業績の悪化した企業が従業員を一時解雇する「レイオフ」。人件費の節約が狙いで、状況が好転すれば再雇用されるのが一般的だ。主に米国やカナダなどの北米企業で実施されてきた。そして2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によりレイオフを行う企業が増えている。過去の記事を通して、コロナ禍におけるレイオフの実情を紹介する。

新型コロナで広がる「レイオフ」の動き

 「レイオフ」とは、業績悪化などを理由に企業が従業員を一時解雇することをいう。業績が回復するまでの間、人件費を抑制するのが狙いだ。

 レイオフは再雇用が前提となる。これは長年培ってきた労働者の経験やスキル、ノウハウの流出を防ぐためだ。日本では経営不振による整理解雇に対する法的な規制が強いことや、労働者保護という観点からレイオフは実施しにくいが、米国では一般的な手法となっている。

 そのレイオフが、新型コロナの感染拡大を受けてますます増えてきた。製造業界を代表する自動車メーカーなどはもちろん、移動の制限により利用者が激減した航空業界、さらにはシリコンバレーのスタートアップ企業まで、もはや業種に関係なくレイオフが実施されている。

新型コロナで解雇、倒産……蒸発する仕事 雇用の「氷河期」が迫る

 新型コロナの感染拡大のため世界的な外出規制や自粛が続く中、サービス業をはじめとする多くの企業が業績悪化に苦しんでいる。倒産するところも少なくないが、倒産に至らなくても、多くの企業が人員整理に踏み切っている。

 中でも「レイオフ」という手段で人件費を削減しているのが米国企業だ。2020年4月にはレイオフが急拡大し、その中には米国内の日産自動車の工場も含まれていた(約1万人をレイオフ)。その結果、米国の失業率は前月3月の4.4%から14.7%に上昇。1930年代の世界恐慌以降最悪となった。

新型コロナで航空業界が危機に、欧州最大手は支援要請へ

 新型コロナにより深刻な影響を受けている業界の一つが航空業界だ。世界的な移動制限によって利用者が激減した結果、欧州を中心に多くの航空会社が運休に踏み切ることになった。

 例えばドイツのルフトハンザ航空はグループ全体で20年3月の欧州便、7100便を運休した。ノルウェーのLCC(格安航空会社)、ノルウェー・エアシャトルも20年5月末までにおよそ4000便を欠航し、従業員の半数をレイオフするとした。

 だが、03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した後や、08年のリーマン・ショックの後と同じように、中長期的に航空需要はV字回復を果たすという見方もある。

 コロナショックが収束した後に、航空需要がどの程度伸びるかは、新型コロナの感染がいつまで続くかの期間によりそうだ。ウイルスの流行期間が長くなればなるほど移動しない働き方や生活が定着し、構造的に航空需要の伸びが緩慢になる可能性がある。

GAFAが下支えするシリコンバレー、次のユニコーン仕込む

 新型コロナによる経営悪化とレイオフの波は、シリコンバレーにも及んでいる。20年3月より不要不急の外出の禁止や、生活必需品以外を販売する店舗の閉鎖などを行う「Shelter in Place」が始まり、スタートアップ企業の評価額も軒並み下がった。

 ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)だった民泊最大手エアビーアンドビーやライドシェア大手ウーバーテクノロジーズといった人気企業ですら、数千人規模の解雇を発表する状況に陥った。

 その一方で、レイオフによって身軽になったスタートアップ企業を「GAFA」などの巨大IT企業が買い取る動きが活発化した。コロナ禍でも時価総額が上昇したGAFAにとって、勢いのあるスタートアップを取り込むチャンスが生まれている。

ドイツの教訓、欧州は「ワークシェア」で雇用維持狙う

 「コロナ・ショック」の中、「雇用を守る」重要性は変わらないが、新たな施策も必要だ。危機が去った「アフター・コロナ」の世界を見据えた体制づくりだ。それには日本企業の取り組みだけでなく、「ワークシェアリング」で雇用維持とともに、危機が去った後の「反転攻勢」に備える欧州の施策も参考になる。

 中でも、レイオフに頼らず業績を回復するドイツ流の方法が注目されている。それが時短勤務による「ワークシェアリング」と「労働時間貯蓄制度」だ。

 ワークシェアリングは、時短勤務手当として、削減された給与の最大67%をドイツ政府が補填する。さらに雇用主の社会保障費も全額肩代わりするもの。労働時間貯蓄制度は「好況期に残業時間をためておき、不況期には有給休暇として使う」ことができる仕組みだ。

 リーマン・ショックの際、ドイツではこれらの方法で30万~40万人の雇用を維持し、その後の「経済のスタートダッシュ」につなげた。欧州連合(EU)ではドイツの経験と政策をヨーロッパ全体に広げ、コロナ禍を乗り切る考えだ。

最後に

 米国など北米で実施されているレイオフ。完全な解雇とは違い業績回復後に再雇用されることが前提だが、それでも労働者にとっては収入を失うことに変わりはない。新型コロナの感染拡大によってレイオフが進む一方、欧州などではレイオフに頼らない方策にも注目が集まる。こうした動きは、日本企業にとっても決して他人事ではないだろう。

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