世界最大級の消費財メーカーで、多数の有名ブランドを持つP&G。同社は多くの著名マーケターを輩出していることでも知られている。本稿では同社の概要や沿革、そしてP&Gが輩出してきた国内のマーケターを紹介する。

P&Gの概要、沿革

 プロクター・アンド・ギャンブル(以下、P&G)は、米国オハイオ州に本拠を置く世界最大級の一般消費財メーカー。創業は1837年で、ホームケア製品、紙製品、ヘアケア製品、ヘルスケア製品など多数の事業を保有しており、P&Gジャパンをはじめ、世界180カ国以上で事業を展開している。また、同社はマーケティングに力を入れていることでも知られている。特に、マーケター主導でビジネスを推進するブランドマネジメント制度は、ブランディングが重要とされる消費財分野では、効果的だとされている。

リーダーの姿勢次第で「結果」は一変する

 そんなP&G米国本社で、2016年当時プレジデント兼アドバイザーを務めていたのが、桐山一憲氏だ。2015年11月に、P&Gアジア統括責任者から異動し、CEO(最高経営責任者)直轄でアジアの人材育成に取り組んできた。本記事では、グローバルに活躍するリーダーが取るべきビヘイビアーをまとめた「グローバルリーダーのABC」のAについて、同氏が解説している。Cは「Commitment」、Bは「Belief」、Aは「Attitude」だという。その意図を桐山氏は以下のように述べる。

 「成功した体験というのは大事だし、それがあるのはいいことですが、その成功体験を勝ちパターンとして固定してしまえば、市場や消費者が変化する中で勝つことはできません。常に新しい気持ちで取り組む姿勢を持つことが大切です」

「器の大きい」リーダーになるべし

 桐山氏は、他にもリーダー論を語っている。同氏は常々、リーダーには器の大きさ、度量の広さが必要だと、周囲に説いているという。だがそういう話をすると、「器や度量というのは後天的に開発できるのか」と聞く人がいる。桐山氏は、もちろん、持って生まれた気質というのは多少あるかもしれないとしつつ、それは「与えられた環境の中で努力し、成長していくうちに大きくしていけるものだ」と述べる。「生まれてから最初の十数年は家族の影響が大きいかもしれませんが、その後は本人の努力だと思います」。

「消費者がボス」深く掘る デビッド・テイラー氏[プロクター・アンド・ギャンブルCEO]

 また、2016年にP&Gの最高経営責任者(CEO)を務めていたデビッド・テイラー氏に対しても、弊誌はインタビューを実施している。当時P&Gは、長らく業績が伸び悩んでいた。そんなときに就任したのがテイラー氏だった。インタビュー冒頭、テイラー氏は「今までの会社の歴史の中でも最も大きな変革の時期を迎えている」と述べる。また、当時の決算は、目標とする最終地点には到達できていないものの、意味のある前進を遂げられたと同氏は付け加えた。製品ラインアップ、サプライチェーン、企業の組織文化も、その後の成長に向けて大きく変換を遂げた年だったという。

おむつメーカーが「小さき市場」に投資するワケ

 2017年3月には、出生時の体重が800グラム以下の乳幼児向けのおむつを発表した。これは、産院や病院向けのみに販売される商品で、もともと提供していた3000グラム以下、2200グラム以下、1500グラム以下、といった商品ラインアップに、新たにより小さいサイズを加えた。既存商品についても、さわり心地やサイズを改良して、同年4月末から順次発売をするとしていた。

 一方、おむつ大手のユニ・チャームも2014年から同様の低出生体重児用のおむつを産病院向けに発売し、2015年からは一般発売もしていた。ユニ・チャームの場合は、1000グラム以下、1000~1500グラム、1500~3000グラムと3種類だ。このように、大手消費財メーカーがおむつ市場に投資していた理由は、海外市場を見据えてのことだ。国内では少子高齢化が進むが、世界に目を向ければまだおむつ市場は大きくなる余力を残す市場とされていた。

マーケティングの神髄は、P&Gが教えてくれた

 P&Gは、人材輩出企業としても知られている。実際、同社の第一線で活躍したマーケティングのプロフェッショナルたちは、存在感を発揮し続けている。今回、そうしたP&G出身のプロフェッショナル3人が、マーケティング論を鼎談(ていだん)した。その1人が、1990年にP&Gに入社し、17年在籍した西口一希氏。P&Gを離れてからはロート製薬でマーケティングの責任者、ロクシタンジャポンの代表、スマートニュース執行役員などを務めた人物だ。

 2人目が西口氏の2年後にP&Gに入社した音部大輔氏。P&Gでは、除菌をキーワードにし始めた頃の「アリエール」や、「ファブリーズ」などを担当した。同氏は「マーケティングが市場創造できるようになれば、世の中のためになる価値をつくることができる。それがP&Gで得た信念だ」と述べる。そして3人目が、西口氏と同期入社の石谷桂子氏だ。26年間P&Gに在籍し、2016年にUCC上島珈琲常務取締役となった。

USJ再建の森岡氏が指摘するマーケターの悪癖

 この3人だけではない。当時、業績不振に陥っていたユニバーサル・スタジオ・ジャパンを、マーケティング・ノウハウだけではなく、それを実行し、持続成長できる組織に変革することで、V字回復に導いた森岡毅氏もP&G出身だ。現在は、コンサルタント会社「刀」のCEOとして、各分野の企業の再建に関わっている。「組織の形は、企業の目的と経営資源によって正解が定まる」と述べる。「どの課題にも対応できる組織」というような普遍的な「形」はないと、同氏は考えているという。

[議論]森岡毅「”恩情役員”廃し、決断できる会社に」

 また森岡氏は、日本企業が今後躍進するためには何が必要か、弊誌のインタビューに答えている。同氏はまず、日本企業における役員の多さを問題視する。こうした状況では、迅速な経営判断などまずできないだろう。まして、多くの社員を抱える大企業ならなおさらだ。こうした背景には、サラリーマンの理屈、つまり「恩情」で物事を考える日本企業の姿勢があるという。

あなたのイノベーション活動は生きているか?

 BIOTOPE代表の佐宗邦威氏も、P&G出身だ。企業のミッションやビジョンのデザインなどを得意としているが、昨今の日本におけるイノベーションブームに対し、疑問符を突き付ける。「今までのやり方を踏襲していても、未来はないような気がする」と同氏は本稿の冒頭で述べる。本当に重要なのは、根本的に新たなモデルを構築することだ、というのが佐宗氏の主張だ。

最後に

 ここまで、P&Gの概要や沿革と同社出身のマーケターについて紹介してきた。今でも、西口氏や音部氏、そして石谷氏や森岡氏は、マーケターとして日本企業をエンパワーメントしている。今後も、P&Gマインドを持ったマーケターが次々と輩出されていくだろう。その動向から目が離せない。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。