経営戦略は、事業戦略や全社戦略など、複数の概念の総称とされることが多い。本記事では、その経営戦略とは何か、そして日本企業の経営戦略について、課題や今後のあるべき姿を考察する。

経営戦略とは?

 経営戦略は、事業戦略や全社戦略など、複数の概念の総称とされることが多い。使用される文脈によってその意味は異なるため、注意が必要な言葉だ。英語で経営戦略という場合は、「management strategy」が対応されることが多く、これはもともと軍隊用語として生まれたものとする説もある。実際、ビジネスやマーケティング用語の多くは、軍隊用語に起源を持つものが多い。

戦略対談「激変にも強いリーダーは何が違うのか?」

 コロナ禍においても、経営者やビジネスパーソンは、日々重要な決断を行い、最適な経営戦略の構築を迫られている。一橋ビジネススクール教授で『ストーリーとしての経営戦略』などの著書がある楠木建氏と、経営コンサルタントで、このほど書籍『迷えるリーダーがいますぐ持つべき1枚の未来地図』を出版した横田伊佐男氏が、激変の時代を乗り切る経営者の習慣、さらに戦略思考を磨く方法などを巡って語り合った。

戦略対談2「経営戦略の決断は結婚に似ている」

 戦略対談2では、スタッフを巻き込むための戦略のストーリー化の話から、経営戦略の決断は、結婚相手選びに近い、という方向に広がっていく。楠木氏は、経営で戦略的な決断を行うことは、結婚に近いと思うと語る。結婚同様、なるべく多くのオプションを並べて、一番評価の高い人と結ばれても、幸せになれるとは限らない。場合によっては、事前正解主義に陥ってしまうというのが同氏の主張だ。というのも、そのような方法で結婚したとしても、その時点で、すでに自分の問題は解決されていると思っているので、結婚後の生活の努力などに対して、モチベーションが下がってしまうのだ。コロナ禍のように、流動化が進んだ現代社会では、予想の範囲を超えた事態が往々にして起こる。事前に正解を知って、リスクヘッジするという考え方よりも、自らが「腹をくくる」という決断をするためには何が必要か、といった考え方が経営者には求められる。

[解説]リモートワークが問う経営戦略と面白がる力

 また、社外人材による1on1(1対1での面談)サービスを提供しているエール(東京・品川)の取締役の篠田真貴子氏は、昨今のリモートワークの広がりは、企業の経営戦略を問う良い機会であると述べる。物事を変えるにはコストも労力もかかるし、「変化は嫌だ」という声も出てくるだろう。経営戦略としては、デメリットを上回るメリットがあれば変えようとなるし、メリットがなければやらないということになるのは当然だ。リモートワークを取り入れることが絶対的にいいというわけではない。しかし、もしそういう意図が明確になくて、何となく面倒くさいというような理由で「何となく元に戻ってしまう」という状況はよくないと、同氏は述べる。

楠木建教授「『日本企業』と呼ぶのはもうやめよう」

 しかし、篠田氏が述べるような、実際は何となくの経営戦略で、コロナ禍前の働き方に回帰しようとしている日本企業も少なくない。新型コロナウイルスの猛威は、日本企業が抱える経営戦略上の様々な課題や欠陥を明らかにしたといえる。では、どうすればよいのか。前出した楠木氏はまず、「日本企業」という表現を、我々は使うべきではないと主張する。

 というのも、そもそもかつて一瞬たりとも、「日本企業」というものが存在したことはないと同氏は述べる。それなのに経営者たちは、なぜか日本企業という集合名詞で語ろうとする。今回はそれをやめるいい機会だというのだ。実際、ドイツ人でドイツ企業の競争戦略などと言っている人はいない。ボッシュやコンチネンタルなど個別の会社があるだけだ。また、楠木氏の韓国人の友人は、韓国的経営なんてないと言っていたとという。我々は、「日本企業的経営」という幻影に理想を投影して、追いかけ続けるのをやめるべきなのかもしれない。

中期経営計画という病が企業をダメにする

 また、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏も興味深い見解を述べている。それは、日本企業には、「中計(中期経営計画)病」なるものが広まっているというのだ。「どうもこの中計にとらわれていることこそが、日本企業の問題の一つなのではないか」というのが、同氏の問題意識なのだ。実際、企業の現場で中計策定に携わっている人の中には、中計を「作る」だけで疲弊しきってしまうところもあるという。入山氏は、現場を疲弊させてまで中計を作る意味があるのだろうかと疑問を呈する。計画を策定することばかりに労力を費やし、実行するための余力がなくなってしまう--これでは、日本企業のイノベーションも進まなくなってしまう。日本企業はこの点に関して、コロナ禍を機に考え直し新たな経営戦略のあり方を模索すべきだろう。

イノベーションは辺境で生まれる

 そもそも、日本企業がイノベーションを起こすためには、どのような経営戦略が必要なのか。以下の記事では、戦略コンサルタントとして活躍し『経営戦略全史』の著者として知られる三谷宏治氏、そして『孫子』をはじめとした中国古典や渋沢栄一など歴史上の人物の知恵を現代に生かす研究家の守屋淳氏が、縦横無尽に世界の歴史や企業経営に斬り込み、現代日本の課題解決につながるヒントを探り、語り合う。三谷氏は記事冒頭、「イノベーションは辺境で生まれる」と主張。その例として同氏は、ホームセンターや家電量販店を挙げる。このふたつは、大都会である東京で生まれたものではないという。辺境に目を向けることも、新たな経営戦略のあり方のひとつだろう。

意思決定力は小さな組織で鍛えよう

 また、ふたりは現在の日本の大手企業主義にもメスを入れる。ふたりの主張は、小さな組織や企業で、意思決定力を養うことだ。実際小さな企業では、大企業のような細かい役割分担やサポートがないので、何でも自分で決めざるをえない。実際、就職支援サイトGoodfindの調査によれば、最近の新興成長企業100社の起業家100人のうち、最初の就職先(ファーストキャリア)が大企業だった人は32%にすぎないという。それも、2000年以降に学校を卒業した76名で見れば、わずか21%。47%が中小・ベンチャー出身、24%が学生起業、8%がコンサルティング会社出身だった。圧倒的に小企業でキャリアをスタートさせた人が多いのだという。

海外展開が難しいのは、世界が凸凹だから

 さらにふたりは、日本企業の海外展開が、いま難しくなっているという現状を歴史的にひもといている。いうまでもなく、かつて日本製品は非常に信用度が高かった。しかし実は、それは一時期だけで、基本的に信用度は乱高下するものなのだという。そしていま、日本企業の製品に対する世界からの信頼は低下傾向にあるという。日本企業はこうした現状を把握した上で、最適な経営戦略を構築する必要があるだろう。

最後に

 ここまで、日本企業を中心に経営戦略に関する課題を、過去のニュースを参考に紹介・考察してきた。先述したように、現在、コロナ禍で多くの日本企業の経営戦略が見直しを迫られている。アフターコロナの世界で、日本企業の経営戦略がどう変化していくのか、今後も注視する必要がありそうだ。

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