2021年初頭から、日本でも人気を集めている音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。本記事では、同サービスの概要と人気の背景を過去のニュースを参考に考察、紹介する。

クラブハウスの概要とその運営企業

 Clubhouseは、米国発の招待制音声SNSだ。開発、運営しているのは、アルファ・エクスプロレーション。元グーグル社員のポール・デビソン氏とローハン・セス氏がClubhouseを開発し、2020年2月に同社を立ち上げた。Clubhouseのサービス開始は2020年4月。ローンチ後、米アップルのテストフライトサイトで、同年5000人限定のサービスとして開始された。Clubhouseは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の初期に人気を博し、2021年2月には日本でも話題となる。コロナ禍で行動制限がかかるなか、周囲と「雑談」する機会が減り、その反動で人気が高まったとの見方がある。

 特徴の1つは招待制であること。招待枠は1ユーザーにつき2枠と決まっており、それ以上招待することができない。一時はこの招待枠を求めて、国内でもフリマアプリで招待枠が1万円ほどで売買されるという現象が見られた。また、ほかのSNSと異なり、Clubhouseにおけるユーザー同士のコミュニケーションには相互性がある点も特徴の1つだ。

Clubhouse、脱・同質化と飢餓感が生んだ急拡散

 そんなClubhouseが話題を集めたのは「入りたくても入れない」というユーザーの飢餓感をあおる戦略があるからだ。Clubhouseは完全招待制のため、流行しているからといっても、誰もが使えるわけではない。招待を受けて登録した後も、新たに招待できる人数は当初は2人のみ。限られた枠を誰に振り向けるかも悩みどころだが、選ばれし人のコミュニティー感がある。現状はアップルのアプリストアでしかClubhouseのアプリをダウンロードできないため、iPhoneユーザーでなければ使えない。世間では話題なのに、使いたくても使えない――。飛びつきたくなる人の心理をうまくついた戦略だ。ツイッターでは、Clubhouseの登録を誇ったり、招待を求めたりするコメントが相次いで書き込まれ、Clubhouseという単語がトレンドワード入りし、そこからまた認知を広げていった。

 招待するには相手の電話番号が必要で、見ず知らずの人を招待しにくい。Clubhouseは基本的には実名での利用を推奨している点もあり、SNSで問題になりがちなノイズが少ないという安心感も利用拡大につながっている。活用すればするほど招待枠が増えるというのも、ユーザーにサービス利用を促す策として優れており、良い呼び水となっている。

 急拡散するもう1つの理由が、同質化しつつあるSNSとは異なる独自路線を持っていることだ。短文投稿のツイッターやネットワークを可視化したフェイスブック、写真を媒介にしたつながりで人気となったインスタグラム。それぞれに特徴があって利用者を増やしてきたが、今、これらのSNSはサービスが同質化しつつある。そんななか、ClubhouseはほかのSNSとは異なる特徴を持っていたのだ。

「Clubhouse」VS政府検閲、中国で使えるのか

 日本だけでなく、世界中で人気が高まっていたClubhouseだが、中国に住んでいる人にとってのポイントは「利用できるか」だ。

 ご存じの読者も多いだろうが、中国当局は2006年に情報統制を目的としたネット監視システム「金盾工程」を本格稼働させた。万里の長城(ザ・グレート・ウオール・オブ・チャイナ)になぞらえて「グレート・ファイアウオール(GFW)」などと呼ばれる。「YouTube」や「Facebook」「Twitter」「Google」「Dropbox」「LINE」などは軒並み中国国内からのアクセスが遮断されており、こうしたサービスに慣れ親しんだ外国人にとって不便なことこの上ない。中国政府は海外のネットサービスの遮断理由について「中国の法律による」とするだけで、対象サービスや理由などは明らかにしていない。ビデオ会議サービス「Zoom」も一時遮断され、多くの企業関係者が悲鳴を上げていた。

