数々のファッションブランドを手がけているオンワードホールディングス。欧州、アジア、米国とグローバルに事業を展開する日本を代表するアパレル企業だ。だが、ここ数年は厳しい経営が続いている。2021年2月期の連結最終損益は231億円の赤字(前期は521億円の赤字)だった。資産売却などで22年2月期には63億円の黒字になる見通しが発表されたものの、事業の構造転換が求められていることに変わりはない。同社の近年の歩みを振り返る。

アパレル分野で日本を代表する「オンワード」

 「オンワードホールディングス」は樫山商店としてスタートし、90年以上の歴史を持つアパレル大手。オーダーメードスーツから「23区」「組曲」といったオリジナルブランド、「Jプレス」「ジル・サンダー」「ポール・スミス」などのデザイナーズブランドなどを幅広く手がけてきた。同社はオンワード樫山を筆頭に、国内外92社(2020年2月期)を束ねている。オンワードといえば知らない人はいないほどの有名企業グループだ(「ジル・サンダー」は21年3月に売却)。

 「『ファッション』を生活文化として提案することによって新しい価値やライフスタイルを創造し、人々の豊かな生活づくりに貢献すること」という経営理念を掲げ、グローバルに活動してきたオンワードだが、19年以降は厳しい状況が続いている。

オンワード、ラオックス頼みの勝算

 「オンワードが持つファッションのモノ作り基盤と、ラオックスの訪日外国人への訴求力を組み合わせて、世界にメード・イン・ジャパンを発信していきたい」と語るオンワードホールディングスの保元道宣社長。15年6月には中国市場に太いパイプを持つラオックスと衣料品会社を共同出資で設立。急増する訪日外国人を相手に「3年以内に200億円の売上高」を目指すとした。

 縮小する国内市場に代わり、中間層が台頭する中国を中心としたアジア諸国で、得意とする「中の上」の価格帯の商品を売り込もうというのだ。オンワードは中国人客に売り込む販路は手に入れた。魅力的な新ブランドを確立できるか、アパレルメーカーとして本気度が問われている。

オンワードのオーダースーツ、3万円1週間で勝負

 オンワードホールディングス傘下のオンワードパーソナルスタイルが手がける「カシヤマ ザ・スマートテーラー」。1着わずか3万円の価格と1週間という低価格・短納期でオーダースーツを作れることを売りに、17年10月に誕生した。30代と40代を中心に人気を呼び、19年2月期には37億円を売り上げるヒット商品となった。

 低価格・短納期実現のカギは、「中国に確保した直営製造工場」と「物流用の圧縮パック」、「店舗からのオンライン発注」だ。これらにより、製造コストだけでなく発注コストや輸送費を削減できた。また、圧縮パックは内蓋を折り畳むと、厚みのある紙製のハンガーになる。こうした工夫と仕掛けが、ただ安いだけではない魅力につながった。

 目標を大幅に上回る売り上げに、「20年度には最低でも100億円を目指す」と関口猛社長は語る。19年4月の時点で、14カ所の直営店とオンラインで販売しているが、出店ペースを緩めず顧客層の拡大に努めるという。

オンワードが11年ぶりの大規模特損、EC強化は「間に合う」か

 17年に始めた「カシヤマ ザ・スマートテーラー」が好調のオンワードホールディングス。だが19年の3~8月期決算は244億円の赤字となった。リーマン・ショックの影響で通期で308億円の最終赤字となった09年2月期に匹敵する規模の損失だ。赤字の直接の原因は「不採算事業の廃止などにかかる特別損失」だが、背景には激化する競争と、米中摩擦、ブレグジット、中東情勢などの下振れ要因が拍車をかけたとした。

 同社では、百貨店を中心に築いてきた物理的な店舗網を絞り込み、ネット通販の活用などで巻き返しを図る。だが、百貨店の急速な落ち込みに、EC強化が間に合うかどうかは未知数だ。

オンワードが希望退職350人募集、しかし販売現場は人材難

 業績不振が続くオンワードホールディングスが、19年12月、約350人の希望退職を募ると発表した。計画通りであれば対象者の4分の1強が早期退職することになる。その後、20年2月期までに700店を閉鎖したが、20年4月にはさらに700の不採算店舗を閉鎖すると発表。これで従来の3000店体制がほぼ半減することになる。

 とはいえ販売員の質が売り上げに直結するアパレル業界では、現場の人数はむやみに減らせない。オンワードでも基本的に販売職限定で採用している販売員は、希望退職の対象としていない。一般社員を削減する一方で、現場の人材確保を進める必要がある。「本社機能のスリム化と現場の強化を同時に実現」することが求められている。

赤字に店舗閉鎖…苦境のアパレル大手、コロナ後の明暗分けるEC

 早期退職制度や不採算店舗の閉鎖などで早期の業績回復をもくろんできたオンワード。しかし20年2月期の最終損益は521億円の赤字となった。その後、新型コロナによる打撃も受けている。20年4月13日の決算説明会で保元社長は「実店舗の半分が休業しており、営業している店舗も来店客数は大幅に減少している」とした。

 ただ、20年2月期は食品やギフトなどのライフスタイル関連事業が売り上げを伸ばし、トータルの売上高は前年度比3%プラスの2482億円となっている。相変わらず不況が続くアパレル部門も、ECに限っては好調だという。「ECで連結売上高の半分以上を稼ぐ会社を目指す」と保元社長は語る。

最後に

 インバウンド事業、オーダースーツなどが好調だったオンワードだが、百貨店業界の苦境や、不安定な国際情勢、コロナ禍などによって大きなダメージを受けた。アパレル業界全体が不振にあえぐ中、オンワードはECに活路を見いだそうとしている。食品やギフトなどのライフスタイル関連事業やオーダースーツに代表されるカスタマイズ事業など、アパレル以外の成長分野を持つため、店舗からECへの転換策を進めやすいようだ。推し進めている構造転換がどのような結果をもたらすのか、その行方が注目される。

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