月単位や年単位など、定期的に一定額を支払い続けることでサービスを利用できる「サブスクリプション(サブスク)」。ソフトウエアを提供するIT企業を中心に導入されていたシステムだが、近年では大企業から中小企業までさまざまな業種に広まりつつある。この記事では、国内外でのサブスクリプション活用事例について過去記事から振り返る。

注目を集める課金システム「サブスク」とは何か

 「サブスクリプション(subscription)」という英語は、もともと「予約購読」や「年間購読」を意味する言葉だ。現在はそこから意味が転じて、一定のサービスを利用できる「有効期限」を購入する方式のことを指すようになった。例えばソフトウエア大手の米アドビシステムズは、2013年から同社のソフトウエア販売にサブスクを導入している。

 IT業界を中心に広まったサブスクだが、最近ではトヨタ自動車やキリンビール、資生堂といったさまざまなジャンルの大手企業も導入。さらにはカフェやラーメン店などの外食産業でも活用の動きがある。ここでは国内外でのサブスク導入の動きやサブスクの持つ可能性や失敗事例を紹介していく。

外食も「サブスクリプション」続々

 サブスクリプション導入の動きが外食産業に広がっている。「ハンデルスカフェ」「ALPHA BETA COFFEE CLUB」や「コーヒーマフィア」といったカフェ、ラーメン店の「野郎ラーメン」、テークアウトランチの受け取りサービス「ポットラック」など、多岐にわたる。

 サブスクリプションを導入することで、企業側は顧客の詳細な購買データが得られるだけでなく、専用アプリを使えば顧客を囲い込んだり、集客の費用を抑えたりできる。顧客にとっては会計の手間を省けるメリットもあるという。

中小企業がサブスクリプション用サービスを提供

 スタートアップ企業「イジゲン」(大分県大分市)が18年10~12月に運営した実証実験サイト「always」。飲食店や洗車サービス、ネイルサロンなど、85件の定額サービスが掲載された。中小企業がサブスクリプションシステムを開発するには3カ月から半年ぐらいの期間と数千万~1億円ほどのコストがかかる。イジゲンのシステムを利用すれば「最短即日」「利用料は基本的に無料(別途手数料あり)」でサブスクリプションを導入できる。

 当初、開発の資金集めには苦労したというイジゲンだが、流通大手、鉄道会社など10社程度がこのシステムに着目しているという。また、19年12月には月額定額制でランチを食べることができる「always LUNCH(オールウェイズ ランチ)」とドリンクを飲むことができる「always DRINK(オールウェイズ ドリンク、現オールウェイズカフェ)」を主要都市で始めた(20年4月30日時点で、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、20年5月31日までサービスを一時休止している)。

資生堂がスキンケアのサブスク開始、化粧品業界に広がるか

 19年7月1日、資生堂がサブスクリプション制のサービス「Optune(オプチューン)」を開始した。月額1万円(税別)で、一人ひとりの肌に合わせた保湿液が利用できる。iPhoneの専用アプリと専用機器を使って、利用者の肌と睡眠の状態のほか、気温、湿度などの環境要因も計測し、化粧水や乳液などを組み合わせて保湿液が抽出される。保湿液のパターンは8万通り以上にもなる。

 AIを活用した肌解析技術と専用アプリによって実現できた。消費者の嗜好の多様化やSNS(交流サイト)の普及も後押ししている。サブスクリプション型のビジネスモデルは、商品やサービスによってはうまくいかない場合もある。ただ、一般的に化粧水や乳液といったスキンケア商品は、一度使い始めたものを継続購入することが多く、定額制のビジネスモデルとも合致しそうだ。

グラブ、eスクーターのサブスクリプションサービスを展開

 シンガポールの配車サービス大手、グラブがフードデリバリーの分野に進出した。シンガポール国内のレストランにサブスクリプションのeスクーター利用サービスを提供し、食事のデリバリーサービスに活用してもらう狙いだ。

家具サブスクのフェザー、1200万ドルを調達

 サブスクリプション制の家具貸し出しサービスを提供する米フェザー。1200万ドルの新規調達に成功し、19年5月からロサンゼルスとカリフォルニア州オレンジ郡に進出する。

ウーバー、配車やフードデリバリーのサブスクを実験

 大手配車サービスの米ウーバーも、サブスクリプションによるフードデリバリーサービスへの参入を目指す。19年に、配車サービスとフードデリバリーの「Eats」、電動アシスト自転車・電動スクーターシェアリングの「JUMP」を組み合わせた実証実験を実施。その後、19年9月にサブスクリプション型のサービスを本格的に始めると発表した。料金は月24.99ドル(約2700円)。

AOKIサブスク撤退の裏に4つの想定外

 18年11月14日、紳士服のAOKIがサブスクリプション制のスーツレンタルサービスを終了した。決定の背景には、「事前に想定した利用者層と実際の利用者のズレ」「ユーザーニーズに応える商品構成の難しさ」「システム構築費とサービス運用コスト増加」「既存店やECサイトへの相互送客で期待した効果が得られなかった」などの理由が挙げられるという。

 収益基盤を再構築するカギとして期待がかかるサブスクリプションだが、運用は簡単ではない。

最後に

 ここ数年でさまざまな業種にまで拡大してきたサブスク。IT企業や大手企業のサービスだけでなく、外食の店舗にも導入が進んでおり、身近なところでも広がり始めている。消費者にも多くのメリットが発生する。

 とはいえ、サブスクは万能の課金システムではない。失敗例も出ている。今後、サブスクサービスがどれほど広まるか要注目だ。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。