国内最大級のマッチングアプリ、ペアーズ。同サービスを運営しているのが、2008年創業のエウレカだ。本記事では、そのエウレカの概要とペアーズの昨今の動向を探りつつ、恋活・婚活がどう変化しているかを探る。

エウレカの概要・沿革

 エウレカ(東京・港)は、2008年11月に設立された企業。2012年10月にローンチされたオンラインデーティングサービス「Pairs」を開発・運営している。同サービスの国内における会員は1000万人を突破し、最大級のサービスとなっている。2015年5月には、NASDAQに上場する世界的インターネット企業で、VimeoやTinderを運営する米マッチグループに買収された。

 コロナ禍でリアルな出会いの機会が失われる中、マッチングアプリ市場は拡大している。以下では、同社が運営するペアーズの昨今の動向を探りつつ、恋活・婚活がどう変化しているかを探る。

相談所に入会相談2割増、お見合い後交際率3割増 コロナ婚活の今

 2020年4月、エウレカは、コロナ禍で直接的な出会いが難しくなる中で、ペアーズに新しい機能を追加した。アプリ内でビデオ通話が可能な「ビデオデート」機能だ。ユーザーは、3往復以上のメッセージのやり取りをすると、このビデオ機能が使用できるようになる。20年後半からの導入を予定していたが、前倒ししたという。「オンライン上であれば、直接会う前の段階で会話が盛り上がるかどうか気軽に確認できる」(同社広報)とみている。

 一方、在宅勤務により自宅で過ごす時間が増えることなどに起因する「コロナ離婚」への懸念も高まっている。民泊施設やホテルなどの約800部屋を運営するカソク(東京・新宿)などは、同年4月3日から「コロナ離婚」防止のため、部屋の一時提供を開始。主にインバウンド客らが宿泊していた部屋の利用が減少していることから、こうした部屋を通常より2~3割安く提供した。

週末だけで3人とデート 恋活・婚活もDXで生産性向上

 ペアーズをはじめとするマッチングアプリによって、恋活・婚活の生産性が向上していると見ることもできる。実際にマッチングアプリで結婚するカップルもいる。下記の記事で取り上げた高木由紀(仮名)さんは、1度目は破局を味わったものの、次の出会いでは結婚。1度目と同じように50人程度とマッチングし、3~4人と会う選考を繰り返した。1回の週末で一気に3人と会う時もあったという。

 出会いから1カ月後に交際を始め、この男性と意気投合。半年後に婚約し、結婚までとんとん拍子で進んでいった。「ただ合コンに行って3人と会うのと、アプリ上で条件を絞った3人に会うのでは効率が違う」と言う高木さん。リアルの場が中心だった出会いの仕組みが形を変え、オンラインが選択肢として当たり前になりつつあるのだ。

 また、「地方の工場や研究所で働く若手にとってアプリは救世主。アプリで知り合って結婚した同期が2人、付き合った人ならもっといる」と話すのは、栃木県でメーカーの研究職として働く20代男性の真島直樹さん(仮名)だ。男性が多い職場で、社員は全国から集まってくるため地元の人間は数えるほど。そのため飲み会や合コンの誘いも少なく、ほとんどが寮暮らしで、普段の生活で出会いはないに等しいという。

王者Tinderだけじゃない 日本で進化するマッチングアプリ

 ただ、盛り上がる半面、当然プレーヤーも多いのがマッチングアプリ市場だ。代表的なのは、2012年にスタートしたTinder。2020年には190カ国に5700万人のユーザーを抱える最大手となった。ティンダーを運営するマッチグループの20年第2四半期の収益報告書によると、新型コロナウイルスの影響でアプリの新規登録ユーザーは2020年3月から4月にかけて減少傾向だったが、人々が自粛生活に慣れ始めた5月頃から一転。出会いを求める人々がリアルからオンラインに流れ込み、7月の新規登録ユーザー数は2月末と比べ約15%増加した。

 また、マッチグループは各国のマッチングアプリを次々と買収中で、エウレカも、2015年に同社の傘下に加わっている。とはいえ、ペアーズはTinderと異なる方向を目指している。マッチングアプリ上では自身の写真や身長、性格、仕事、趣味、自己紹介文などを入力してプロフィルを作成するのが一般的。こうした形式はどのアプリでも変わらないが、ペアーズでは「スターウォーズが好き」「オーロラを見に行きたい」「寝るのが幸せ」など、ユーザーが独自に作成・参加するコミュニティー機能があり、自分の価値観を表示させる仕組みに力を入れている。

「相性80%」はどう決まる? 出会い支えるアプリの裏側

 このように「世界標準」のサービスが上陸しながらも、真剣な交際を目指す「Omiai(オミアイ)」から気軽なデートに使える「Dine(ダイン)」まで、幅広いモデルが生まれている国内のマッチングアプリ。その裏側で各社がしのぎを削るのが、サービスの基本となる「最適なパートナーとの効率的な出会い」だ。ただそこには、技術的なカベが立ちはだかっている。エウレカの奥村純・執行役員データディレクターも「一人からたどれるデータが少ない。マッチングアプリのアルゴリズムには他にない難しさがある」と述べる。

 マッチングアプリが利用者に最適な相手をレコメンド(推薦)する際は、年齢や仕事、趣味や休日が合うかどうかなどの基本的な情報に加え、アプリにログインする時間帯やアプリ内に滞在している時間、プロフィルの文章がある程度の分量まで書かれているか、といったさまざまなデータで判断している。こうした点を踏まえて「相性60%」「相性90%」などとはじき出すという。しかし事はそう簡単ではない。「相性が50%でもお互いに『いいね!』を押してマッチングするケースもあり、完全に人工知能(AI)だけのマッチングは難しい」という。

「出会いは基本アプリ」が課題解決に 「ペアーズ」のCEOに聞く

 日経ビジネスでは、エウレカのCEO(最高経営責任者)である石橋準也氏への単独インタビュー記事も掲載している。かつては「出会い系」のような怪しいイメージがあったネット上での出会いが、マッチングアプリを通じて世の中に認められるようになった理由について聞くと、「日本より先に流行していた米国でも、当初マッチングアプリはネガティブに捉えられていた」と明かす。しかし石橋氏は「アプリを運営する側としてうれしい、楽しいと思うのは、恋人が見つかった利用者が生まれた瞬間だ。この熱量はいわゆる『出会い系』とは全然違う」とも述べている。

 ただ、熱量の高いメンバーがいたとはいえ、当初は必ずしも強い運営体制ではなかったという。「今は起きないが、例えばピークの時間帯にアクセスができなかったり、押した『いいね!』が反映されなかったりするなど、システムに脆弱なところもあった」。

 最終的に、どれくらいの人が出会い、恋人になるかを重要視していると述べる石橋氏だが、「アプリが安全であることが、最も重要だ」という。その環境が整ったことが、マッチングアプリが「出会い系」からトランスフォーメーションした理由なのだ。

最後に

 ここまで、エウレカとペアーズの昨今の動向と、恋活・婚活がどう変化しているかを探ってきた。エウレカが運営するペアーズは、国内最大級のマッチングアプリとして、勢力を拡大している。実際、ペアーズをはじめとするマッチングアプリを介して結婚まで至るカップルも増えており、昨今の恋活・婚活事情が変化していることがうかがえる。今後もマッチングアプリ市場とペアーズ、そしてエウレカの動向から目が離せない。

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