昨今、様々な領域で注目を集めているVR。ウォルマートやGAFAなど、グローバルな企業が資金を投入している。本記事では、VR活用はいまどの程度活用が進んでいるのか、事例を紹介するとともに、その可能性を考える。

VRの概要

 VRは「Virtual Reality(仮想現実)」の略。実際に存在はしないが、機能としての本質は同じであるような環境のことを指す。近年は、こうした環境を、テクノロジーを活用し、人の五感を含む感覚を刺激することにより作り出すことが可能だ。近年は、医療やオペレーション、エンターテインメントの領域での活用事例が、数多く見られるようになっている。

AI、VR……その先で人間が学ぶべきもの

 技術革新が人々の思考を変えるという点では、『VRは脳をどう変えるか?』(ジェレミー・ベイレンソン著、文藝春秋)は、VRの今後を考える上で重要な本だろう。医療や教育など、VRが今後活用できる領域について言及している。VRは期待されているほどには伸びていないともいわれるが、その潜在的なインパクトは大きい。

AR、VRは全く新しい「職業」を生む

 C Channel社長の森川亮氏も、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの技術革新によって、「新しい職業」が生まれると話す。同氏は、バーチャルが生活の中心になれば、買い物や仕事、遊びもそこで済ませるようになり、それに合わせて、新しい職業も登場すると強調する。例えばeスポーツの選手や、バーチャルYouTuberなどのバーチャルタレントもより一般的になる可能性があるという。その際に焦点になるのは、より発展していくバーチャルの世界で、誰が注目されるのかということだ。森川氏は、障害を持った人たちが恩恵を受けるのではないかと考えている。彼らの多くは「自分はハンディキャップを背負っているから」とどこか引け目を感じてしまい、思うように自己表現できない状態にあるのではないか。バーチャルな仕事が一般的になれば、そういった人たちが存分に自分の力を発揮できるようになるというわけだ。

VRで変わる医療教育

 実際、VR活用は世の中で確実に進んでいる。ニューヨーク大学ランゴーン医療センターでは、わずか数百ドルのVRゴーグルを装着し、目の前の臓器を自由に観察している学生の姿を見ることができる。ここでは、人体の構造や臓器、疾病などをリアルに学ぶため、医療教育にVRやARを積極的に導入している。心臓の3D画像だけでなく、肺や肝臓、腎臓などの様々な臓器、さらに肺がんや肺気腫、肝炎など異変のある臓器も細部まで観察することが可能だ。同センターが医学部生向けにVR/AR教育を導入したのは2017年。医学部の授業内容は数十年でほとんど変わっていないが、技術は急速に進化しているという。

VRやAIなど新技術を使えば未来の工場はこうなる

 医療だけではない、VRは工場の在り方にも変化をもたらすだろう。例えば、工場内の全工程をロボットが自動で担い、モノの運搬も自動運転の搬送ロボットが手掛ける。生産計画を立てるのはAI。自動化が極限まで進んでいるので、リアルの現場で働く人はごくわずかになる──。未来の工場は、こんな感じだろうか。無論、これは空想にすぎない。だが、根拠はある。未来の工場につながる技術開発は、現在も着々と進んでいる。例えば、新日鉄住金ソリューションズ(現・日鉄ソリューションズ)は17年8月から遠隔ロボットの開発に着手し、すでにパワーアシストスーツを装着した人と同じ動きを分身ロボットにさせるところまで完成させている。

ソニー、VRはプレステ登場以来の革新

 2016年10月13日には、プレイステーション VR(以後PS VR)が発売。本誌では、その発売前、開発を手掛けたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のワールドワイド・スタジオ、吉田修平プレジデントに話を聞いた。10年ごろに、開発チームのメンバーが、昼休みや土日を使って、趣味の延長線上で作り始めた、PS VR。その後2011年に「PS4の時代に向けてVRシステムを作ろう」と本格的に動き出したという。また、発売前から開発や医学など、いろんな分野から問い合わせが来ていたのだという。吉田氏はこの状況に関しては、対応できる人間のリソースの数も限られているので、まだ具体的な話はできない、としていた。

のび太の部屋を再現、ドラえもんVRに感激

 2017年には、同年3月4日公開の『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』とのタイアップ企画で、東京スカイツリーの足もとにある商業施設・東京ソラマチに、あのドラえもんの“どこでもドア”が出現した。これは、バンダイナムコエンターテインメントのVRプロジェクト。4月14日まで期間限定で開催された。会場となっている東京ソラマチの3階には、ピンク色のどこでもドアを置いた“のび太の部屋”が2カ所用意されている。ドアはがっしりした作りの本物のドアだ。体験するにはまずHTCのVR用ゴーグル「HTC VIVE」を装着する。これには、VRの世界の中で自分の手が見えるように、手のジェスチャーを検出するセンサーが付け足されている。本稿の筆者は、同イベントをVRコンテンツとして完成度が高く運営もこなれていたと、その印象を述べている。

バンダイナムコのVR施設 レースのスリルに脱帽

 2017年には、同イベントの他にも、VRを活用した様々な施設イベントが見られた。7月14日には、バンダイナムコエンターテインメントが、新宿歌舞伎町にVRアトラクションを中心にしたアミューズメント施設「VR ZONE SHINJUKU」をオープン。VR ZONE SHINJUKUの特徴はまず大規模なこと。VRを使ったアミューズメント施設は各地に登場しているが、それらの中でも最大規模だった。2つめの特徴は、アトラクションの種類が多いこと。ドラゴンボール、マリオカート、新世紀エヴァンゲリオン、機動戦士ガンダムといった人気IP(Intellectual Property、知的財産)を使ったものをそろえていることだ。3つめは、HMD(ヘッドマウントディスプレー)を装着して遊ぶアトラクションだけでなく、プロジェクションマッピングを使って壁を滑り落ちたりクライミングウォールを登ったりと“リアルな体験”ができるアトラクションがあることだ。

ウォルマートが仮想現実(VR)スタートアップを設立

 世界最大規模のグローバル企業、ウォルマートもVRに熱い視線を送っていた。同社のスタートアップ育成部門「Store No.8」は2019年2月14日、VR技術のスタートアップである「Spatial&」を設立したと発表。米ドリームワークス・アニメーションと提携し、映画「How to Train Your Dragon」(邦題「ヒックとドラゴン」)のVR版予告編を、ウォルマートの一部店舗に設けた施設で体験できるようにするという。

フェイスブックのVR、フォードやウォルマートが熱視線

 そして、あのGAFAも本格的にVRに取り組み始めている。フェイスブックが、B to B用途でのVR事業、いわゆる「ビジネスVR」に本腰を入れ始めているという。同社は2014年に米オキュラス(Oculus VR)を買収して以来、ゲームを中心としたエンターテインメント、すなわちB to C用途に向けてHMDを販売してきた。今後はB to B用途の開拓にも力を入れることで、VR業界のエコシステム拡大を図るとしていた。

ウォルマートがVRで管理職試験

 ウォール・ストリート・ジャーナルが7月30日に報じたところによると、ウォルマートもVR技術の活用を本格化。具体的には、管理職への昇格試験に仮想現実(VR)ヘッドセットを用いたテストを実施する予定だったという。

最後に

 ここまで、VRの可能性と活用事例を紹介してきた。VRは現在、国内外の様々な領域で活用されている。医療やオペレーション、エンタメなどがその例として挙げられる。現在、こうしたVRの持つ可能性に、多くの企業が注目している。今後もその動向から目が離せない。

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