 そこで中国・上海からClubhouseを利用できるか試してみた。その結果、2021年2月2日の時点では、特に問題なく同サービスを利用することができた。

Clubhouseが早くも中国で使用不能に、巻き込まれたミッキーマウス

 2021年2月8日夜には、中国本土でClubhouseの利用ができなくなったという報告が相次ぐ。上海市からアクセスできなくなったことが確認され、中国版ツイッターと呼ばれる「微博(ウェイボ)」でも各地のユーザーから利用できなくなったとの書き込みが数多く見られたのだ。

 これは、Clubhouseが中国政府のネット監視システム「金盾工程」の対象となり、ネット接続が遮断された可能性が高い。こうした書き方しかできないのは、どのアプリへのアクセスを遮断しているかを中国当局が明らかにすることは基本的にないからだ。ただ、中国国内でも、金盾によるブロックではないかと指摘する複数の記事がネット上に掲載されている。

中国の「Clubhouse」パクリサービス、誕生即終了の驚き

 中国でClubhouseが利用できなくなったという報告が相次いだのち、2021年2月18日には、SNS「微信(ウィーチャット)」で動作するミニプログラムに「Clubhorse」なるサービスが登場。中国国内の報道によれば、初日だけで30万人が登録したという。

 このClubhorseは、「Clubhouse」そっくりだという。本家と一文字違いの名前に嫌な予感を覚えつつアクセスすると、アイコンは脱力系の馬のイラスト。米国の大人向け人気アニメ「ボージャック・ホースマン」の主人公そのものだという。きちんと権利処理をしているのかが気になりつつ、とりあえず登録手順を進めていくと果たしてClubhouseそっくりの画面が現れた。

 ウィーチャットのミニプログラムとして動いているということは、運営企業である騰訊控股(テンセント)の審査を通ったことを意味している。だが、見れば見るほど「これはさすがにまずいだろう」という感想しか浮かんでこない。何せ、インターフェースから画面デザインまで、ほぼすべて本家Clubhouseのコピーなのだ。

Clubhouseは「団体戦」、勢い持続には面白いルームの「見える化」が鍵か

 日本でも、2021年2月3週目に入り、Clubhouse第1期とも言える狂騒は過ぎ、「勢いは継続するのか」「Clubhouseをきっかけに音声コンテンツ産業の成長は加速するのか」といった点に関心は移り始めている。そこで2016年に「声のブログ」ともいわれる日本発の音声メディア「Voicy」を立ち上げ、既にClubhouseで6万人超のフォロワーを獲得した、緒方憲太郎最高経営責任者(CEO)にClubhouseが音声産業に与えた衝撃と、今後の発展の鍵を聞いた。

 同氏はClubhouseが従来のSNSと異なる点について、従来のSNSが発信者1人の個人戦だとすると、Clubhouseは団体戦のイメージだと述べる。個人戦では、自らのチャネルをコンテンツで埋める制作能力が重要だ。しかし団体戦では、コミュニケーション力が求められる。瞬発力や、切り返しの速さなどアウトプットにかかるスピードが重要になってくるのだ。周到に話題を準備してルームを立ち上げても、ほかのスピーカーとの話の流れによってはイレギュラーバウンドが起こり、それらに対応していく力が求められる。Clubhouseにはこうした傾向が見られるという。「忙しく人生を生きている人ほど面白いアウトプットができるSNSだなと感じている」と、緒方氏は述べる。

最後に

 ここまで、Clubhouseの概要と、昨今世界中で見られている人気ぶりについて、過去のニュースを参考に紹介してきた。アメリカ企業のアルファ・エクスプロレーションが運営する同サービスは、2020年にサービスを開始。コロナ禍の影響で、ここ日本でも爆発的に人気を集めた。一方、中国では現在利用が不可能になるなど、はやくも規制の対象となっており、同サービスのマネタイズについても含め、今後の動向が注目されている。

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