「貯蓄から投資」の促進を目指し、2014年に始まった個人投資家のための税制優遇制度「NISA」。開始から2年で1000万口座を突破するなどおおむね好調だが、一方で後発の「つみたてNISA」の利用は伸び悩むなど課題も少なくない。ここでは過去記事の中から、NISAをめぐるトピックスを時系列で振り返る。

個人投資家の注目を集める「NISA」

 NISA(ニーサ)とは、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品(株や投資信託など)の配当金・分配金を非課税とする「個人投資家のための税制優遇制度」だ。英国の個人貯蓄口座(ISA=Individual Savings Account)の日本版という位置づけで、「Nippon Individual Savings Account」の頭文字をとってNISAと呼ばれる。

 NISAを利用するには専用の口座が必要だ(1人あたり1口座のみ)。非課税となるのは最長5年間で、NISA口座には毎年最大120万円、合計600万円を上限とする非課税投資枠が設定され、配当金や分配金への課税(通常は約20%)が免除される。

 NISAがスタートしたのは2014年。他国と比べ突出している日本国民の貯蓄を投資に向かわせることで、経済の活性化を促進する狙いがある。2023年までの10年間という期間限定だが、2016年には未成年向けのジュニアNISA、2018年にはつみたてNISAが相次いで開始され、さらに現行NISAの終了後、2024年からは新NISAがスタートする予定だ。

 NISAには税制上の大きなメリットがある一方で、注意すべき点もある。たとえば1年間の非課税投資枠(購入できる金額)が120万円に限定されるため高額銘柄は購入できず、NISA口座以外の金融商品を非課税枠に移したり、NISA口座の損益を他の口座の損益と合算したりすることも不可能だ。非課税期間は最長5年間で、その後は課税口座へ移管するか売却しなければならない(※ロールオーバーも可能。購入は2023年まで、保有は27年まで)。移管する場合は移管時の金額が新たな購入金額となるため、NISA口座での購入時より値下がりしている銘柄については「損失が出ているのに課税される」ことになるという。ここからはNISAに関する過去記事をたどっていこう。

NISAが問う投信手数料

 NISAの開始を目前にして、証券会社や銀行の顧客争奪戦が加熱している(2013年9月当時)。しかしNISAの主力商品となる投資信託は、高い手数料で利益を上げるビジネスモデルのままだ。信託報酬は10年前(2004年当時)より10%以上上昇し、販売手数料も値上がりが続く。NISAの開始がこうした状況を変えるかどうか期待が集まっている。

NISAが加速する投資信託のデフレ化

 NISAの普及に伴い、信託報酬の下落が続いている。2015年にはインデックス型投信の信託報酬平均が過去最低の約0.3%となり、「ノーロード」(購入時手数料なし)の投信を提供するネット信託も増えているという。

 運用会社同士の値下げ競争が相次いでいる理由には、1つ目に低コストのネット証券が若年層の投資家に受け入れられたこと、2つ目にNISAの非課税枠が引き上げられ「年間120万円」になったこと、3つ目に2015年の相続増税によって資産移転が進んでいることが挙げられる。

NISA、1000万口座突破「フツーの個人」が株主に

 NISAの口座数が1000万を突破した(2016年5月時点)。この背景にはNISAの非課税枠が年間100万円から120万円へと引き上げられた影響が大きいという。同年4月には未成年向けのジュニアNISAもスタートし、未成年株主の増加も予想される。

 こうした状況を受け、これまで機関投資家や富裕層に偏っていた上場企業はもちろん、知名度が低い中堅企業や消費者との接点がないBtoB企業なども、個人投資家獲得に向けたアピールに知恵を絞っている。投信業界も、購入時に手数料がかからない「ノーロード」の導入などで顧客獲得に余念がない。これまで金融教育をタブーとしてきた教育の現場でも投資教育が始まりつつあるという。

積立NISAは「フツー」の投資家を掘り起こせるか

 2017年度税制改正大綱の中に「積立NISA」の創設が盛り込まれた。年間の投資上限は40万円と少額だが非課税期間は20年と長いのが特徴で、長期投資に向いた低コスト投信が中心になるという。

 新しいNISAの登場により、50歳未満の「次世代の個人投資家」のさらなる開拓に期待が集まっている。

iDeCoや積立NISAで「貯蓄から投資」の流れ促す

 「貯蓄から投資へ」とは、1990年代から政府が唱えてきたスローガンだ。その理念が、個人型確定拠出年金iDeCoや2018年に登場する積立NISAによって実現に近づくと期待されている。というのも、これらの制度は長期投資・積み立て投資・分散投資の3要素を満たしており「時間をかけた安定的な資産形成」に向いているからだ。

 金融庁では今後、若い世代の投資家を呼び込むため投資教育の強化に努めるという。具体的には厚生労働省、文部科学省、日銀、日本証券業協会などとの連携により、職場でのセミナーや学校での投資授業などを推進していきたい意向だ。

伸びない「つみたてNISA」、原因は40年前にあった

 つみたてNISAのスタートから1年が経過したが(2019年1月時点)、口座開設数は一般NISAを大きく下回っている。不振の一番の原因として挙げられるのが「低調な株価」だ。投資開始早々に株安となることで、投資へのモチベーションがなかなか上がらないという。また1970~80年代に金融業界が短期売買の投資家のみを重視し、積み立て投資の重要性を周知してこなかったことを原因の1つに挙げる声もある。

最後に

 若年層の個人投資家を増やし「貯蓄から投資へ」の流れを加速するカギとして期待されるNISA。一方でつみたてNISAは口座開設が伸び悩んでいるなど、解決すべき課題は少なくない。

 期間限定の制度だけに、今後目標をどれだけ達成できるか注目が集まる。

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