国内最大級の規模を誇るテクノロジー企業、Zホールディングス。同社はここ数年で、LINEとの経営統合をはじめ、様々な外部企業との取り組みを進めている。本記事では、その詳細と、Zホールディングスの概要や沿革を、過去のニュースを参考に紹介していく。

Zホールディングスの概要、沿革

 Zホールディングスは、ソフトバンクグループ傘下の、日本最大級のテクノロジー企業、持ち株会社だ。同社はもともと1996年1月に、Yahoo! JAPAN事業を持つヤフーとして設立された。2019年のグループ再編に伴い、同年10月1日をもって、会社分割により持ち株会社に移行し、法人名を改めた。さらに同年年11月18日にはLINEとの経営統合で同意。2021年3月1日には、株式交換によりLINEを完全子会社化した。現在、日本でも外資プラットフォーマーであるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の存在感が非常に高まっており、LINEとの統合は、これに対抗するためだという。

ヤフー、LINE統合に立ちはだかる独禁法の壁

 Zホールディングス(以下、ZHD)は2019年11月13日、LINEとの経営統合を視野に入れて協議をしていることを認めた。対話アプリで国内約8000万人のユーザーを抱えるLINEと、約5000万人の利用者を抱えるヤフーの統合が実現すれば、巨大プラットフォーマーが誕生することになる。周囲からの期待は、大いに高まっていた。ZHDは同年9月にも、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの買収を発表、11月14日にはTOB(株式公開買い付け)の成立を公表するなど、ソフトバンクグループ系列企業は国内ネット市場を着実に押さえつつあった。大和証券の石原太郎氏は「統合の方向性とスキームが見えない限り、全体のシナジーの算出は困難」としつつも、「ペイメント事業の投資抑制につながる」点を評価する。

 キャッシュレス市場の競争激化で、各社は顧客の囲い込みに向けて投資を拡大していた。そんな中、LINEは足元の業績が悪化。2019年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が339億円の赤字となり、前年同期の60億円の赤字から損失が拡大していた。2019年12月期の最終損益の市場予想平均値(QUICKコンセンサス)は383億円の赤字。2期連続の赤字が確実視されていた。その主因は、キャッシュレス決済の「LINE Pay」や「LINE証券」などの金融事業の先行投資がかさんだことにある。

 一方のZHDも、2019年4~9月期に「PayPay」の利用促進に向けたキャンペーンなどで持ち分法投資損失109億円を計上するなど、投資が業績下押し要因となっていた。ZHDとLINEが経営統合してペイメント事業も一緒になれば、投資額も減少して業績改善に期待できるというわけだ。

LINE、ソフトバンク傘下入りで挑むアジア・スーパーアプリ競争

 また、2社の統合について、あるLINE幹部は「我々の相手は中国の騰訊控股(テンセント)やGAFAなど世界の巨人。だが今の規模では戦えない。だから手を組める相手を探していた。グローバルで存在感のある国内企業というと、相手はソフトバンクさんくらいしか見当たらなかった」と話す。幹部によれば具体的な話し合いが始まったのは2019年6月頃のことという。

 「我々とソフトバンクとは補完的な関係にある」とも幹部は話す。ZHDの親会社であるソフトバンクグループは国内に強い営業力を持ち、ヤフーをはじめとする様々なコンテンツを抱えるが、開発力には課題があったという。一方でLINEは充実した開発陣を抱えるが、営業力には課題を持つ。両社の強みを合わせれば、デジタル決済分野などで強いプレーヤーになれると見たのだ。当面は国内事業で相乗効果を発揮させていく算段だが、その先には「もちろん海外での積極展開が控えている」という。

LINEと統合のZHD、株価10%安への応え方

 しかし、2019年11月19日の東京株式市場で、検索サービス「ヤフー」を展開するZHDの株価が一時、前日比10%安と大幅に下落した。前日にLINEとの経営統合を発表し、「米中の巨大プラットフォーマーに続く第三極になりたい」とZHDの川邊健太郎社長CEOが抱負を語ったにもかかわらずだ。

