2009年の発覚以来10年近く続いたギリシャ危機。一時は「国家の破綻処理」がささやかれるほど深刻な事態に発展し、国民生活にもEUにも大きな混乱を招いた。今回は政権交代を軸にギリシャ危機がどのように進展していったか、過去記事を通して振り返る。

ヨーロッパ中を巻き込んだ「ギリシャ危機」とは?

 ギリシャ危機とは、2009年に発覚した同国の経済危機のことをいう。当時のギリシャは公務員が労働者人口の約4分の1を占め、年金受給開始年齢も55歳からという手厚い社会制度が負担になっていた。財政赤字はGDP比で13.6%に達し、一時は「国家の破綻処理」までささやかれた。

 もっとも、ギリシャの財政赤字はそれ以前から続いていた。それまでの政権は問題を隠蔽していたが、09年10月の政権交代によって実情が発覚、三大格付け会社による国債の格付け引き下げや、EUによる増税・年金改革などを含む緊縮財政要求を招いた。

 ギリシャではその後も12年、15年にそれぞれ政権交代が起きたが、15年に誕生したチプラス政権はEUが支援の見返りとして要求した緊縮財政を拒否。デフォルト(債務不履行)やEU離脱の可能が一気に高まった。最終的にはギリシャ側がEUに譲歩し「金融支援プログラム」が実施されたが、プログラム終了から約1年後の19年7月、チプラス政権は退陣に追い込まれた。

ギリシャ“破綻”へ秒読み

 ギリシャ危機発覚からの経緯を振り返ろう。11年7月時点でギリシャの債務は返済不能な水準にあり、大幅な債務減免が避けられない状態になっていた。事実上のデフォルトに相当する債務減免が行われれば、ギリシャ国債やギリシャの銀行の債権を持つ欧州銀行にも大きな損失が発生する。

 ギリシャ危機がヨーロッパ全体の経済危機につながるのは時間の問題だった。

保守政権誕生、つかの間の安堵

 12年6月、ギリシャに保守系の新民主主義党政権が誕生した。同党はEUとIMF(国際通貨基金)が要求する救済プログラムを支持しており、国民の間には「(問題を)すべてを解決してくれる」との期待が広がった。

 しかし深刻な景気後退が続けば、構造改革と財政再建が予定通りに進まずEUなどからの支援が中断する恐れもあった。すでにギリシャの銀行の預金残高は09年以降3割減少しているといわれ、取りつけ騒ぎとそれに伴う銀行の破綻も十分にありうる状況だった。追い詰められたギリシャ政府がEU離脱を決断する可能性もあり、ヨーロッパ全体を巻き込んだ騒動は収まる気配がなかった。

急進左派連合の勝利、新たな火種に

 15年1月、急進左派連合のチプラス氏が総選挙で圧勝した。選挙期間中、チプラス氏は反緊縮を公約に掲げており、新政権とEUの対立が予想された。

 チプラス氏はEUと旧政権との合意を見直すことを明らかにしており、EUが支援を打ち切ればギリシャ経済が大混乱に陥りユーロ危機に発展する恐れがあった。この年の2月末に終了を迎える支援プログラムが延長されるかどうか、世界中の注目が集まった。

国民投票の実施を発表、EUからの信頼失う

 EUによるギリシャの支援プログラムが15年6月末で打ち切られることになった。原因となったのは、チプラス首相(当時)が「緊縮策受け入れの是非を巡る国民投票」の実施を発表したことだ。

 EUはギリシャ危機の発覚以来、同国を重ねて支援してきたが、そのEUに何の相談もなく「国民」に判断を委ねたことにEU側は態度を硬化させた。

 ギリシャ国民の6割はユーロ圏残留を希望していることから、国民投票によってEUが提示する緊縮策を受け入れる「大義名分」を得たいチプラス氏だった。しかしEUからの信頼を失ったことで、危機からの脱出は一層困難な局面を迎えた。

財政改革法案可決、それでもくすぶる3つの火種

 15年7月16日、ギリシャで財政改革法案が可決された。これでEUの支援条件を受け入れる体制が整ったが、支援交渉を巡っては依然として3つの火種が残っていた。

 1つ目は「IMFの動き」だ。「ギリシャの債務は持続可能なレベルを超えている」と指摘するIMFは、EU側が債務の負担軽減策に取り組まない限り、ギリシャ支援を見合わせる可能性があると見られていた。

 2つ目は「ドイツの動き」。ギリシャ救済に対し、ドイツ世論の反発は大きかった。メルケル首相は「ドイツのためでもある」とギリシャ支援の必要性を訴えていたが、与党議員の5人に1人はメルケル氏に造反するなど抵抗は少なくなかった。

 3つ目は「ギリシャの政治情勢」だ。財政改革法案の採決に際し、与党議員149人のうち40人近くが反対票を投じた。政権がその後どのような動きを見せるか、不透明さが残った。

最後に

 09年に発覚し、15年の政権交代によって一層混乱したギリシャ危機。結果として18年には支援プログラムがすべて終了し危機的状況は去ったものの、この間にギリシャ国民やEU各国が受けた混乱やダメージは大きい。
 ギリシャの事例は、日本を含む他の国にとっても決して他人事ではない。米中の貿易摩擦や新型コロナウイルスなどによって混乱する世界経済の情勢に、今後ますます注意が必要だろう。

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