感染症の世界的な流行、多くの感染者を発生させる流行を指す「パンデミック」。今、新型コロナウイルスのパンデミックが世界の政治・経済に深刻な影響を与えている。コロナ禍はいまだ収束していないが、今回の記事では新型コロナのパンデミック発生から現在までのトピックを過去の記事から紹介していく。

歴史の中で繰り返されてきた「パンデミック」

 新型コロナの世界的な流行をきっかけに、日常的に耳にするようになった「パンデミック」という言葉。もともとは「地理的に広い範囲の世界的流行」と「非常に多くの数の感染者や患者を発生させる流行」を指しており、新型コロナに限らず新型インフルエンザやエイズ(AIDS)にも使われている。(国立感染症研究所 感染症情報センターのWebサイトより

 新型コロナウイルスのパンデミックは、2020年3月11日に「公式に」確認された。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がこの日の会見の中で「パンデミックといえる状態であるとの認識に至った」と説明したためだ。しかしそれ以前から中国やヨーロッパの一部で「爆発的」とも表現される感染拡大が続いていたため、実際のパンデミックはもっと以前から発生したと考える人も多い。

 もっとも、人類がパンデミックを経験するのはそれほど珍しいことではない。2009年に発生した新型インフルエンザは、214の国と地域で18097人以上の死亡者を出した。さらに1968年の香港風邪(100万人以上が死亡)、1957年のアジア風邪(200万人以上が死亡)、1918年のスペイン風邪(4000万人以上が死亡)など、現在の新型コロナに匹敵するか、あるいはそれをはるかに上回るパンデミックは周期的に発生している。中世のペストや天然痘なども、数千万人以上の死者を出したパンデミックだ。

 この記事では「新型コロナ」のパンデミックが、世界に与えて続けている影響について振り返る。

コロナショック 世界を翻弄、日本の対策は十分か

 2020年3月11日、WHOのテドロス事務局長が新型コロナの感染拡大を「パンデミック」と表現し、懸念を表明した。WHOがパンデミックという言葉を使うのは2009年の新型インフルエンザ以来11年ぶりのことだ。

 この発言に世界の指導者たちが反応した。米国ではトランプ大統領(当時)が欧州からの入国を30日間禁止するとともに国家非常事態を宣言、シンガポール政府はヨーロッパ4カ国からの入国を禁止し、スペインのサンチェス首相も非常事態を宣言した。そして日本でも、首相による「緊急事態宣言」を可能にする改正法が成立した。

 一方で中国、ヨーロッパ、中東におけるパンデミックは深刻で、特に「医療崩壊」が発生したイタリアでは致死率が7%台に突入するなど危機的な状況にあるという。日本ではパンデミックといえるほどの感染拡大は報告されていないが(当時)、情報不足や風評被害を懸念する声は多い。

コロナ対策で強権政治に「信任」、民主主義後退の足音

 新型コロナのパンデミックは、各国の政治にも大きな影響を与えた。比較的早期に感染者数の抑え込みに成功したタイ(2020年5月当時)では、政府の「強権的」な政治手法にお墨付きが与えられた格好だ。過激な言動で有名なフィリピンのドゥテルテ大統領も「指示に従わないなら射殺」と述べるなど、強権政治をいっそう強めている。

 こうした状況を背景として、識者の中には「民主主義に対する懐疑的な見方が新興国を中心に広がっている」と指摘する声もある。新型コロナへの対応が、今後の世界情勢を大きく変える可能性は決して小さくない。

コロナ後のオフィス(3)不動産会社「ロンドン脱出希望者が殺到」

 新型コロナのパンデミックの影響は、もちろん経済や日常生活にも及んでいる。ロックダウン(都市封鎖)が続いていた英国では、ロックダウン解除後も「オフィスに戻りたくない」という従業員が増えている。

 それどころか「ロンドンからの脱出」を希望する人たちが急増し、不動産会社が顧客対応に追われているという。ある調査では「都市在住者の4割が市外に移り住む意向」を示しており、その影響で需要が低下する都市部のオフィス賃料は、今後20%下落するとの予想もある(2020年6月当時)。

「ここは世界一安全」人であふれる武漢 感染拡大の「震源地」は今

 新型コロナの震源地とされ、2020年の早い段階でパンデミックの状態に陥った中国・武漢。しかし7月中旬にはショッピング街が買い物客でごった返すほどの「復活」を遂げていた(当時)。

 多くの感染者と死亡者を出し、1月から「都市封鎖」が続いていた武漢だが、「住民全員にPCR検査を実施」するなど前例のない施策が功を奏したと考えられている。

マスク拒否は「権利」、分断が招いた米国の感染拡大

 感染の抑え込みを世界にアピールする中国とは対照的に、パンデミックが深刻化しつつある米国。11月までの累計感染者数1270万人、同死者数26万人は、新型コロナの抑え込みに失敗した結果だ。

 こうした失態の背景に、「私は個人的信条に基づいてマスクは着けない」と公言する政治家たちの存在を指摘する人もいる。新型コロナに対する科学的なアプローチを否定するトランプ大統領と、公の場で常にマスクを着用するバイデン候補(いずれも当時)による大統領選挙は、米国民の分断を象徴する風景となっている。

「コロナ対策優等生」ドイツはなぜ第2波で挫折したのか

 2020年の春先に発生したヨーロッパのパンデミックでは「コロナ対策優等生」と呼ばれたドイツ。春の第1波では感染者数の押さえ込みに成功していたが、9月下旬以降に始まった第2波では1日あたりの感染者数が2万人を超え、毎日500人単位の死亡者も出ているという(12月時点)。

 ドイツの深刻な状況は、主に政治の失策によるものといわれている。新規感染者の増加速度に対する楽観的な態度が裏目に出て「夏に貴重な時間を浪費し感染の拡大を許してしまった」のだという。

 今回のパンデミックは、2021年5月まで続くメルケル政権に厳しい闘いを強いるきっかけになると考えられている。

ワクチン先進国イスラエルの実情

 世界に先駆けて「ワクチン」の確保に成功したイスラエル。2021年2月の時点で人口の40%に1回目の接種を済ませており、ワクチン先進国とも呼ばれている。これはネタニヤフ首相やエデルスタイン保健相など、政権トップによる積極的な行動の結果だ。

 一方で1回目のワクチン接種の段階では、まだパンデミックの抑え込みは確認されていない。ワクチンがどれほどの効果を発揮するのか、イスラエルの今後に世界が注目している。

最後に

 2020年に発生した新型コロナのパンデミック。世界の政治や経済、人々の生活にまで深刻な影響を与え続けている。すでに一部の国ではワクチン接種が始まっているものの、いまだパンデミックの解消には至っていない。人類が新型コロナを克服する日が待ち望まれる。

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