未開拓でライバル不在の市場を意味する「ブルーオーシャン」。穏やかな青い海のような市場は、新規ビジネスの創出や利益の確保をするうえで理想的な環境とされる。今回はブルーオーシャンに挑んでいる企業の事例について、過去記事から振り返る。

高い利益率が魅力の「ブルーオーシャン」

 ブルーオーシャンとは、未開拓で競争相手のいない市場を指している。2004年(日本では2005年)刊行の『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する』(W・チャン・キム、レネ・モボルニュ)の中で、対となるレッドオーシャンと共に提唱された概念だ。

 ブルーオーシャンには既存のライバルが存在しないため、自由な発想やユニークなアイデアで「まったく新しいビジネス」にチャレンジすることができる。また価格競争とも無縁なため、企業の利益を確保しやすいのも大きな魅力だ。

 一方のレッドオーシャンとはすでに多くの競争相手がひしめき合っている市場のことで、新規のビジネスを創出することはおろか、継続的に利益を上げ続けることも難しいとされる。このためほぼすべての企業にとって、ブルーオーシャンの発見と開拓は経営戦略における重要なテーマの1つになっている。

 この記事ではブルーオーシャン戦略に取り組む企業の事例を中心に、過去記事を紹介していく。

売るのはお好み焼き文化 オタフクソースの市場創造術

 広島に本社を構えるオタフクソース。ソース製造としては最後発のメーカーだが、ソース類の国内シェアで25%を占める最大手だ。

 同社が成功を収めるきっかけとなったのは、「お好み焼きの普及活動」というブルーオーシャンだ。「東京のようにお好み焼きを食べる文化がないところで売れるわけがない」という経験が、「それならお好み焼きを普及させればいい」という発想につながり、そのときの精神は現代の社員たちにも受け継がれているという。

花王が美容家電参入、「消耗品」モデルで稼ぐ

 19年11月、化粧品メーカーの花王が「美容家電」に参入した。この分野はすでにパナソニックが先行しており、市場規模は年間1200億円ほどとされていた。ブルーオーシャンとは言い難い。

 だが花王の取り組みは、美容家電の売り上げそのものではなく「専⽤化粧液」の販売で利益を上げる継続販売ビジネスだった。化粧品メーカーとして培ってきた自社のノウハウと既存の市場、既存のビジネスモデルを組み合わせることで新たな「ブルーオーシャン」を生み出している。

衰退市場で健闘する青果店の不思議出店術

 現代では珍しい青果店でブルーオーシャンを開拓するのは、アグリゲート(東京・品川)。同社は赤坂や五反田、天王洲といったビジネス街で「旬八青果店」を運営している。

 青果店のような生活密着型の店舗は、本来であれば住宅街に出店するのが鉄則だ。それにもかかわらず、あえて「夜間人口の少ないオフィス街」に店舗を構えた理由について、代表取締役の左今克憲氏は「今の東京で青果店として利益を出す」ためと説明する。

 オフィス街といっても、会社帰りの人や飲食店からのニーズはある程度存在する。競争が激しい住宅街に出店するより、競合が存在しないオフィス街の方が「トータルでみると稼げる」というわけだ。

ジップエア「長距離路線だからこそ、戦える」

 20年6月に初就航した格安航空会社(LCC)のジップエア トーキョー。同社のブルーオーシャン戦略は、LCCとしては珍しい「長距離路線(太平洋路線)」。JALグループという後ろ盾を最大限に活用しつつ、他のLCCにはまねのできない取り組みに率先して取り組むことで独自の魅力を育てようとしている。

やる気スイッチ第2の創業 幼児教育で1人を「深掘り」

 学習塾運営のやる気スイッチグループ。個別指導塾「スクールIE」で有名だが、教育業界のブルーオーシャンとして同社が新たに取り組むのは「幼児教育事業」だ。主力である個別指導塾事業は少子化や新型コロナウイルス禍により横ばいが続くが、幼児教育事業はキャンセル待ちが出るほどの好調が続いているという。

狙いは住宅地 モスバーガー、逆張りのキッチンカー戦略

 モスバーガーのモスフードサービスもブルーオーシャンに参入する。同社が手がけるのは、新業態のキッチンカーだ。

 もちろんキッチンカーというビジネス形態にはすでに数多くの競合が存在している。だがモスの場合は、キッチンカーの定番である「オフィス街やショッピングセンター」ではなく「住宅街」に出店するという。

最後に

 現在成功を収めている企業の中には、過去に何らかのブルーオーシャンを開拓してきたところが少なくない。オタフクソースはその一例だ。一方でジップエアやモスフードサービスのように、これからブルーオーシャンでの挑戦をスタートする企業もある。これらの取り組みがどのような結果を生み出していくか、興味深く見守っていきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催 成田悠輔×安田洋祐 激論!「ビジネス+経済学」

 米グーグルなど最先端企業で経済学者の採用が相次いでいます。最新の経済学は様々なビジネス活動を遂行する根拠となり、確実性を高めることが実証されています。一方、日本に目を向けてみれば、仕事場でも「本当は防げる失敗」が繰り返されているのが実情です。

 日経ビジネスLIVEは日経BOOKプラスと共同で、7月19日(火)20:00~21:00に「気鋭の経済学者が激論『経済学はビジネスに役立つか?』」と題して、ウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは米イェール大学助教授の成田悠輔氏と大阪大学大学院准教授の安田洋祐氏。本当に役立つ経済学を、ビジネスに取り入れるにはどうすればいいか。経済学の活用を通じて企業はどんなメリットを得られるのか。気鋭の経済学者による議論をお届けします。

■開催日:2022年7月19日(火)20:00~21:00(予定)
■テーマ:成田悠輔×安田洋祐 気鋭の経済学者が激論「経済学はビジネスに役立つか?」
■講師:米イェール大学助教授・成田悠輔氏、大阪大学大学院経済学研究科准教授・安田洋祐氏
■モデレーター:エコノミクスデザイン共同創業者・代表取締役・今井誠氏
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料(事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。