膨大なビッグデータを分析し、課題の抽出や解決策の提案を行うデータサイエンティスト。幅広い知識と専門技術が必要とされることから人材育成は難しく、業界では人手不足が続いている。ここでは国内企業における活用事例を中心にして、データサイエンティストに関する過去記事を紹介する。

ビッグデータを分析・有効活用する「データサイエンティスト」

 データサイエンティストとは、ビッグデータを分析して有効活用できる専門家だ。現代ではクレジットカードや電子マネーの利用履歴、インターネットやスマートフォン端末に蓄積される各種データなど、膨大なデータが日々蓄積されている。データサイエンティストはこれらのビッグデータを統計的な思考力で分析し、ビジネス上の課題や社会課題を抽出したり、解決方法を導き出したりできる。

 現代の企業にとって必要不可欠なデータサイエンティストだが、そのための「人材育成」は容易ではない。ITや統計学の知識に加え、ビジネスセンスや社会学の分野でも広い知識が必要とされるためだ。このため日本はもちろん世界中でデータサイエンティストの数は不足しているという。

 この記事では実際のビジネス現場での事例を中心にして、データサイエンティストに関する話題を過去記事から振り返ってみる。

社内に眠る「データ」を「お金」に換える

 アパレルショップを運営するストライプインターナショナルでは、3人のデータサイエンティストが開発に携わった商品流通システムを運用している。

 同社の商品データは50万種類に及び、全国290店舗ごとに販売実績や在庫データを分析して、「各店舗やECサイトに商品の移動を指示する」必要がある。こうした膨大なデータ処理を可能にしているのが、データサイエンティストの存在だ。

客ごとにメニューが変わる。すかいらーくの新システム

 すかいらーくホールディングスでは、2019年から「顧客一人ひとりの嗜好に合わせて最適なメニューを提案する」サービスを行っている。

 1700万人が利用するスマホアプリから「いつ店に来たか、どんな注文をしたのか」などのデータを収集・蓄積し、IT本部内のデータサイエンティストたちがそれを分析するという。これにより、店内の各テーブルに置いたタブレット端末を通して「来店時刻や天候・気温、季節、店舗の立地」などに応じた最適の商品を提案できるという仕組みだ。

製造現場にデータサイエンティスト。複雑な現場を情報が変える

 17年に「デジタルトランスフォーメーショングループ」を発足させた三菱ケミカルHD。傘下の製薬会社で長年にわたって活躍してきたデータサイエンティストたちが集まり、データサイエンスやAIの応用普及を通してグループ全体の変革を推進している。

 同社では翌18年に「マテリアルズ・インフォマティクスCoE」をスタートさせ、材料開発の分野でもデータサイエンスを応用するなど、データサイエンティストの重要性が増しているという。

ブリヂストン新社長「データ活用でタイヤも輝く」

 ブリヂストン代表執行役COO兼社長の江藤彰洋氏(当時)は「グローバルに広がる販売店のネットワークと高品質なタイヤの開発力」がブリヂストンの資産と語る。データ戦略を通してその資産を支えるため、同社では「社内で数百人規模のデータサイエンティスト育成を進めている」という。

ローソンも飛びつくキーエンスのソフト。データ分析が次の鉱脈

 大阪のキーエンスが開発したデータ分析ソフト「KIシリーズ」が、銀行やコンビニチェーンでも活用されている。京都中央信用金庫では京都府内外132店舗を利用する顧客の行動履歴から投資信託や融資契約の営業先を絞り込み、ローソンでは全国約1万4500店の自動釣り銭機や商品・チケットの予約購入端末の故障を予測するためにKIシリーズを導入したという。

 同種のソフトは大手ITベンダーも販売しているが、KIシリーズの強みは「二人三脚でフォローしてくれる」専任のデータサイエンティストの存在だ。

DX実現へ向け育成すべき4職種とは?

 現在、日本のデータサイエンティストは5万人程度にとどまる。増え続ける国内ニーズに対応するため、政府は将来的に「毎年卒業する大学生や高専生50万人の全員に、文理を問わず初級レベルの数理・データサイエンス・AI教育を課す」計画を立てており、すでに各大学では関連する学部や学科、講座が開講され始めているという。

最後に

 アパレルから外食、製造業、金融や小売りなど、あらゆる業界でデータサイエンティストが活躍している。一方、日本国内ではデータサイエンティストを含むIT人材の人手不足が深刻で、日本政府も大学などの高等教育機関を対象に人材育成計画を進めている。新たに誕生するデータサイエンティストたちが、ビジネスの現場をどのように変えていくか、期待を持って見守っていきたい。

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