英語で”Think Tank”と表記されるシンクタンク。直訳すると「頭脳集団」だ。研究機関として、世の中の動向をさまざまな形で調査するシンクタンクだが、実際どのような機関なのかはあまり知られていない。本記事では、過去のニュースを参考にシンクタンクとは何か、そして彼らが行ってきた興味深い調査を、いくつか紹介していく。

シンクタンクとは?

 シンクタンクは、英語で”Think Tank”と表記される。日本語で直訳すると「頭脳集団」である。その名の通り、シンクタンクは社会開発や政策決定、さらには企業の経営戦略などに関する調査・分析を行い、問題解決や将来予測などの提言を行う機関だ。国内では、「○○研究所」「○○総研」といった名称が使われることが多い。

 また、シンクタンクは大きく「政府系」と「民間系」に分けられる。前者は内閣府の「経済社会総合研究所」、日本銀行による「日本銀行金融研究所」などが代表例として挙げられる。一方、野村総合研究所(NRI)や三菱総合研究所(MRI)などは民間企業が運営するため後者にカテゴライズできる。

 シンクタンクは、よくコンサルティング企業と混同されることが多い。その違いは、シンクタンクは、前述したようにあくまで研究機関であるという点だ。一方コンサルティング企業は、シンクタンクをはじめとした調査企業の資料を活用して、クライアントのためにビジネスサポートを行う。ただし、野村総研のように、シンクタンクとコンサルティング企業の両方の機能を持っている企業もある。

「雇用」「現場力」「教育」  成功モデルの再定義を

 日本のシンクタンク、日本経済研究センターは2019年6月、2060年までの主要7カ国のGDPの推移をシミュレーションした長期経済予測をまとめた。それによれば、日本のGDPは、20年代半ばにインドに抜かれ、40年代半ばにはドイツに抜かれるという。ドイツは欧州連合(EU)各国との障壁が低いため人材や資金が流入しやすく、産業のデジタル化にも積極的。インドは60年まで人口が増え続け、若い世代が成長エンジンになるという。

 一方中国は、高い成長率で先進国を追い上げ、30年代前半には経済規模で米国をいったん抜くものの、30年ごろから人口が減り始めて伸び悩む。国内企業の優遇政策など内向きの制度も足かせとなり、60年までに米国が抜き返す。それでも世界の2大超大国は競り合いながら経済成長を続ける。

コロナ禍で、米国流通・サービス企業の店舗閉鎖は最大2万5000店

 多くの経済学者が参加している、シンクタンクの全米経済研究所(NBER)も興味深い調査を発表している。20年6月8日、同社は「米国の景気は2月をピークにリセッション(景気後退)に入った」と発表した。言うまでもなく、新型コロナウイルスのパンデミック(感染の世界的大流行)がそこに大きな影を落としている。

 一方、同じ20年6月8日、米調査会社コアサイト・リサーチは、「2020年における米国流通・サービス企業の店舗閉鎖が最大で2万5000店に上るだろう」との見通しを発表。2020年初めに「最大で1万5000店」としていた店舗閉鎖の予測を大幅に修正した。

 同社によると3年前(17年)の店舗閉鎖は8139店。18年は5864店とやや減ったものの、19年は9300店と急増し、米国史上最悪の状況となっていた。しかし20年は、その2倍以上になるかもしれない。まさに米国の流通サービス企業は、経験したことのない危機に直面している。実際に大手から中堅どころまで、経営破綻する企業が相次いでいたという。

オープンソースに本腰入れる中国 政府系シンクタンクが白書を発行

 中国のシンクタンクも興味深い動きをしている。同国の政府系シンクタンク、中国情報通信研究院は20年10月16日、オープンソースエコシステム白書を公表した。

 中国情報通信研究院は1957年に設立された郵電科学研究院を前身とする、情報通信分野で中国を代表するシンクタンクの1つだ。工業情報化省の下、外国の通信規格の中国国内でのテストや標準化対応など、日本では総務省や産業技術総合研究所が担っているような役割もある。日本では総務省が「情報通信白書」を発行しているが、中国情報通信研究院も「デジタル経済発展白書」「インターネットセキュリティー産業白書」など、中国の情報通信に関する白書を発行している。

 政府の一部とも言える組織が、オフィシャルに「オープンソースエコシステム白書(開源生態白皮書)」を発行するのは、中国でのオープンソース運動の盛り上がりや、政府から見た戦略的な位置付けを感じさせる。白書は78ページに及び、同時期に発表された「ICT産業イノベーション発展白書」(55ページ)や「中国ブロードバンド発展白書」(47ページ)よりも多く、力が入っていることをうかがわせる。

40代以上は4% 中国のオープンソース開発は高収入の若者が中心

 また、中国の開発者に幅広くアンケートを取ったこの白書からは、同国のオープンソース開発者の姿が見えてくる。筆者が衝撃を受けたのは年齢層だ。オープンソース・ソフトウエアの開発に参加しているエンジニアは圧倒的に20~30代で、合計で90%を占める。40代以上がひとくくりにされたグラフは、高齢化が進む日本ではあまり見られないものだ。

 20代が60%を占める現状でも、白書のまとめでは前年の2018年の調査に比べて「30歳以上の年齢が大幅に増えて、ベテランが参加していることは良い要素」とコメントされている。つまり、以前はさらに若者ばかりだったわけだ。年齢や性別などの属性については、このオープンソースコミュニティーで実際にコードを書いている人たちだけでなく、今回のアンケート回答者全体のものも公表されている。

 さらに、中国では大卒以上の高学歴のエンジニアが多いこともあり、オープンソース活動に参加している人々の年収は高めだ。中国の水準では高収入といえる月給1万5000元(約24万円)以上3万元未満を稼ぐエンジニアは59%、3万元以上5万元未満が14%、5万元以上が6%と、5000~1万元程度が多い工場労働者よりも高い。年齢が若くて収入が高い「エリート」が多いといえるだろう。

最後に

 ここまで、シンクタンクとは何か、そして各国のシンクタンクが行った興味深い調査を紹介してきた。シンクタンクは研究機関であり、民間系と政府系の2つに分けることができる。この区分は海外でも同様だ。今回紹介した、各国のシンクタンクの調査の中には、世の中がどう変化していくかを考察する上で、参考になるものがあったはずだ。今後も世界のシンクタンクの調査は、チェックしておく必要があるだろう。

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