「オープンソース」とは、利用者による自由な改良や再配布が認められるソフトウエアの開発手法だ。オープンソースソフトウエアは世界中の企業や政府機関も利用しており、近年ますます広がりを見せている。今回はオープンソースをめぐる企業や国家の動きを中心に過去記事から紹介していく。

再配布や自由な改良が認められる「オープンソース」ソフトウエア

 オープンソースとは利用者による利用、修正、再頒布が認められるソフトウエア、およびその開発手法のこと。具体的にはOSI(オープンソース・イニシアチブ:Open Source Initiative)が定めた以下の項目に準拠するものを指している。

  • 再頒布の自由
  • ソースコードを含み、ソースコードでの頒布も許可されていること
  • 派生ソフトウエアの自由な頒布
  • 作者のソースコードの完全性の維持
  • 個人やグループに対する差別の禁止
  • 利用する分野に対する差別の禁止
  • ライセンスの分配に追加的ライセンスを求めない
  • 特定製品でのみ有効なライセンスの禁止
  • 他のソフトウエアを制限するライセンスの禁止
  • ライセンスは技術中立的でなければならない

 オープンソースソフトウエアの中にはOS(基本ソフト)のLinuxやプログラミング言語のJava、データベース管理システムのMySQLのように、世界中の企業や政府機関に利用されているものも少なくない。また国家ぐるみでオープンソース開発を推進する中国などからは、欧米の大手企業も注目する新たなオープンソースソフトウエアが次々と誕生している。

 この記事ではオープンソースの動向について近年の記事から振り返ってみる。

国境を越えて広がるオープンソースソフトウエアの世界

 「ソースコードを読むことでコミュニケーションできる」オープンソースソフトウエアの世界では、開発国や開発者の出身地はほとんど意識されない。

 例えば日本人のまつもとゆきひろ氏が開発したプログラミング言語Rubyも世界中で利用されており、世界の開発者たちが改良を加えている。フィンランド人のリーナス・トーバルズ氏が開発したLinuxの中核部分はインターネットを支えるほとんどのサーバーやスマートフォン用基本ソフトAndroidで使われている。中国人が中心になって開発したオープンソースソフトウエアも多い。

信頼性はむしろ高まる ビジネス戦略としてのオープンソース

 「ボランティア、非営利、非商用」という側面に注目が集まりやすいオープンソースだが、実際にはビジネスでオープンソースソフトウエアが利用されるケースは非常に多い。

 その背景にあるのが「信頼性」だ。開発企業がソースコードを独占し、外部の検証を受けていないソフトウエアと、世界中の開発者が参加してバグ報告などを検証しているオープンソースソフトウエアとでは、信頼性の高さがまるで違う。

オープンソースに本腰入れる中国 政府系シンクタンクが白書を発行

 国家ぐるみでオープンソースの推進に力を入れているのが中国だ。2020年10月16日には政府系シンクタンクの中国情報通信研究院が「オープンソースエコシステム白書(開源生態白皮書)」を公表した。

 さらに中国情報通信研究院と同じ工業情報化省の統制下に、オープンソース運動の普及やライセンスの整備などを担うOpen Atom Foundationも設立されている。中国では、政府や金融・製造関連の大企業が中心となってオープンソース開発を推進していこうとしており、日本にとっても参考になるだろう。

「無料だから」ではない、中国で広まるオープンソース開発への理解

 オープンソースに対する中国人開発者たちの意識も急速に成長している。19年当時は「ライセンス代の節約」を理由にオープンソースを使う開発者が大多数だったが、わずか1年後の調査では「オープンソースでソースコードが透明になり、知識がシェアされている」「オープンソースの理念や精神」「(開発者)コミュニティーにひかれて」など、オープンソース開発の特徴に注目する声が増えているという。

PayPayも使う、中国発のオープンソース分散型データベース開発企業

 中国ではアリババ集団、百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント)など大手IT企業によるオープンソース開発が目立っているが、より小規模な企業からも有力なオープンソースソフトウエアが誕生している。

 例えば、中国のスタートアップ企業PingCAPのオープンソースプログラマーはアリババの10分の1以下の規模だが、同社が開発したMySQL互換の分散データベースTiDBは米決済大手スクエアや日本のPayPay、韓国のサムスン電子にも採用されている。

自動運転のティアフォー加藤氏「皆で作ればグーグルに勝る」

 最後に近年日本で開発されたオープンソースソフトウエアについても紹介しておく。15年にオープンソースとして公開された自動運転ソフト「Autoware(オートウエア)」がそれだ。クルマの自動運転に必要なのは認知・判断・操作の3つを自動化するソフトだ。誰でも改造していいし、誰でも使っていいし、誰でも開発に参加できる。

 開発者の加藤真平氏はオープンソース化の理由について「自動運転の分野では米グーグルが圧倒的に先行しているが、世界の人たちみんなで作れば規模でグーグルを上回れる、もっといいものを作れると思った」と語る。

最後に

 誰もが自由に開発に参加できるオープンソースソフトウエアは、高い信頼性と圧倒的な規模となる開発者の存在を背景に世界中へ広まっている。すでに多くの企業が利用する基本ソフトだけでなく、今後は自動運転など新分野でもオープンソースの利用が増えていくはずだ。オープンソースの動向がビジネス界の進歩にどう影響していくか、引き続き見守っていきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。