2023年からの導入実現が期待されている「デジタル課税」。OECD(経済開発協力機構)では基本合意に達しており、世界中で巨大な利益を上げる米GAFA( グーグル、アップル、旧フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)などの多国籍企業に対し、各社の拠点を持たない「市場国」が直接課税できる手段として期待されている。そんなデジタル課税の概要や可能性について解説する。

「デジタル課税」

 デジタル課税とは、国内に支店や工場を持たない外国企業に課税できないというこれまでの国際課税の原則を見直して、「市場国に課税権を認める」制度だ。OECD(経済協力開発機構)加盟国を含む 136カ国・地域の最終合意により、2023年からの導入を目指すとされている。

 デジタル課税では、売上高や利益率が一定以上(売上高200億ユーロ超、利益率10%超)の「多国籍企業グループ」を対象に、当該企業の現地拠点が存在しない国でも、商品が流通する市場となっていれば課税権が認められる。基本的にはほとんどの業種がこの対象となりうるが、各国が特に念頭に置いているのはGAFAをはじめとする巨大IT企業だ。

 巨大IT企業は世界中を市場に莫大な利益を上げている。しかし現行の制度では、消費者が多い地域に拠点がない場合、これらの国が企業に直接課税することはできない(ただしフランスでは2019年より独自のデジタル課税制度が施行されている)。

 とはいえデジタル課税の導入には多国間条約の締結が必要だ。GAFAの「本国」である米国では条約に関する議会承認が国内法より難しいこともあり、今後予定通りに制度が開始されるかどうかは不透明とされている。

 この記事ではデジタル課税を巡るEU(欧州連合)と米国の動きを中心に、最近の話題を振り返っていく。

国家と企業、溶ける境界線 テックが決めるGAFA後の覇者

 デジタル課税を巡り、国家間の争いが発生している。OECDでの議論とは別に独自のデジタル課税を導入したフランスに対し、GAFAを抱える米トランプ大統領(当時)がチーズやワインなどに課税する報復措置を宣言したためだ。

「GAFAの天敵」、欧州委ベステアー委員が語った信念

 OECDによるデジタル課税の議論の中で、キーマンの1人は、欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー委員だ。同委員は「GAFAが最も恐れる人物」と呼ばれ、米グーグルにはEU競争法(独占禁止法)違反で1兆円近い巨額制裁金の支払いを命じたほか、米アップルや米フェイスブック(現メタ)、米アマゾン・ドット・コムについても調査を進めているとされる。

 ベステアー委員は2019年にフランスが導入した独自のデジタル課税制度についても「フランスの判断は正しい」とし、「OECD案の国際合意がなくても、欧州各国が独自にデジタル課税を実行していくだろう」と語っている。

GAFA解体に反対「1つの頭を切れば2倍になる」

 一方でベステアー委員は、米国内で高まるGAFA解体を巡る議論には賛同していない。「もたらしている悪影響の大きさに対して厳し過ぎる措置を取ることはできない」ことに加えて、「1つの頭を切り込むと、頭の数が2倍になってしまう」ギリシャ神話のヒドラのように、「解体後に何が起こるか分からない」というのがその理由だ。

動くデジタル課税、日本企業に備えは

 「デジタル経済に税制が対応できていない」(甘利明・税制調査会長・当時)とされる日本の法制度。これに関連して、自民党と公明党が策定した2020年度税制改正大綱では「軽課税国に利益を移転することで租税回避を行っている多国籍企業の税負担を適正化する」という文言が明記された。

 すでにOECDやG20(主要20カ国・地域)では数年にわたりデジタル課税の議論が進められており、この大綱の文言は、日本としても国際ルール作りに関与していきたいという意欲を示したものだ。

包囲網もどこ吹く風 GAFAの次の一手

 OECDやG20などを中心にGAFAへの圧力が強まっている。実際に米国では反トラスト法(独占禁止法)でグーグルが提訴され、アップルやフェイスブック、アマゾンにも連邦議会の下院司法委員会による公聴会で幹部に厳しい攻撃が加えられた。

 とはいえ米国は、自国の産業保護政策の観点からデジタル課税に対しては反対の立場を取っている(当時)。各国の利害の対立がデジタル課税の有効性にどのような影響を与えるかは不透明だ。

最後に

 世界中で巨大な利益を上げるGAFAなどの多国籍企業に対し、各社の拠点を持たない「市場国」が直接課税できるデジタル課税。すでにOECDでは基本合意に達しており、2023年からの導入実現が期待されている。今後のルール作りに日本がどこまで加わっていくことができるか、引き続き要注目だ。

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