現金の受け渡しを必要とせず、カードやスマートフォンのみで決済を完了する「キャッシュレス」。フィンテック企業の台頭などにより世界中で導入が進む中、日本でも民間企業を中心に実証実験や本格導入が行われつつある。今回はキャッシュレスに関する過去記事から注目のトピックを紹介する。

国内外で活用が進む「キャッシュレス」とは

 キャッシュレスという概念はそれほど新しいものではない。たとえばクレジットカードの本格普及は20世紀半ばだ。しかし近年はスマートフォンのアプリやQRコードを利用した新世代のキャッシュレス技術が開発され、急速な勢いで普及している。世界銀行による2015年の調査データによると、韓国ではキャッシュレスの比率が決済全体の約90%、中国が60%、欧米の一部の国々でも45?55%程度。一方で日本のキャッシュレス化は20%弱にとどまっているという。

 とはいえ、ヤフーや楽天といった大手ECサイトを運営する企業、フィンテック企業として発展するLINEなどの企業を中心にキャッシュレス化導入の動きは活発だ。この記事では、国内のキャッシュレス事情について扱う過去記事を振り返っていく。

キャッシュレス比率、実は5割超 “通説”に反するデータとは

 日本のキャッシュレス比率は約2割。一方で海外に目を向けると韓国のキャッシュレス比率は約9割、アメリカは4割5分で、日本を大きく上回っている。ところが金融庁の調査によると、実は日本のキャッシュレス比率は5割を超えているという。

 この数字の違いは調査手法の違いによる。キャッシュレス比率を2割としたのは経済産業省による調査で、「家計の最終消費支出のうち、電子マネーやクレジットカード決済の比率」だ。一方で5割としているのは、金融庁が「個人の給与受け取り口座からの出金状況を分析したもの」。公共料金や家賃・ローン支払いなどの口座振込、ネットバンキングなどの利用もすべて含むためキャッシュレス比率の数字が大きく出てしまう。

赤いキャッシュレス、観光地に照準

 中国のキャッシュレスサービス、テンセントのウィーチャットペイ、アリババ集団のアリペイを取り入れる動きが増えている。静岡県の遠州信用金庫(浜松市)では2018年6月から7月にかけて中国キャッシュレスの仲介サービスを開始。京都信用金庫(京都市)や飛騨信用組合(岐阜県高山市)もすでに同様のサービスを提供しており、地方にインバウンド需要を取り込むカギと期待を寄せる。

 一方で、日本の銀行口座を持つ消費者向けの「日本版アリペイ」の計画は頓挫。一説には「日本の金融機関が決済口座に接続するのを嫌がった」というが、キャッシュレス化による中国との結びつきは今後も拡大していくと考えられる。


AIバスに、宮古島でのキャッシュレス決済

 宮古島でキャッシュレス決済の実証実験を行っているNTTドコモ。2018年7月から2019年2月にかけて(当時)、タクシーや飲食店、宿泊施設にスマートフォンを使ったクレジットカード決済システムを導入している。

 同社の取り組みの特徴は、地元のタクシー会社や商工会議所、地銀など複数の組織を巻き込み連携を図っていることだ。今後は宮古島での取り組みをモデルケースとして、他の地域にも同様の事業を展開していく予定だという。

キャッシュレス決済、LINEが頼る「元祖」

 独自のキャッシュレスサービス「LINEペイ」を展開しているLINE。2019年からキャッシュレスの元祖「Visa」との提携を開始するという。Visaブランドの提携クレジットカードを発行することで、ユーザーがLINEペイにチャージする手間を省くことが狙いだ。

 現時点(2019年2月現在)でLINEペイを使える加盟店は国内約133万カ所。Visaクレジットカードを導入すると、利用可能な店舗は世界5390万カ所と一気に増える。「キャッシュレス決済の普及には、『どこでも使える』という安心感が欠かせない」と話す同社。2019年秋に実施される消費増税前までに、キャッシュレスサービスでアドバンテージを稼ごうとしている。

楽天とJR東提携 キャッシュレス戦争、最終章へ

 2019年6月、ネットの世界で豊富な顧客を持つ楽天と電子マネー「Suica」を発行するJR東日本が提携する。その狙いについて、楽天側は「楽天とスイカで社会のインフラとなるような決済サービスを作っていきたい」と説明する。

 電子マネー加盟店の開拓で2013年より協力関係にある両社だが、今後は「JR東日本の施設」と「楽天のネットサービス」を融合させるなど、さらに関係を深めていきたい意向だ。

「キャッシュレス時代のATM」模索

 2018年9月、インテリア雑貨店「フランフラン」がキャッシュレスの期間限定ショップをオープンした。キャッシュレスのシステムを提供するのはセブン銀行のATM経由の現金受け取りサービスだ。

 現金の取り扱いが中心の銀行だが、キャッシュレスを推進する背景には「従来型のビジネスだけに頼っていたら、ATMの利用減は避けられない」という理由があるという。

キャッシュレス促進、思わぬ副作用も

 2019年10月の消費増税に向けて、政府がキャッシュレス決済の2%分ポイント還元を検討している。実施に向けて、端末導入コストの引き下げや加盟店が支払う手数料の上限設定をクレジットカード会社に求めていくという。

 だがキャッシュレスはメリットばかりではない。韓国では政府の施策によってキャッシュレス利用が「3年間で6.9倍」と急拡大する一方、2002年から06年までの4年間でカード破産の割合が90倍に増えているのだ。

キャッシュレス決済、特許に火種

 キャッシュレス化の技術をめぐる特許紛争のおそれもある。QRコード決済の関連特許を持つヤフーが、楽天など他社による特許権侵害の調査を開始した(2018年11月現在)。

 2023年度には国内市場規模が8兆円まで伸びると予測されるQRコード決済。全国の銀行などが連携してサービス提供に乗り出すとの報道もあり、今後の成り行きに注目が集まる。

最後に

 日本でも急速に普及が進むキャッシュレス。消費者の利便性が上がれば個人消費が促進され、地域や国全体の経済も活性化される。

 金融機関やフィンテック企業による参入が相次ぐ中、キャッシュレス化が今後どのように進展していくか期待が集まっている。

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