未来はない」、米でEVに集中

 2019年8月12日付けのウォール・ストリート・ジャーナルによると、GMは米国市場ではHEV(ハイブリッド車)に未来はないと判断したと報じた。同社の今後の投資は、EV(電気自動車)に集中させるという。米国市場に今後の4年間で20種類のEVを、VWも2020年中に小型SUV(多目的スポーツ車)のPHV(プラグインハイブリッド車)を投入する計画だという。

米GM、タイ工場で従業員を削減

 こうした事業展開の大きな決断をする一方、GMは人員削減も行っている。2019年8月30日、バンコク・ポストなどによると、GMはタイ東部の工場で320人以上の正社員と期間従業員を解雇する予定だったという。

最後に

 ここまで、スタートアップとの提携など、同社の過去のニュースを振り返りながら紹介してきた。同社はリフトへの投資、そして提携など、自動運転分野などでも挑戦を行ってきた。さらに同社は、ハイブリット車ではなくEVに注力するなど、将来の変化を見据えた戦略を取っている。そんなGMの動向から、今後も目が離せない。

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