インターネットを介した売買を指す「eコマース」。日本を代表するオンラインショッピングモール「楽天」やグローバルに広がる「Amazon」などでおなじみだ。一方で規模こそ小さいものの、ニッチなモノやサービスを扱うeコマースも最近は増えている。今回は過去に掲載された記事からeコマースの「これまで」と「これから」をたどっていく。

急速に拡大する「eコマース」とは

 eコマースとは「Electronic Commerce」の略で、電子商取引を意味する言葉だ。それぞれの英単語の頭文字をとってECと呼ばれたり、サービス内容からネット通販と呼ばれたりすることもある。いずれにしても、インターネットを介してモノやサービスを売買するのが特徴だ。

 eコマースと従来の売買には共通点も多い。例えば業界大手の楽天が運営するサービスは巨大なネットモールで、そこに「テナント」として大小さまざまな事業者が入居する。つまり百貨店や商店街のネット版だ。一方、ネットならではの特徴もある。時間と場所に縛られずいつでもどこでも買い物を楽しめること、同じ商品を異なる事業者同士で簡単に比較・検討できること、注文した商品を自宅などに配送してもらえることなどがそうだ。モノやサービスを売りたい個人同士を、それぞれが住む場所に関係なくマッチングできるのも従来の店舗やフリーマーケットなどにはない強みといえる。

 現在、eコマースの分野で絶大な規模を誇るのは「楽天」と「Amazon」だ。「ヤフー」もこれに続く。これに対し、レストラン予約の「ぐるなび」、配車を行う「Uber(ウーバー)」、民泊を仲介する「airbnb(エアビーエヌビー、エアビー)」などニッチ分野に特化したサービスもある。フリマサービスの「メルカリ」は個人間売買(CtoC)で絶大なシェアを持つ。

 さまざまな事業者が参入するeコマースだが、今後はさらに多くの事業者やサービス形態が誕生すると予想されている。

楽天 三木谷浩史・会長兼社長が語る 寡占化の終焉

 1997年に創業した楽天。流通総額は当初の「月間32万円足らず」から「年間1兆7000億円(月平均で約1417億円)」にまで拡大し(2014年時点)、国内のeコマース市場で圧倒的なシェアを誇る。

 eコマース企業の新興勢力の中には、楽天を「百貨店がオンライン化されただけの古いモデル」と呼ぶところもある。しかし同社の三木谷社長は「彼らの存在は同時に、ECの利用者を拡大する。一度ECの利便性を知った人は、必ず楽天市場でも買うようになるはずだ」と余裕だ。

相次ぐ参入、拡大する市場

 eコマースの初期からシェアを伸ばしてきた楽天とAmazonは、いわばeコマースの「既存勢力」だ。Yahoo! ショッピングや、旅行サービスを取り扱うじゃらんなどもこれに含まれる。一方の新興勢力はバラエティー豊かだ。例えばairbnb、Uber、ぐるなびといった「サービスEC系」、家電量販店やネットスーパー、コンビニなどがECサイトを運営する「リアル店舗系」、個人間の売買を仲介するメルカリなどの「CtoC系」がそこに含まれる。

 新興勢力の各社は規模こそ既存勢力に及ばないものの、まったく新しいジャンルで新たなニーズを開拓中だ。EC市場の多様化はこれまでも、そしてこれからも急速に変化し続けていく。

スマホで攻める新勢力 「1人1台」時代の逆転シナリオ

 スマホの発達と連動するように、スマホを活用したeコマースが増えている。メッセンジャーサービスを提供するLINEは、2013年12月に「LINE MALL(ラインモール)」というCtoCサービスをリリースした(2016年5月に廃止)。通販会社のフェリシモと提携して専用の物流拠点を確保し、全国一律料金で配送できるのが強みだ。同じ分野で先行する「メルカリ」は、海外展開を目指すなどさらに先を見据えている。

 その他にも、アプリと連動してリアルタイムに注文を受けながら弁当を届ける「bento.jp」(現「みんなの食堂 shokudou.jp」)、カーシェアリングからモノの運搬へとジャンルを広げる「Uber」も、スマホのGPSで位置情報を取得することで画期的なサービスを実現した。

リアルの逆襲 もうショールーミングは怖くない

 対面で接客できるのが強みのリアル店舗で、あえてeコマースと連動した接客を行うところがある。例えば工具・資材専門店の「DIY FACTORY OSAKA」(2018年9月に営業終了)では店舗で工具などを手に取り、実際に使用してみることができる。しかし購入の段階になると、客に「店よりネットの方が安くて得ですから、ご購入はネットでいかがですか」と勧めるのだ。

 こうしたショッピングスタイルは、リアル店舗の世界では「ショールーミング」と呼ばれて嫌われる。だがこの店舗ではネットとリアル店舗の良さを掛け合わせ、客にとって最高のショッピング体験を提供する。利益の一部は、工具メーカーなどに「展示スペース」を月数万円で貸し出すことで回収している。他にもセブンイレブンは、豊富なリアル店舗網を「宅配インフラ」に活用しようとしている。また独自のポイント制度により、リアル店舗の買い物とeコマースでの買い物を融合しようとする試みもある。

すぐそこの近未来 成長市場に技術の追い風

 先行する楽天やAmazonにない独自サービスとして「出店無料化」に踏み切った「Yahoo! ショッピング」。ヤフーの宮坂学社長(2014年当時)は「ECをやりたい人、誰もがタダで簡単に店を持てるようにする。これは、損得勘定抜きにやりたいんです」と語る。

 そうまでして開拓したいのが、サザエさんの「三河屋モデル」だ。できるだけ地域の商店などと提携し、「物流費ゼロ」の物流を目指すという。

 米Amazonの取り組みはさらに攻めている。現在はAmazon Dash(2019年に廃止)というボタン型デバイスで商品を注文し、ドローンで短時間のうちに配達する仕組みを検証中だ。

 規模はそれほど大きくないが、中国や韓国といった国に日本の通販商品などを発送する「越境EC」に参入する企業もある。

ネスレ日本、人間以外にもEコマース拡大

 コーヒーなどの販売を手掛けるネスレが、「肥満、腎臓疾患、食物アレルギーなどに対応した犬猫用の療法食」のEコマースに参入する。飼い主が自己判断で誤った商品を購入したり、不必要に長く与え続けたりしないよう、登録された獣医師の指導をセットで受けられるのが強みだ。

 Eコマース事業の比率を、現在の17%から2019年末までに20%に引き上げたいという同社(2018年12月当時)。新サービス拡大への期待がかかる。

最後に

 インターネットの発達とともに発展してきたeコマース。現在は楽天、Amazonがシェアの大半を占めるが、ニッチなサービスに特化した新興勢力やスマホなどの先端技術と連動した新サービスの開発により、さらに全体の規模が拡大していくと考えられる。今後10年・20年のうちにどのようなサービスが登場してくるのか、今から楽しみだ。

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