 株価下落の理由は大きく2つあった。11月18日のLINEとの経営統合の発表で判明した株式の希薄化と、見えにくい統合後のシナジーだ。LINEとの統合に当たって、ZHDは新株を28億株発行する。現状の発行済み株式数は48億株で大幅に増加するため、6割近いダイリューション(1株利益の希薄化)が起きるのを嫌気した形だ。発表の記者会見は2時間に及んだが、シナジー効果が出るタイミングなどは明示されなかったため、不安視する投資家の売りも膨らんだのだ。

「対GAFA」という概念の危険性

 そして2021年3月1日、ZHDとLINEの経営統合が完了。「対GAFA」を掲げ、ZHDは新たなスタートを切る。国内でも類を見ない巨大プレーヤーを経営陣がどのようにかじ取りしていくのか、高い関心が寄せられていた。

 しかし、「対GAFAという旗印で寡占化が進み、国内の新規参入やイノベーションを阻害してしまっては元も子もない」と語るのは公正取引委員会への出向経験を持つ東京八丁堀法律事務所の野田学弁護士だ。では、当のGAFA側はどう考えているのか。匿名を条件として取材に答えたある担当者は「対GAFAという言葉が生み出す空気感によって、事実に基づいていないプロセスで政策が決まっている」と警鐘を鳴らす。「定番の決まり文句となっており、ここから規制についての議論が始まるケースが多い。官僚にとって実に楽な政策プロセスだろう」と実情を明かす。

ヤフーとLINEの経営が統合、なるか「ユーザーにとって意味ある統合」

 また、経営統合が完了した2021年3月1日、都内で開いた会見で、ヤフーの川邊社長CEOとLINEの出澤剛社長は「ユーザーにとって意味ある統合にしなければならない」と何度も強調した。2023年度に売上高に当たる売上収益を2兆円、営業利益は過去最高の2250億円を目指す。20年度の両社業績(見通し)の合計は売上高が1兆4000億円弱、営業利益は1700億円程度とみられていた。3年で売り上げを4割強引き上げるという、アグレッシブな計画だった。

 しかし、ソフトバンクグループの傘の下、多層構造の中に上場企業が多く存在する複雑さは、利用者や投資家にとっても分かりづらい部分がある。経営の意思決定はそれぞれ独立しているとはいえ、グループ全体での方向性やそれに向けた調整などは必要になってくるだろう。ユーザーにとって意味ある統合になるか――。2人のトップが強調した目標達成のハードルは高い。

ヤフー、ヤマトと連携で挑むアマゾン・楽天超え

 LINEだけではない。ZHDは2020年3月24日には、ヤマトホールディングス(HD)と物流分野で提携すると発表している。記者会見の冒頭、ZHDの川邊社長CEOは、EC(電子商取引)事業拡大への意欲を見せつけた。目指すはECの巨人である「アマゾン」と「楽天」超えだ。

 マーケットプレイスへの出店数は、楽天市場の5万に対してヤフーショッピングは7.5万と数では上回る。ヤフーは2013年に出店料とロイヤルティーを無料化したことで出店数は勝っている。ただ、ECでの流通総額では後じんを拝している。各社が同一の基準で流通総額を公表していないため単純な比較は難しいが、業界では国内ECの流通総額はアマゾンと楽天に続き、ヤフーは3番手という位置付けだ。この提携は、ヤマトHDが持つ全国の物流拠点やネットワークを、ZHDグループが手掛ける「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」などのECプラットフォームに出店するストア向けにオープン化し、専用の新物流サービスを同年6月30日から始めるというものだった。

最後に

 ここまで、ZHDの概要、およびLINE、ヤマトHDといった外部企業との経営統合や提携について、過去のニュースを参考に紹介してきた。同社の経営統合や提携の狙いの1つは、国内で存在感を高め続けている、GAFAへの対抗措置だ。確かに、ポータルサイトのYahoo! JAPANやZOZO、そしてスマートフォンアプリのLINEなどのユーザー数を合わせると、その数は膨大になる。しかし一方、「対GAFA」にこだわりすぎることへの懸念が、一部でささやかれているのも事実だ。今後のZHDの展開から目が離せない。

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